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YouTube「自民党公式チャンネル」より
自民党がオバマ利用の“違法CM”をYouTubeに! テレビ放映は断念するもかわりに誇大広告ゴリ押し
http://lite-ra.com/2016/06/post-2375.html
2016.06.29. 自民党のオバマ利用“違法CM”の顛末 リテラ
自民党CM 「この道を。力強く、前へ。」
やはり、本サイトが報じた自民党の“違法CM”ゴリ押しは事実だった。6月25日、YouTubeの自民党公式チャンネルが「この道を。力強く、前へ。」なるタイトルのCMを公開した。まずはその中身を紹介しよう。
まず、最初に安倍首相が青空をバックに登場し、「日本は今、前進しています」と宣言する。その後に〈雇用110万人増加〉〈国民総所得36兆円増加〉〈賃上げ2%達成〉〈有効求人倍率全都道府県で1倍超 史上初〉〈賃上げ2%達成3年連続〉等のテロップとともにそれらの“経済実績”を強調する安倍首相のナレーション。そして、安倍首相が「止めてはいけない、この流れを」というセリフを口にすると同時に、米オバマ大統領と安倍首相が一緒に映っている写真が2枚映し出される。一枚は平和記念公園の原爆死没者慰霊碑をバックに二人が握手しているツーショット写真、もう一枚は、伊勢志摩サミットに出席した各国首脳の中心で2人が並んでいる記念写真――。
そう、自民党という特定の政党のCMに他国の大統領が突然、登場するのだ。いくらYouTubeとはいえこんなことが許されるのか、自民党はオバマに許可をとったのか、と心配になるが、これは本サイトが6月21日付でスクープした自民党の政党CM案の内容とほぼ同じものだ。実は当初、自民党はこの映像を参院選向けCMとしてテレビ各局に持ち込んでいた。
しかも、これはネットだから、巧妙に法の網の目をかいくぐっているが、もしもテレビで流されたとしたら、確実に公職選挙法に抵触するシロモノだ。
そもそも公選法では、細かい規定のある政見放送等を除いて選挙運動にテレビを利用することは禁じられており、政党CMも通常の時期と同じ「選挙運動が目的でない政党の日常の政治活動」の広告でなくてはならない。ところが、自民党がゴリ押ししたオバマの広島訪問は、明らかに日本政府の外交の結果であって自民党の活動ではない。当然、放送局は罰則を受けることになるから、とうてい放送できるわけがなく、実際に、現在テレビで流れている自民党の政党CMからはオバマ訪広の部分はカットされている。
しかしこの間、自民党は民放各局に露骨な圧力を加え、この“オバマCM”をゴリ押し。電通、ADK、I&Sという3つの代理店を駆使して、各局の営業部に毎日のように押しかけてきたのだという。なかでも強硬だったのは電通だ。担当するフジテレビに対し、弁護士を連れて直接乗り込んできたのだ。フジテレビ関係者は本サイトにこう証言していた。
「取締役局長クラスと会って、オバマ訪広も経済実績も党の政策の結果だと正当化したようです。あと、上層部にも他のチャンネルから働きかけがあったと聞いています。テレビ局としては、官邸ににらまれるのは怖いので、本音としてはそのまま放映したい。ただ、そのまま出せば出したで、明らかな公選法違反ですから、絶対に問題になる。営業部も考査部も板挟みになって頭を抱えていました」
さらに同じく電通が窓口となったTBSにも先々週、同様に自民党が弁護士を連れてきていたという。さるTBS関係者がこう語る。
「フジに自民党が弁護士を連れてきたというのをリテラを読んで知り、本当なら露骨な圧力だから、『うちは大丈夫か?』と営業の人間にそれとなく聞いてみたんです。そうしたら、TBSにも先週(=6月13日〜17日頃)同じように弁護士がやってきたという。やはりTBSも自民党から相当のプレッシャーを受けていたのは間違いない」
ところが、21日、本サイトがこの政党CMをめぐる圧力問題を報じたすぐ後、自民党は一転して、一斉に“オバマCM”案を引き下げてしまったのだという。おそらく、自民党はこの圧力問題が世間に広まったら、自分たちに批判の矛先が向きかねない、逆効果になる、と考えて態度を一変させたのだろう。
そして、先週末から、テレビではオバマの画像がカットされたバージョンのCMが流れ始めた。
しかし、だからといって、現在、放送されている政党CMに問題がないわけではない。実は自民党は事前にオバマの広島訪問の画像が拒否された場合を想定して、二段構えの策を講じていたのだ。
それが、現在テレビで放送されている自民党の“経済実績”を喧伝する数字だ。これも実は、CM案が届けられた当初から各局のCM考査部で「誇大広告ではないか?」との疑問の声があがったいわくつきのものだった。
たとえば、前述したYouTubeの自民党CMでは〈雇用110万人増加〉と謳われているが、実際に2012年と2015年を比較すると正規雇用は36万人も減少。また〈国民総所得36兆円増加〉についても、そもそも国民総所得(GNI)は国民総生産(GDP)に海外からの所得を加算したものであり、むしろ実質GDPは第二次安倍内閣以降ほとんど伸びておらず、その成長率は民主党政権下の約1.7%(12年)よりも低い約0.5%(15年)だ。〈賃上げ2%達成3年連続〉に関しても、実質賃金は5年連続のマイナスであることは周知の通り。〈有効求人倍率全都道府県で1倍超〉も2005年以降初めてなだけなのに〈史上初〉を謳っている。明らかに自分たちに都合の良い数字を切り取り、大げさに宣伝している。
これは、日本民間放送連盟の放送基準で禁じられている広告における「事実の誇張」に間違いなく該当するだろう。民放各局のCM考査部が難色を示すのも当たり前だ。
しかし、前述のとおり、自民党はオバマ広島訪問を下げる条件として、この誇大広告じみた“経済実績”の数字を受け入れるよう迫った。
「代理店が『数字については絶対に譲れない』、と。それで、うちもオバマの件でガチガチに詰められていましたから、『オバマを下げるなら』というバーターを受け入れてしまった形です。いちおう、数字の部分に出典を明記してもらうことで妥結しましたが、これも言い訳のためみたいなものですよ。実際、一部の局では『あまり目をつけられるとかなわないから、この辺で手をうっておけ』という上層部の鶴の一声で現場が引かざるを得なかったという話も伝わってきています」(民放キー局関係者)
しかも、実際に放映された自民党のCMを見ると、その出典のテロップさえも画面下部に目視できないほど小さく付されているだけだった。さらにこの間、各代理店はそれでも拒否する局に対しては「他局は受け入れましたよ」という揺さぶりまでかけて、各局を追い込んでいったという。
公選法をシカトするだけでなく、弁護士を連れて乗り込み、切り崩し工作まで行って放送局を懐柔する自民党。そして、その圧力に飲み込まれて、法律違反にまで加担してしまう民放各局。こんな有様では、すべてのテレビメディアが“安倍自民党からのお知らせ”一色に染まってしまう日も近いかもしれない。
(編集部)
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