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「文春砲」では、やっぱり政治は動かない  
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投稿者 軽毛 日時 2016 年 6 月 20 日 16:54:39: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

「文春砲」では、やっぱり政治は動かない

著者に聞く

津田大介×安部敏樹 特別対談1
2016年6月20日(月)
日経BP出版局
 「日本死ね!」――そんな極端な物言いをしなければ言葉が届かない、“週刊誌的”な状況の中で、社会を変えていくにはどうしたらいいのか。ジャーナリストである津田大介さんと、津田さんとは旧知の仲である社会起業家の安部敏樹さんに対談してもらいました。
今年の夏の参院選が迫ってきました。いろいろ争点はありますが、何と言っても選挙権年齢が「18歳以上」へと引き下げられることが大きい。各党とも若年層へのアピールを考えているようですが、これを機に本当に若い世代の政治参加が進むのか。今後の社会の変化を考えるうえでの重要なトピックです。

 政治情報サイト「ポリタス」を運営するジャーナリストの津田大介さんと、若者代表として、1987年生まれの社会起業家の安部敏樹さんに語らっていただきたいと思います。

安部:よろしくお願いします。

津田:安部さんがやっている「リディラバ」っていう団体は、ソーシャルベンチャー界隈ではとても有名ですけど、日経ビジネスオンラインの読者にとっては、あんまりなじみがないかもしれませんね。

安部:そうなんですよ。悔しいですけど(苦笑)。僕たちは社会問題の現場に行く「スタディツアー」というのをやっていて、2014年には「観光庁長官賞」(若者旅行を応援する取組表彰)を受賞しました。翌年には、観光立国推進閣僚会議で決まった「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」で、スタディツアーが政策として盛り込まれたんです。


津田大介さん(右)と安部敏樹さん(写真:鈴木愛子、以下同)
安部さんは、「KDDI∞Labo」や、「IVSローンチパッド」といった、通常のベンチャーが競う場でも、ソーシャルベンチャーでありながら優勝したり入賞したりしていますね。

安部:「社会起業なんて儲からないんでしょ」と言われて腹が立ったことがありまして。だったらビジネスとして成立することを証明してやろうと思って、そういったコンテストに出て、賞もたくさんいただきました。ソーシャルビジネスが、優秀な人を引き付けるような魅力的な仕事だということも示したかったんですよ。

津田:リディラバって、もともとは東大の学生団体から始まったんですよね。学内では伝説的な存在になっているし、僕も複数の大学で講義を持っているので大学生と話すことも多いんですが、社会への問題意識があったり、ちょっと変わった大学生はだいたいリディラバのこと知ってる印象があります。


安部敏樹著『いつかリーダーになる君たちへ』
安部:そういった活動もしつつ、4年前には、東大教養学部のゼミで教える側になって、それをまとめた本も昨年出版されました(『いつかリーダーになる君たちへ』)。そのゼミは、社会問題を解決するためのビジネスプランを学生にチームで作ってもらうという内容です。東大生って勉強はできるけど、チームで何かやるのは苦手。だから、体系的にチームビルディングを学んで、グループワークを通じて実践できるようなゼミにしました。

政治は「お金」と「電話」で動く?

本の話が出たところで、津田さんにおうかがいします。2012年に『ウェブで政治を動かす!』という本を出版されてから3年たちますが、最近のインターネットと政治の関わりをどう見ていますか?

津田:いやー、最近とみに思うのは、「政治は『ウェブ』じゃなくて、『お金』と『電話』で動いているなぁ」ということですね(笑)。

安部:(笑)。


津田大介著『ウェブで政治を動かす!』
一方で、「保育園落ちた、日本死ね!」という匿名ブログが国会を動かした例もあるのでは?

津田:もちろん、かつてと比べればずいぶん変わってきたなとは思います。匿名ブログで書かれたことが瞬間的に爆発して、国会で首相が「匿名である以上、本当のことなのか確認しようがない」と、問題の焦点がずれている答弁をしたためにさらに火がついて、国会前でのデモにもつながった。あれは数年前なら考えられなかった現象で、人々が政治的な主張を国会前デモというかたちで示すようになった背景には脱原発デモやSEALDsなどの存在があると思います。路上で声を挙げることのハードルが下がったんだろうと。

 とはいえ、保育園落ちたブログ騒動で残念だったことが二つあるんです。一つは政府がそれに反応して出した「待機児童解消緊急対策」の中身。小規模保育所の規制を緩和して、預かれる子供の数を増やしている。保育士の待遇改善に予算をつけるんじゃなくて、保育の「質」を下げる方向にいってしまった。骨抜きもいいところで、これではウェブで政治が動いたように見えて、実質的にはぜんぜん「動いて」いないわけですね。

安部:メディアだと政治家の言動につい目がいきがちだけど、予算がどこについているかを見れば、実態は一目瞭然ですからね。この10年間、「少子化対策」っていう言葉はどの政治家のマニフェストにも書かれていたけれども、あまり進展していないですよね。何にどれだけ予算がつけられたのかを見れば、政治家の本気度がわかりますよ。

 (※参考 内閣府の資料によると少子化対策関係予算は平成22年度ごろから3兆円台半ばであまり変わっていなかったが、ここ1〜2年はようやく増加傾向にある)

津田:そしてもう一つ残念だったのが、「日本死ね!」という極端な物言いをしなければ世論を動かせなかった、ということですね。アメリカの大統領選挙における「トランプ現象」と同じで、ソーシャルメディアが浸透した結果、極端な物言いをしなければ言葉が届かなくなっている。しかもそれは世界的な傾向になっているという……。「ネットが週刊誌っぽくなった」と言えるのかもしれませんけど。

安部:週刊文春や週刊新潮のスクープが話題になっているのと重なりますね。

津田:いま実際に政局を動かしてるメディアって、ソーシャルメディアよりも週刊文春です。実際にメディアに通じた政治家は文春や新潮に情報をリークして、自分たちの望む記事を書かせようとしてますからね。『文春砲で政治を動かす!』っていう本を、いずれ誰かが書くんじゃないですかね(笑)。

極端な物言いをしないと言葉が届かないという週刊誌的な状況には、どんな問題がありますか。

津田:ウェブ炎上で世間が動いた典型例といえば、昨年の「オリンピックのエンブレム騒動」がありますね。匿名ネット世論的にはあれは「成功例」なのかもしれませんけど、組織委員会は最後まで佐野さんの盗用については認めてないわけで。「盗用ではないけれども、国民が納得しないから」って説明したんですよ。

安部:あれでネットの影響力の大きさというか、「感情の増幅装置」としてのネットの怖さが印象づけられましたね。匿名の罵詈雑言って、当事者に対して本当にダメージを与えるんですが、やっている側はそれを想像できていない。

“文春砲”の限界

津田:そうなんですよ。「日本死ね!」という極端な物言いで相手のネガティブな反応を引き出して、そこをうまく突いて政治問題化させる。一時的には物事が動いたかのように見えるかもしれないけど、中長期的にはあまり改善につながらない。

 「アラブの春」以降に起きていることを見ていて思うのは、ウェブは何かを「壊す力」はすごくあるんだけれども、一つひとつ積み上げて何かを作っていく継続性に欠けるということなんです。それがソーシャルメディアの特性でもあるし、本当はそこに超えなきゃ行けない壁があるように思います

となると、若い世代が社会を動かしていく起爆剤としての役割をウェブに期待するのは難しいでしょうか……。

安部:若い世代は当たり前のようにウェブをツールとして使っています。本質的なことを言えば、今はいろんなツールを使って「関心の奪い合い」を“みんなで”やっているわけです。テレビやウェブ、スマホアプリなど、あらゆるメディアで、プロ・アマ混じりあっていろんなコンテンツを発信して、人々の可処分時間の争奪戦を繰り広げている。だから、臨機応変にツールを使い分けて戦っていくしかないですよね。社会を動かすのは、ツールじゃなくてその使い方です。

津田:「関心の奪い合い」という状況は、ソーシャルベンチャーも一般企業と変わらないんですね。


安部敏樹(あべ・としき)
1987年生まれ。一般社団法人リディラバ代表。東京大学在学中の2009年にリディラバを設立。600名以上の運営会員と150種類以上のスタディツアーの実績があり、3000人以上を社会問題の現場に送り込む。総務省起業家甲子園日本一、学生起業家選手権優勝、ビジコン奈良ベンチャー部門トップ賞、KDDI∞ラボ第5期最優秀賞など受賞多数。
安部:そうです。僕らは様々な社会問題の解決のために「社会の無関心の打破」というコンセプトを掲げて、2009年にリディラバを立ち上げました。それからメディアの使い分けについてはずっと考え続けています。

津田:通常のソーシャルベンチャーは、自分たちが取り組むジャンルを決めて、掘り下げていきますよね。例えば、駒崎弘樹さんのNPO「フローレンス」のように、病児保育からスタートして、小規模保育に取り組んだり。それが安部さんの場合はいろんな社会問題のための“プラットフォーム”を目指しているところが面白い。

安部:それは僕たちが無関心の「構造」に問題意識を持っているからなんです。どんな社会問題でも、その当事者だけで固まってしまって、非当事者が問題を知る機会がなくなってしまいます。

 今、リディラバが運営しているのは、様々な社会問題についての情報サイト「TRAPRO(トラプロ)」、リアルな移住クチコミサイト「TRAPRO移住クチコミ」、そして社会問題の現場に行く「スタディツアー」です。スタディツアーでは、青森県六ケ所村にエネルギー関連施設を見に行ったり、歌舞伎町のラブホで風俗嬢とおしゃべりしたり、スマホを持たずに鎌倉を探訪するデジタルデトックスツアーなど、これまでに150種類以上のツアーを企画して、3000人以上を社会問題の現場に送り込みました。

津田:スタディツアーっていう“旅行商品”を「メディア」として考えたところがリディラバの新しさであり、それが広がりを持っているんだと思います。

なるほど。社会問題の現場まで実際にツアーで連れて行けば、必然的に接触時間が長くなるというわけですね。

安部:例えば、1日の24時間のうち「社会問題」に15分を使う人がいたとしたら、こちらができることといえば、「その15分でより効率的に情報を届けられるよう工夫する」か、「15分をなんとかして150分にしてもらう」しかないわけです。となると、ウェブでコンテンツを届けるだけでは限界があって、やはり150分使ってもらえるツアーが必要になる。体験して当事者と触れ合うことで、人生が変わることだってあるんですよ。

津田:普通の旅行とスタディツアーの違いを端的に言えば「移動時間」の使い方にあると思うんです。普通の旅行だったら、帰りは遊び疲れて寝るだけですけど、スタディツアーは、現場で見たものや解決していない社会問題について悶々と考えるし、誰かに話してそのもやもや感を共有したくなる。僕自身この間、リディラバのスタディツアーでペットなどの殺処分場に行ったときもそうでしたし、自分自身も企画に携わったチェルノブイリ原発のツアーや、福島の旧警戒区域ツアーもそうでした。

ただ、関心がない人は、ツアーに行こうとは思わないのではないでしょうか。

安部:そうですね。関心がない人を巻き込むためには、3つのやり方があります。とにかくツアーとしての魅力を高めた内容にする、もしくは「就活に有利」とか「出会いがある」といった付加価値をつける、それか「修学旅行」や「研修」のように強制的に連れて行く、の3つです。

関心がなくても、巻き込まれて現場に行って関わりを持てば、“自分事”になりますよね。


津田大介(つだ・だいすけ)
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ポリタス編集長。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。京都造形芸術大学客員教授。テレ朝チャンネル2「津田大介 日本にプラス+」キャスター。フジテレビ「みんなのニュース」ネットナビゲーター。J-WAVE「JAM THE WORLD」ナビゲーター。一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』『動員の革命』『情報の呼吸法』『Twitter社会論』ほか。
安部:関心がないのは当事者から遠いからでしょう。こうした社会問題について考えるうえで重要なのは、「当事者性の度合い(グラデーション)」なんです。例えば貧困問題だったら、貧困にあえいでいる家庭が当事者そのもの。ただ、その家庭の周囲に住んでいる人、子供が通っている学校、離れて住んでいる親戚、サポートしようとしている団体も、ちょっとずつ当事者なわけです。そして、貧困問題についてウェブで知った人や、スタディツアーで話を聞きに来た人も、少し当事者になりつつある。

 こうした当事者性のグラデーションを踏まえ、その濃淡のある当事者にどのようなアプローチをすればいいかを考えると、先ほどの「関心がない人を巻き込む3つの方法」のどれが有効か見えてくる。これは、どんな社会問題にも応用できるんです。

「関心がない人」を変える方法

なるほど。その当事者性のグラデーションを意識すれば、「若者が政治に興味を持たない、投票に行かない」という問題にも当てはめられそうです。

安部:若者が投票に行かないのは、自分が当事者だと思っていないからですよね。そんなふうに実感する機会がないですから。貧困も政治も、現場に行って自分が当事者だという認識を持つことが大きな一歩になる。自分がその問題の当事者だと思えば、解決したくなるでしょう。そうやってみんなが自発的に動くようマインドセットしなきゃ、社会は動かないわけです。

津田:それって企業のマネジメントでも大きな課題ですからね。社員が自発的に活動できるよう、モチベーションをなんとかして上げようとしているとも言える。

安部:リディラバは、ボランティアが600人ぐらいいたんで、マネジメントしようとしても無理でした(笑)。スタッフが自発的に動いてくれるよう、当事者意識が高まるよういろいろと工夫したんです。それは僕が東大でやったゼミも同じで、3年間の学生の出席率はずっと9割以上です。

津田:具体的にはどんなことをやっているんですか?

安部:まずはマインドセットとして、「社会問題をやっているやつはカッコいい」という空気を作るところです。モテたくて活動していてもいいじゃないですか。

津田:確かにそういう社会に少しずつ変わっているようにも思います。合コンで「休日何をしてる?」って聞かれて、「学生時代やってたバンドを、また最近やってます」みたいなことを言うより、「ちょっとNPOを立ち上げて……」って言うほうが今風だし、かっこいい。

安部:この6〜7年で変わりましたね。そういった価値観の変化にいくらか寄与できているかもしれません。実際、リディラバのスタディツアーがきっかけで結婚したり、地方に移住したりした人も増えているんですよ。

(次回に続きます)


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コメント
 
1. 新共産主義クラブ[2129] kFaLpI5ZjuWLYINOg4mDdQ 2016年6月20日 17:27:08 : o6V4kkW9hQ : QF465QrMDAQ[3]
>「津田:いま実際に政局を動かしてるメディアって、ソーシャルメディアよりも週刊文春です。実際にメディアに通じた政治家は文春や新潮に情報をリークして、自分たちの望む記事を書かせようとしてますからね。『文春砲で政治を動かす!』っていう本を、いずれ誰かが書くんじゃないですかね(笑)。」
 

 



2. 2016年6月20日 17:32:50 : HbTtggZIJ2 : vcMyFLXG@QU[4]
世の中で「起業」を宣伝して持ち上げる一群の人たちがいる。起業なるもので成功する人もほんの一握りはいるだろうがしょせんそれは例外的なもので社会の大勢にはなりえない。

今、個人が起業できるとすればコンビニのように本部・資本の支配下にはいるか大企業から連なる下請け組織のどこかの部分に入る程度の仕事、低賃金が売りの介護の仕事くらいしかない。誰もがズバ抜けた技術やノウハウが持てるわけではない。

コンビニでも外食チェーンでも資本は金で次々賠償されていて知らない間に経営権が変わっている。起業もくそもない。企業など金で経営権を買えばおしまいだ。

夢だ夢だと宣伝されているだけだと思っていたほうがよい。


3. 2016年6月20日 22:40:38 : YCjXETlu7s : @D1vxzvXbPQ[17]
古市など典型的だが、こういったケイエイかぶれ、社会かぶれの
人間が大学を根城にネットなどに出て、イシキタカイ系を作る。

その実は >>2 さんのおっしゃるとおり、オールドエコノミーとやらの
なかでも一番胡散臭い人間の手のひらで踊ってる。知ってか知らずか。

一昔前に統一教会が大学に入ってきてたが、現代は、こいつら。

これが、言ったもん勝ち、やったもん勝ちとかいうのか、腐った世界。


4. 日高見連邦共和国[2231] k_qNgoypmEGWTYukmGGNkQ 2016年6月21日 10:05:00 : Ihir5pcR5A : _8AvK2G84Zw[198]

>>01

自分のコメント『!』だけっ!

まあイイ。もっと頑張れェ〜。(笑)


5. 2016年6月21日 19:56:39 : 2FbCg9vijk : ylRMDBXhDG8[153]
妥協済み だからならない 牽制に

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