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創価学会、国内低迷・海外躍進で「世界宗教化」に野心
http://diamond.jp/articles/-/93269
2016年6月20日 週刊ダイヤモンド編集部 ダイヤモンド・オンライン
『週刊ダイヤモンド』6月25日号の第1特集は、「創価学会と共産党 激変する巨大組織のカネ・人・出世」です。与野党それぞれのキャスティングボートを握る二大組織として、創価学会と日本共産党にスポットライトが当たっています。片や永田町で隠然たる影響力を発揮し、片や参院選での躍進が期待される。いずれも存在感を増しているようだが、組織内部に目を向けると、さまざまな“病魔”にむしばまれていました。二つの巨大組織の知られざる内幕を重層解剖しました。
日本社会の少子高齢化に伴い、創価学会を取り巻く環境も大きく変化している。写真は創価学会東京牧口記念会館 Photo by Kosuke Oneda
手元に1枚の資料がある。創価学会本部の事務組織が記されている。学会が公表している組織図は、「男子部」「婦人部」といった一般の学会員が属する組織の位置付けを示したもので、本部の事務組織図が表に出ることはない。学会ウォッチャーでも事務組織図を知る人は少ない。
その事務組織図には、企業のそれではあまり見ることのない部署名が並んでいた。
名誉会長の黒子役として動くエリート側近部隊の「第1庶務局」、学会員向けに名誉会長のメッセージを伝える「会員奉仕局」、日蓮正宗など他宗教との闘争を指揮する「広宣局」──。そのいずれもが、公称827万世帯という巨大組織のかじ取りを担う中枢部門だ。
最近、この本部中枢に異変があった。
「国際局」「国際広報局」「翻訳局」を統括していた「国際室」が「国際総局」に改称されたのだ。傘下には新たに「平和運動局」などの部署も増え、事実上の国際部門の格上げといえる。
こうした国際部門の組織拡充は、谷川佳樹事務総長ら執行部主流派が進めようとしている、「歴史的転換」の布石として読み解けばふに落ちる。この意味を理解するには、まずは学会を取り巻く環境変化を理解する必要があろう。
■国内低迷と海外躍進 学会のジレンマは日本企業と重なる
日本国内は人口減少社会に突入し、創価学会をはじめとした多くの宗教団体は今、信者数の伸び悩みと少子高齢化という共通課題を抱えている。
その波は学会にも容赦なく押し寄せている。もともと学会は高齢者が多く、若年層が少ない逆ピラミッド型の会員構成とされる。組織内部の高齢化が進み、新規入会者も頭打ちとなれば、組織の活力低下は避けられない。
昨年にはイタリアSGIが、イタリア政府と宗教協約(インテーサ)を結び、現地においてさまざまな特権が認められるようになった。「インドでも昨年だけで青年層が劇的に伸びている」(学会幹部)。学会本部によれば、海外の会員数は約175万人に達する。
国内の低迷と海外の躍進──。今の学会のジレンマは、2000年以降に頭打ちの国内に見切りをつけ、海外進出を加速させてきた日本企業のそれと重なる。
こうした日本企業には、進出先の国々で幾つもの壁が立ちはだかった。その一つが意識の差などからくる本部と現地との摩擦だ。
現地に派遣された駐在員が現場の意見を無視して、本部の意向ばかりを忖度した結果、海外事業が失敗した企業の事例は枚挙にいとまがない。
すでに同じことが創価学会インタナショナル(SGI)でも起こっているのかもしれない。
SGIの事情に詳しい学会関係者は、「欧州のトップに学会本部から派遣された人が就き、和気あいあいとしていた組織を、日本的組織にしようとしている」との見方を示した。
海外には、日本の学会本部のこうした方針に同調しないSGI幹部もいて、「もし名誉会長がいなくなってしまったら、海外のSGIが暴走して、歯止めが利かなくなるリスクがある。その前に手を打たなければ……」。本部中堅幹部は危機感を募らせている。
■突然の教義変更 その真の狙いは学会の「世界宗教化」
そんな中で、執行部主流派がひそかに進めていたのが、「日蓮世界宗」の立ち上げと、その会則に相当する「会憲」の制定だとされる。
日蓮世界宗のトップに就くのはもちろん日本の創価学会会長。さらに、会憲によって独立色の強い各国のSGIへの指導力を強める算段だったもようだ。
それを裏付けるように、学会が「日蓮世界宗」および「日蓮世界宗創価学会」という商標を登録していたことが明らかとなった。
内部からの反対などもあって結局、日蓮世界宗の旗揚げはまだ実現していないが、ここ数年、その地ならしが着々と進められてきた。
一昨年には、教義の変更にも踏み切っている。
学会がそれまで信じてきた日蓮正宗の総本山「大石寺」(静岡・富士宮市)の本尊を信仰の対象にするのをやめ、新たな本尊を総本部の「広宣流布大誓堂」(東京・信濃町)に安置したのだ。
前出の本部中堅幹部はこの狙いについて、「さまざまな文化的背景が混在する海外で、創価学会を普及させるには普遍性が不可欠。がんじがらめの古い考えから脱却するため、教義の近代化を図った」と解説する。
また、学会本部も「当会の宗教的独自性をより明確にし、世界広布新時代にふさわしいものとするため」との見解を示した。
教義変更から浮かんでくるのは、「創価学会の世界宗教化」という何とも野心的な「歴史的転換」である。
突然の本尊の変更に、古参の学会員らから反発が出るなど物議を醸したが、執行部は世界宗教化のためなら、一定数の学会離脱はやむなしと割り切っている節がある。
■SGIとの共存で信濃町が世界聖地になる日は来るのか
ただ、日本の創価学会が権力を握ったままでの世界布教には不安もある。
というのも、SGIには国ごとの色があり、例えば、「ドイツは炭鉱労働者、フランスは主婦、英国は雑多な層、東欧は政治的に虐げられた層」(SGI関係者)といった具合に中心層が異なり、それぞれ独自の発展を遂げてきた。
また、海外で最多の学会員がいる韓国はリーダーシップを取りたがる幹部が多く、手綱を取るのは一筋縄ではいかないだろう。
「信濃町」への権力の一極集中に違和感を覚えるSGI関係者も少なくない中で、強引な改革を強行した場合、新宗教によく見られる「分裂」という不幸な結末を迎えることにもなりかねない。
企業が海外展開で成功する秘訣の一つに、「現地への権限移譲」がある。もちろん企業と宗教団体ではガバナンスの構造が大きく異なり、一概には言えないが、過度な締め付けをするようでは、学会本部が掲げる「世界広宣流布」(世界に教義を広げること)の実現はおぼつかない。むしろ内部崩壊を加速させるだけだろう。
逆に、執行部がSGIとの対等な共存関係を築くことができれば、総本部の「広宣流布大誓堂」は世界中の信者が集う巡礼地となり、信濃町は世界的な聖地となっているかもしれない。
■創価学会と共産党の知られざる内幕を重層解剖!
『週刊ダイヤモンド』6月25日号の第1特集は、「創価学会と共産党 激変する巨大組織のカネ・人・出世」です。
1974年の師走。社会派推理小説の巨匠、松本清張の自宅で2人の男が対峙しました。一人は、創価学会会長の池田大作。そしてもう一人は日本共産党委員長の宮本顕治(肩書はいずれも当時)。
都市部の低所得者層を基盤とするなど支持層が重なっていたため、競合関係にあった学会と共産党。昭和の大作家が仲介する形で、互いの存在を認めて干渉しないことを確認したのです。世に言う「創共協定」です。
結局、この協定はすぐに死文化しましたが、二つの組織は今また、対極的な立場でにわかに存在感を増しています。
与野党それぞれのキャスティングボートを握る存在として、この二大組織にスポットライトが当たっているのです。
創価学会は与党・公明党の最大にして最強の支持母体であり、公明党が安定して国政選挙(比例区)で700万票以上を得票できるのも、学会の後押しがあるからこそ。学会票は今や、連立を組む自民党にとっても不可欠な存在となっています。
ただ、公明党が安保法制に賛成したことで、今回の参院選では学会票が減少するとの指摘があります。この巨大宗教組織が本気で動くかどうかが、政権の行方をも左右しそうなのです。
一方の共産党は2014年の衆院選では獲得議席数を8から21へと大幅に伸ばしました。今回の参院選ではさらなる議席増が期待されています。
一見すると、いずれも存在感を高めているようですが、組織内部に目を向けると、さまざまな“病魔”にむしばまれていることが分かりました。学会と共産党という、日本の命運を左右する二つの巨大組織の知られざる内幕に、容赦なくメスを入れました。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 山口圭介)
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