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注目の人 直撃インタビュー 夕張市長・鈴木直道氏が断言「夕張の将来は日本の将来」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/183654
2016年6月20日 日刊ゲンダイ
現在2期目の鈴木直道氏(C)日刊ゲンダイ
急激な人口減少と超高齢化
353億円超の巨額の財政赤字に陥った北海道夕張市の破綻は、06年当時、日本中に衝撃を与えた。あれから10年。財政再建は順調に進んでいるものの、急激な人口減少や超高齢化など立て直しへの課題は多い。ただ、これは破綻自治体に限った問題なのか? 35歳の若き市長、鈴木直道氏は「夕張は日本の縮図」「夕張の将来は日本の将来」と断言する。その心は?
――もともとは東京都庁の職員で、破綻後に夕張市に派遣された。東京に戻った後の11年の市長選の際に、夕張市民から出馬してくれと言われた。
出馬要請に来たのは旅行会社の社員やお土産屋さんの店員などでした。彼らがこう言ったんです。破綻前は選挙っていうと、掲示板のポスターを見て「どの人がまともかなあ」と選んでいた。でも破綻して、夕張がよくならないと自分たちの生活が大変だと意識した。「どの人がまともか」ではなく、「この人と一緒にやりたい」じゃなきゃいけないと思う、と。
――いまちょうど参院選ですが、有権者のそういう意識は重要です。もっとも、夕張市民は破綻したからこそ意識改革ができた。
行政サービスは空気みたいなものです。普段はその存在に気づきにくいけれど、空気が薄くなってきたり、失われたら生命にかかわる。苦しい思いをして初めて気づく。夕張の場合、炭鉱から観光へと舵を切ったのは当時の市長や議会ですが、その人たちは今、いなくなってしまい、残った人たちが負担を背負っている。選挙や政策決定の重要さを肌身で感じたんだと思います。
――当時の夕張市長が「財政再建団体」入りを表明して今月で丸10年です。「破綻」のニュースは衝撃的でした。
歴史上、財政再建団体になった自治体は885以上あるのですが、夕張が世間にあれだけの衝撃を与えたのは、赤字額の圧倒的な大きさです。1年間行政サービスを何もしないで全て借金返済に充てるとして、それを100%とすると、夕張の次に赤字額が大きかった自治体でさえ133%でしたが、夕張は801%だったのです。ただ、133%の自治体は9年で返済を終えた。均等割りで年間15%の返済です。夕張は返済期間20年。つまり年間40%を返さなければならない。そんな緊縮財政、「ミッション・インポッシブル」だと言われました。
■夕張は先進事例になっている
――財政再建の進捗状況は?
予定通り95億円返済し、いざという時のための財政調整基金も一定程度積みました。財政健全化という意味では優等生だと思います。ただ一方で、その副作用として人口が3割以上減り、高齢化率が40%から49%に上がりました。
――行政サービスの低下で若い人を中心に流出したのですね。どのくらい緊縮したのですか?
260人いた市の職員は100人になり、残った職員は年収ベースで最大40%減。特別職である私は70%減の月額25万9000円、退職金も100%減。議員は18人を半分の9人にして、報酬を40%減。人件費で合わせて6割弱のカットを生み出しました。ただ、それでも足りないので、市民のみなさんにもご負担をお願いしています。法律上の上限まで市民税を上げ、使用料等も高くしました。小学校は6校を1校に、中学校は3校を1校に統廃合。市の出先機関も5カ所を1カ所にした。図書館や市民会館は廃止。集会施設も全廃し、市民の運営にしてもらいました。各種団体やイベントへの補助金も全廃です。子供たちのための芸術鑑賞予算も全部切ったのですが、それだけは復活させました。
――財政は健全になっているが、まちとしてはいびつになってしまった。
破綻前にまちを作り変える必要があったんだと思います。夕張は1960年代、人口が12万人弱で北海道で7番目の大都市でした。それが今は9000人。しかし、60年代の都市構造が維持されたままなのです。10年の節目、今年8月までに財政再建一辺倒の現計画を抜本的に見直します。財政再建と地域再生の両立とともに、9000人という規模に合わせた住みやすさを模索したい。普通なら首長のクビが飛ぶような施設の統廃合が、破綻したことによって実施できた。都市構造を変え、「コンパクトシティー」を目指すという観点では、夕張は日本で最もそれを進められる可能性があると思います。
――人口減少は夕張に限らず、日本全体の問題でもあります。
人口減少に歯止めをかける努力はしなければいけませんが、厳しいリスクを見つめることを放棄してはいけない。財政についても、国家としてお金が潤沢にあるのかといえば、残念ながらそうではないし、健全化も必要です。夕張の将来は日本の将来でもあります。夕張は、好むと好まざるとにかかわらず、そういう先進事例になっていると言えます。
現在2期目の鈴木直道氏(C)日刊ゲンダイ
子育て政策は自治体間競争ではダメ
――人口減少に合わせた国づくり、まちづくりが必要だということですね。
国全体を考えるということで言えば、子育て政策を自治体間競争にせず、国がもっと主導的に決めて欲しい。例えば乳幼児の医療費助成。中学生まで無料にしている自治体が多いのですが、南富良野町は大学生まで無料なのです。南富良野には大学はありません。親が南富良野に住んでいれば、子供が東京の大学に通っていても無料です。夕張は無料なのは小学校入学前までです。住む場所によって、子育ての環境が大きく変わるというのは、どうなんでしょう。日本国民としてどこに住んでも同じ子育てができるように、国として考えるべきです。
――地方創生で政府はいろいろやっていますが、現場から見てどうですか?
地域がアイデアを出しなさい、というのはまっとうな話ですが、国が1700自治体の提案を見て、良し悪しを判断し、その経過を追っていくのは大変だと思います。むしろ国でしかできないことをやって欲しい。日本列島全体をどうするとか、日本国民のライフスタイルを考えるとか。例えば空路、道路や鉄路など、移動に関すること。北海道には誰もが行きたいと言ってくれますが、時間とお金が障害になる。財政措置だけではなく規制緩和も共に進め、国内の交流人口が活発化するようなことができないか。東京一極集中についても、月曜から金曜は東京で一生懸命働くけれど、土日は海や山に行って過ごせる環境をつくるとか。日本列島をどう最大化するかを考えていただきたいですね。
――日本全体も都市構造の作り変えが必要になってきているということでしょうか。
私は「逆再生」と言っています。経済成長期は道路や橋、建物をどんどん整備してきた。しかしこれからは、縮小しながら、国やまちを作り変えていかなければならない。成長期は行政と利益を上げる人が同じ方向を向いていましたが、これからは、行政はかつて利益を得ていた人たちを説得していかなければなりません。政治的エネルギーとしては、ものすごく大変です。
■政治家は責任が人生として残る仕事
――説得。それ大事ですね。もはや日本全体が大きく成長するような時代ではないし、お金もない。確かに、納得できる説明を聞けば、国民も理解するのではないか。夕張ではどうですか?
水道料金の値上げの際、担当課長が、「すぐ上げるA案と先送りするB案がありますが、市民への説明会ではA案しか話しません。B案を説明するとそちらになってしまうから」と言うのです。私は「両方説明したうえでA案で行きたいと言うべきだ」「仮にB案の希望者の方が多かったら、私の説明不足だから、説得しなくてはならない」と伝えました。そうしたら結果、8割がA案を支持したのです。きちんと説明し、説得し、行政と住民に信頼関係を築くことが大事なのだと思います。
――説明と信頼関係ですか。
選挙で選ばれる首長や政治家は、責任が人生として残っていく仕事だと思います。A案とB案があって「A案で行く」と決断したら、5年後、10年後にその判断がどうだったのか、決定者自身もそれを背負って生きていかなければなりません。やりがいがあるけれど、大変な仕事でもある。そういう苦しみを感じない人はならない方がいいと思います。
(聞き手=本紙・小塚かおる)
▽すずき・なおみち 1981年埼玉県三郷市出身。99年東京都庁入庁。2004年法政大法学部卒。08年夕張市へ派遣。10年内閣府地域主権戦略室へ出向。10年11月に都庁を退職し、11年4月の夕張市長選で初当選(30歳1カ月は当時全国最年少)。現在2期目。
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