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岸田文雄きしだ・ふみお/1957年生まれ。早稲田大学卒。広島1区で当選8回。外相、宏池会8代目会長。祖父(正記)、父(文武)と3代続けて宏池会に所属。沖縄・北方対策担当相、規制改革担当相、自民党国会対策委員長などを歴任(撮影/写真部・東川哲也)
ポスト安倍の大本命? 岸田文雄外相「現憲法に愛着ある宏池会を再び表舞台へ」〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160615-00000188-sasahi-pol
週刊朝日 2016年6月24日号より抜粋
来年60周年を迎える名門派閥、宏池会を率いる岸田文雄外相(58)。歴史的な米国・オバマ大統領の広島訪問の立役者となり、ポスト安倍としても注目されている。「現憲法に愛着を持つリベラル集団」のプリンスは今後、保守本流の意地を見せられるのか?「週刊文春」のトップ屋として活躍し、幅広い著述活動を展開する大下英治氏が話を聞いた。
* * *
大下:岸田さんが古賀誠元幹事長から引き継いだ派閥「宏池会」が来年、60周年を迎えます。保守本流の名門ですが、もともとはどういう縁だったんですか?
岸田:私が生まれた昭和32年、宏池会が結成されたのですが、私の祖父も立ち上げたメンバーでした。以降、3代にわたり、宏池会です。過去には池田勇人、大平正芳、鈴木善幸、宮沢喜一と歴代4人の首相が輩出しましたが、最近は政権から遠ざかっておりますね。かつて先輩方がいかに努力し、苦労し、成功したかを今、若手(当選2回以下)が中心になって勉強会で学んでいます。来年に向けて歴史を振り返り、政策を提言して60周年を意義ある年にしたいですね。
大下:宏池会らしさとは何でしょうか?
岸田:昭和30年の自民党結成に合流した吉田茂自由党の流れを深く継いでいる、「言論、表現の自由」を大事にするリベラルと言われる政治集団で、ハト派とも言われています。さらに宏池会の先輩方は日本国憲法の制定の現場にかかわった方が多いので、宏池会としては現憲法に対する愛着というのはあると思います。
大下:改憲に対するご見解はいかがですか?
岸田:われわれは改憲に反対というのではなくて、愛着があるから、時代の変化にも対応してよりいいものに変えていこうというスタンスです。もともと現憲法そのものを否定するスタンスではないということです。
大下:今は憲法改正というと、岸信介元首相の孫でもある安倍首相というイメージがありますね。
岸田:その系譜は清和会へとつながり、そして吉田自由党の流れは、宏池会と平成研(旧田中派)につながっていると思います。
大下:宏池会はリベラル、平和主義ですね。
岸田:はい。安全保障については、軽武装、経済重視でいかないと、戦後、国民は食べていけなかった。そして日中国交回復も深く関わりました。
大下:田中角栄さんと大平さんですね。
岸田:そうですね。宏池会の先輩方は韓国との関係も含め、近隣諸国との関係において具体的に汗をかいた。政治スローガン、イデオロギーに振りまわされるのではなく、国民の声を聞きながら、極めて現実的な対応をしていくというのが宏池会で、それが保守本流の基本的なスタンスだと思っています。
大下:歴代の宏池会の政権の特徴としては「寛容と忍耐」でしたね。
岸田:はい。池田内閣のスローガンでした。宏池会の政権の特徴としては、権力の使い方に対し、極めて謙虚でした。ですから、われわれも寛容と忍耐を受け継いで、丁寧に謙虚に権力を使わなければならないというスタンスを大事にしています。
大下:安倍政権との距離感はどうでしょう。
岸田:憲法を変えるのに反対というのではなく、改正すべきところは改正し、協力できるところもたくさんあると思います。全否定するとか、全肯定するのではなく、要はバランス感覚ですよね。
大下:古賀誠さんが、岸田さんを「ケンカしない。言葉がやさしすぎる」と評しておられますけど、どういうタイプだと思いますか。
岸田:政治の世界というのは古賀先生のおっしゃるとおり、ケンカすべきときはケンカすべきなのでしょう。ただ、ケンカばかりしていても、なかなか政治の世界で生きていくことができない。
大下:古賀先生は今も宏池会をバックアップされていますか?
岸田:はい。昨年の総裁選挙の対応をめぐって、立場、考え方が違ったということはありました。でも、その後、月に何べんかは古賀事務所にお邪魔してご指導は受けております。
大下:酒豪の岸田さんは外遊先で買ったワインなどをお土産で持っていかれるそうですね。5月31日の宏池会の勉強会のとき、古賀さんが「首相をめざす覚悟をしたらどうだ」と、みなさんの前で岸田さんにおっしゃった。なんと返答されたんですか。
岸田:別に返答はしておりませんが、ありがたいことだと思っています。若手も宏池会の系譜につながっていることを誇りに思うと口々に言っていますので、ぜひ政治の中で存在感を示したい。しっかりとした政治勢力になりたいと思っています。
大下:存在感ということは次のポスト安倍の総裁選のときには、当然、手を挙げられますよね。
岸田:今の段階で、挙げるとか言うとまた独り歩きするので、それはまだ控えてはおります……。
大下:それは控えめですね。オバマ大統領の広島訪問でも大きな成果がありましたし、そろそろ名乗りを上げてもいいのでは?
岸田:来年の宏池会60周年に向けて盛り上げたいと思ってますし、その結果が、ポストにもつながっていくのではないでしょうか。
大下:その意味じゃ、ご自分がもう少し発言を多くして、PRされたほうがいいのでは。
岸田:はい、私もそうした指摘はぜひ参考にさせていただき、努力したいと思います。(構成 本誌・上田耕司)
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