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ここまできた自衛隊の教育現場への浸透 二極化・格差社会の真相
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/183510
2016年6月14日 日刊ゲンダイ 文字起こし
滋賀では自衛官募集と書かれたトイレットペーパーを中学校に配布していた(提供写真)
いくつかの市民運動が連帯した「教育への自衛隊の介入と安保法制を許さない首都圏集会」が、先週末に東京都内で開かれた。筆者も足を運んでみたところ、近年における自衛隊の学校現場への凄まじい浸透ぶりが報告されていたので、一端だけでも紹介しておきたい。
それによれば、東京都教育委員会は2012年度から、全都立高校に地域や関係諸機関と連携した1泊2日の“防災訓練”を課している。多くは消防署や区・市役所などを選ぶようだが、自衛隊と組んで生徒に隊員の講話を聞かせたり、PR映像を見せる学校も少なくない。初年度は4校だったが、以来、8校、7校、昨15年度は9校と、じわじわと拡大してきている。13年度に田無工業高校が朝霞駐屯地(東京都練馬区)、14年度には大島高校が武山駐屯地(神奈川県)で、それぞれ2泊3日の隊内生活体験訓練に参加した事実も表面化した。
防災訓練の名目だけではない。日比谷高校や山崎高校(町田市)は自衛隊でのインターンシップを実施したし、練馬工業高校の生徒は「奉仕」の教科で練馬駐屯地に行かされた。また、横浜市立中山中学校は昨年、陸自の東富士演習場(静岡県)で行われた「富士総合火力演習」を生徒に見学させている。予備自衛官補でもある教員が引率した。
目的は隊員のリクルート、さらには若者を戦時体制に従順にする刷り込みか。首都圏外にも強烈な実例が山ほどあった。
大阪府には「国防教育」を教育目標に掲げる府立高校が2校ある。うち1校は女性の民間人校長で、隊員の採用窓口になる地方協力本部(青森)で本部長まで務めた元自衛官。
最も驚かされたのは昨年7月、集団的自衛権行使容認の閣議決定の翌日に、三重県内の高校で一斉に配布された「自衛官募集」のチラシだ。自衛隊三重地方協力本部とともに、三重県および三重県教委が名を連ねていた。一般行政からは独立しているはずの教育委員会が――。
チラシには“萌え”系美少女アニメ風のイラストも。近頃の自衛隊がやたら多用する、オタク男子向けの宣伝手法である。
集会では情報公開請求で得られた陸上幕僚監部の「平成27年度募集実施計画」のコピーが配られた。〈時代に即した各種メディア広報の充実を図る〉の記述が不気味だ。ジャーナリズムの価値観とは無縁のネットメディアはもちろん、広告費の減少に苦しむ新聞やテレビ、雑誌等の既存メディアがカネになびいていかない保証はない。この国はここまできてしまった。
斎藤貴男ジャーナリスト
1958年生まれ早大商卒業、英国・バーミンガム大学大学院修了(国際学MA)。『日本工業新聞』入社後、『プレジデント』編集部、『週刊文春』の記者を経て独立。弱者の視点に立ち、権力者の横暴を徹底的に批判する著作を出し続けている。消費税の逆進性を指摘する著作も多数。「機械不平等」「安心のファシズム」「戦争のできる国へ 安倍政権の正体」「ちゃんとわかる消費税」など。
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