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安倍首相の心を乱した衆参ダブル選「事前シミュレーション」驚きの数字
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48828
2016年06月07日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
伊勢で各国首脳を出迎えた安倍総理の表情には、まだ逡巡が見て取れた。ギリギリまで決められなかったのも無理はない。判断を誤れば、積み重ねてきた全てが無に帰すかもしれないのだ。「決断」の内幕。
■「やりたい」が本音だった
衆参ダブル選をやるべきか否か。そして、消費税を予定通り上げるべきか否か—この二つの問題をめぐって、不測の事態が次々に生じ、わずか数日で空気が一変する。安倍総理にとって、この1ヵ月あまりは、人生で最も「先の見えない」日々だったに違いない。
今や政界の先行きは、安倍総理の「決断」ひとつにかかっている。とりわけ、伊勢志摩サミット直前の5月第4週には、総理は何度も心変わりし、もはや側近にすら、一寸先の状況も読めなくなった。総理に近い自民党ベテラン議員が言う。
「総理自身が、『ギリギリまで判断を下さない』と決めたんです。本来、ダブル選は衆参の相乗効果で圧勝するのを狙ってやるわけですが、今回はそれだけじゃない。
近くで見ていて感じるのは、とにかく安倍さんの中で『野党にアベノミクスは失敗だ≠ニ言われるのは腹が立つ』という怒りが日に日に強くなってきている。だから、サミット直前には『まだ隠し玉がある』という話が党内で流れました。5兆円規模の財政出動を決めて、アベノミクスの『再起動』を国内外にアピールし、選挙になだれ込む。サミットの最中にも、総理はそんなプランを抱いていたわけです」
このとき、安倍総理の頭の中にはある「数字」が強く刻まれていた。5月17日にもたらされた、自民党選対による非公開の世論調査結果である。
ダブル選実行の判断材料とするために、自民党はゴールデンウィークの前後、2度にわたる調査を行っていた。これは党としても異例のことだ。
最初の調査はふるわなかった。「ダブル選をやれば、自民党は30~40議席減らす」。官邸は暗いムードに包まれた。
だが、休みが明けて2度目の報告が飛び込んできた時、安倍総理と側近たちは色めきたった。
「『衆議院は10議席減の280議席、参議院は55議席』という結果だったんです。『衆議院がたった10議席減で何とかなるなら、むしろダブル選をやって、参議院の議席を伸ばせるだけ伸ばすべきだ』というのが、この報告を受けて官邸での一致した見解になった」(官邸スタッフ)
■「これなら、やれる—―」
一時は弱気になっていた安倍総理は、この「数字」を目にして、再びダブル選への意欲を燃え上がらせていったのである。
安倍総理自身は、どちらかと言えば、これまでも一貫して「ダブル選も消費税増税延期も、やれることなら両方やりたい」というのが本音だったはずだ。
しかし、最後までその両方に反対し続けた勢力があった。ひとつは、安倍総理の盟友でありながら、今や「財務省の先兵と化した」とも評される、麻生太郎財務相である。
伊勢志摩サミットが目前になっても、安倍総理と麻生氏の間には険悪な雰囲気が流れていた。サミット本番に先立って、5月21日に仙台で開催されたG7財務相・中央銀行総裁会議では、麻生氏は改めて「消費税増税は予定通り実施する」と断言している。
実は、これには「前哨戦」があった。
「5月2日から、麻生さんは黒田(東彦日銀総裁)さんとドイツを訪れ、アジア開発銀行年次総会に出席しました。そこで麻生さんが述べた『(消費税増税をしなければ)世界で最も進んだ社会保障制度は維持できない』『改革(=増税)には痛みが伴う。反対があるのは当然のことだ』という増税断行発言は、麻生さんの完全なスタンドプレーだったんです。
麻生さんが、立場の上でも信念の上でも、『消費税増税は予定通りやるべき』派なのは総理も知っている。でも、海外であれほど堂々と言うとは思っていなかった。増税断行を国際公約するに等しいですからね。この発言の前後、安倍総理と麻生さんは消費税増税について何度も『激論』を交わしています」(前出・ベテラン議員)
■身内が敵ばかりに
消費税増税先送りは、安倍総理にとってダブル選を打つための最も重要な手札である。しかし麻生氏は、その後の自派閥の会合でも一貫して「ダブル選はない」との見解を示し続けた。「増税先延ばしでダブル選をやるなんて、オレは認めない」ということだ。
「麻生さんは、オレの手足を縛るつもりか—」
安倍・麻生・甘利の「トリプルA」と呼ばれた体制は、この5月で完全に崩れてしまったのである。総理をして、不安を抱かせるに十分な痛手だった。
安倍総理にとって、もうひとつの大きな抵抗勢力が、公明党だ。
「ここにきて公明党が、『ダブル選をやれば、ウチの選挙組織は衆院まで手が回らない。自民党は(衆院で)100議席減らすことも覚悟してもらいたい』と再三官邸に警告を送るようになった。
公明党としては、参院選のほうが衆院選よりもはるかに優先度が高い。公明党はあえて衆院選の準備を一切しないことによって、総理に対して『無言の反対』を示し続けました。総理のほうも、山口那津男代表が官邸を訪ねてきても、ダブル選については一切情報を流さない、という対応に出た」(全国紙政治部デスク)
自民党内では、「公明党はやる前にはうるさく反対するが、いざやるとなれば口をつぐんで付いてくるはずだ」という見方も少なくなかった。過去の解散総選挙のことを思えば、それはあながち間違いでもあるまい。
■「見送り」報道のウラで
ただ、安倍総理の不安を真にかきたてたのは、官邸で公明党との折衝役を引き受ける菅義偉官房長官までもが、あからさまにダブル選に難色を示し始めたことだった。
「菅さんは最近になって、ダブル選について半ば公然と『私は総理に何か言える立場にはない。ただ……』と言葉を濁すようになった。何しろ人手を差配したり根回しをしたり、実務をやるのは菅さんですし、おまけに『公明党の説得もやれ』『財務省への根回しもやれ』と言われる。ダブル選の地ならしは、全部菅さんに押し付けられるわけです。
『議席を減らすと分かっていて、選挙をやる意味があるのか』『疲れた』などと、グチに近いことを漏らしている、との話も聞いています」(前出・官邸スタッフ)
足元がおぼつかないようでは、党も選挙組織もフル稼働させなければならないダブル選は、とても戦えない。総理の頭の中には「もしダブルをやって、身内の裏切りやサボりに遭い、負けてしまったら」という思いが渦巻いていたのだ。
4月24日に投開票された、衆院北海道5区の補選では、自民党候補は最終的に勝ったとはいえ、世論調査で野党統一候補にいっとき逆転を許した。直前に発生した九州の大地震で、大々的な選挙応援を自粛せざるを得なかったことも逆風となった。公明党のアシストがなければ、負けていてもおかしくなかった選挙だ。
この補選で自民党に協力した、新党大地・鈴木宗男氏との絡みも、総理の悩みのタネとなった。
「北海道が苦戦になるということで、伊吹(文明元衆院議長)さんが宗男さんに支援をお願いした。宗男さんとしては娘の貴子(衆院議員)さんを自民党に入れてほしいから引き受けたのですが、彼女は一昨年の総選挙で比例復活だったから、このままでは入党できない。だから宗男さんは、総理に(衆院選を)やってくれ、とハッパをかけてきたんです」(自民党中堅議員)
ダブル選をやってもやらなくても、誰かしらの恨みを買うことになる。このひと月、安倍総理の心は千々に乱れていた。だが、国民にそれを気取られるわけにはいかない。「解散のカの字も考えていない」とだけ語り、新聞各紙も「ダブル選はある」「やっぱり見送る」と報道を二転三転させた。
迷いに迷い続ける心の裡を、決して誰にも気取られぬように抑えてきた安倍総理。まもなく、その命運が決する選挙がやってくる。
「週刊現代」2016年6月11日号より
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