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バラク・オバマ米大統領は27日、広島の平和記念公園に到着し、原爆慰霊碑に献花した。〔AFPBB News〕
謝罪するわけがない米国「原爆投下は正しかった」 米国のテレビに出演して痛感、揺るぎない原爆投下正当論
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46977
2016.6.1 古森 義久 JBpress
米国のバラク・オバマ大統領の広島訪問が、71年前の原爆投下の是非を巡る議論を日米両国で改めて再燃させている。
広島と長崎への原爆投下は、戦争を早期に終わらせ、戦火の犠牲者を最小限にするために本当に必要だったのか。それとも米国には、原爆を両都市に落とさなくてもすぐに日本に完全勝利するだろうという展望があったのか。
米国では新しい史実も明るみに出て多様な議論が生まれている。だが、投下「正当」論が米国の“正史”であることは変わらない。正史は今も揺らいでいないことを日本側としては知っておくべきだろう。
■原爆投下の是非を巡ってテレビ番組で討論
原爆投下の是非をめぐる議論には、私自身も米国で関与してきた。今でも忘れられない大きな舞台は、約20年前にCNNテレビの討論番組「クロスファイア」に出演したことだ。米国では20年前にも、すでに原爆投下の是非を巡る議論が盛んだったのである。
この「クロスファイア」は「十字砲火」というタイトルどおり、参加者たちが激論を戦わせる番組である。1994年12月、クロスフィアはまさに「広島、長崎への原爆投下は必要だったのか」というテーマで関係者による討論を行った。その討論の日本側の代表のような形で私は番組に招かれた。
今回はその内容を、現在の原爆投下是非論を考える際の参考資料として紹介したい。
番組の主役はチャールズ・スウィ―ニ―氏だった。スウィ―ニ―氏は広島と長崎の両方への原爆投下作戦に加わった唯一の米軍人である。
広島作戦では、原爆投下機に密着して飛行する気象観測機の機長を務めた。長崎では、原爆投下機そのものの機長だった。当時は米陸軍航空隊の少佐で、すでにベテランのパイロットだった。戦後は米空軍勤務となり、少将にまで昇進した。
番組の進行役を務めたのは、先代ブッシュ大統領の首席補佐官だった保守派のジョン・スヌヌ氏と、著名な政治評論家でリベラル派のマイケル・キンズレ―氏だった。
この2人の論客は冒頭から私の方をにらむような姿勢で、「原爆投下は日本の戦意をくじき、戦争を早く終わらせるために必要でした」(スヌヌ氏)、「日本軍は真珠湾をだまし撃ちしたし、もし原爆を持っていたら必ず使ったでしょう」(キンズレ―氏)などと語った。保守、リベラルを問わず米国の投下正当論を集約したような発言だった。
そして、原爆投下の当事者だったスウィー二―氏も、「日本本土上陸作戦で犠牲になるであろう戦死者数を考えれば、原爆投下は適切でした」と述べた。同氏はこのとき74歳。血色が良く、体躯はがっしりしており、穏やかな語り口が印象的だった。
■「原爆は多くの人命を救った」とスウィーニ―氏
その後に発言を求められた私は、原爆の非人道性と日本側の惨状を指摘し、次のような趣旨を述べた。
「当時はソ連の参戦も決まり、米国は日本の降伏を確実視していました。特に2発目の長崎への投下は、戦争の早期終結が目的ならば不必要だったはずです。もし日本側に原爆の威力を示したかったのならば、無人島や過疎地にでも投下すれば十分だったでしょう」
それまでに資料を広範に読み多数の専門家の見解を咀嚼した私なりの意見だった。
するとスウィーニ―氏はすぐに反論してきた。当時の日本軍の前線での徹底抗戦ぶりや国家首脳部の「一億総玉砕」の宣言をあげて、原爆がいかに多くの人命を救ったかという主張を語った。
私は「戦争を継続した場合の戦死者の予測数で、20万以上の民間人の犠牲を正当化することはできません」と反論した。だが、日本軍と実際に激戦を続けたスウィーニー氏の主張には、説得力さえも感じさせられた。
■米国社会の一般的な認識がよく分かった
次に、米国で『原爆外交』という書籍を出した歴史学者のカール・アルペロビッツ氏が発言した(この討論番組は、米国人が合計4人、日本人は私1人という構成だった)。
アルぺロビッツ氏は原爆投下に反対する立場だった。同氏は次のような説を述べた。
「当時、米国政府首脳は日本の全面屈服が近いことを知っていました。その事実を示す資料があります。さらに、当時の米軍最高部の中にも、原爆使用に反対する意見が存在しました。日本政府に新兵器の恐ろしい威力を理解させるために、民間人の少ない海軍基地に投下する、という計画もありました」
アルぺロビッツ氏の発言は私の発言や考えとほぼ同様であり、番組内では私の主張の支えとなった。
CNNテレビの番組制作スタッフは、このように日本人である私の原爆投下不要論に援軍を送るような人物も出演させていた。少数派の異見もきちんと紹介するのだ。このあたりはいかにもアメリカらしいところである。
しかし、合計20分ほどの討論の後半では、進行役のスヌヌ氏とキンズレ―氏が投下正当論をさらに力強く展開し、私やアルペロビッツ氏には反論の機会がほとんど与えられなかった。
私にとって、この番組に出演したことは貴重な体験だった。米国社会では「広島や長崎への原爆投下は正しい判断の結果だった」という認識が一般的で圧倒的多数だという現実を改めて理解できたからだ。
公正でオープンだと言われていたこの討論番組でも、原爆投下は正当だったという“正史”は動かしようがなかった。この事実は、米国全体の認識の反映だったと言ってもよいだろう。
■認めるしかない、米国と日本の受け止め方の違い
スウィーニー氏は「クロスファイア」出演の後に "War's End: An Eyewitness Account of America's Last Atomic Mission" (日本語版は『私はヒロシマ、ナガサキに原爆を投下した』)という書籍を発行し、その中で、終戦直後に長崎市を訪れて破壊の惨状を目の当たりにし「どれほどの人間の命が奪われたかを考えて悲しみに襲われた」と回顧している。
だがスウィーニー氏は同じ書籍の中で、自らの爆撃任務については「後悔も罪悪感もない」として日本の「軍国主義文化」を非難していた。この感覚も米国の多数派の歴史認識にぴたりと合致している。
約20年前のテレビ番組でスウィ―ニ―氏らの言葉が象徴した米国人の主張や考え方は、現在も基本的には変わらない。日本側としては、多数の非戦闘員の生命を一瞬にして奪った原爆投下の非人道性はどう捉えても正しかったとは言えない。しかし、米国と日本の受け止め方は対照的だと言える。
オバマ大統領が広島を訪問しても、日米の認識の隔たりが消えることはない。違いは違いとして受け止め、その上で相互理解を図るべきだろう。お互いの異なる立場を認め合うことで、より健全でより緊密な日米関係の未来が開かれることを期待したい。
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