2016年5月29日(日) 主張 オバマ氏広島訪問 核なき世界へ具体的行動こそ 伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)に出席したオバマ米大統領が、アメリカ大統領として初めて被爆地・広島市の平和記念公園を訪問しました。史上初めて人類に対する核兵器が広島と長崎に使われた惨禍から71年、原爆を投下した核超大国の現職大統領が、爆心地の公園に足を運び、被爆者らを前に、「核兵器なき世界を追求」すると演説したことは、歴史的な一歩です。この決意を生かすためには、核兵器禁止条約の国際交渉に踏み出すなど、核兵器廃絶の実現へ向けて具体的な行動へすすむことが強く求められます。 被爆者の願いにもこたえ オバマ大統領の演説は、広島で犠牲になった10万人以上の日本人、数千人の朝鮮半島出身の人々、米国人捕虜らへの追悼から始まりました。想定されていた「数分」ではなく17分間の演説で、「核兵器の備蓄がある国は、恐怖の論理から抜け出す勇気を持ち、核兵器なき世界を追求しなければならない」「広島と長崎が核戦争の夜明けとしてではなく、私たち自身の道義的な目覚めの始まりとして知られる未来だ」などと語りました。演説前後、原爆資料館などを見学し、被爆者とも言葉を交わしました。 オバマ大統領の平和記念公園滞在は1時間足らずでしたが、「『核兵器を使用したことがある唯一の核保有国』の大統領として、筆舌に尽くせない生き地獄を体験した被爆者の話を聞き、被爆の実相、被爆資料などに直接触れること」(日本原水爆被害者団体協議会の要望書)を何度も求めた被爆者の願いを反映したものといえます。 オバマ大統領は大統領就任直後の2009年4月のプラハでの演説で、「核なき世界」の実現を訴えました。広島訪問は、大統領の任期切れを前に、それをあらためて想起させるものですが、問題は、これから「核兵器のない世界」の実現へつなげるかどうかです。 オバマ大統領は広島の演説で、原爆投下について「世界は一変した」「人類が自らを滅ぼす手段を持った」と述べました。これは民間人を無差別に殺(さつ)戮(りく)し、将来世代にも深刻な被害を与える核兵器の壊滅的破壊力、非人道性を意味しています。「核兵器に関する議論、決定、行動は…核兵器が引き起こす筆舌に尽くしがたい苦しみと容認できない被害から導かれるべきだ」(15年、国連総会決議「核兵器のない世界のための倫理的義務」)という国際世論が多数となっています。「核抑止力」論に立ち核兵器廃絶を永久に先送りすることは、もはや許されません。米国自身が非人道性を直視し、いままでの核政策について再検討を行い、転換へ踏み出すことが急務です。 問われる安倍政権の姿勢 オバマ大統領に同行した安倍晋三首相が、大統領に続き発言した所感で、「日米同盟は世界に希望を生み出す同盟」と同盟強化を口にしたことは見過ごせません。「核抑止力」にもとづき、日本をアメリカの「核の傘」の下に置く日米軍事同盟を強めることは、「核兵器のない世界」とは両立しません。 日本政府は核兵器禁止の法的措置を討議する国際会議で、核保有国の代弁者としてふるまっています。唯一の被爆国にあるまじき態度です。「核抑止力」論や「核の傘」論をただし、核兵器廃絶の国際的世論を広げることが重要です。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-05-29/2016052901_05_1.html 2016年5月29日(日) オバマ氏広島演説 世界はどうみた オバマ米大統領が27日に広島を訪れ、核なき世界を目指す決意を示したことに、各国の政府、メディアが注目しています。 具体化の計画を 米紙社説 〖ワシントン=島田峰隆〗米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は27日、「言葉を核兵器のない現実に変える」と題する社説で、「オバマ米大統領のメッセージは、核兵器のない世界という目標に世界をさらに近づける具体的な計画を発表していれば、もっと力強いものになっただろう」と指摘しました。 社説は、オバマ氏が2010年にロシアとの間で新しい戦略兵器削減条約(新START)を調印し、15年にはイラン核合意をまとめたことを指摘。その一方で今後30年間に1兆ドル(110兆円)を費やして米国の核兵器の近代化を進めようとしているとして、「オバマ氏は自らの功績を弱めている」「崇高な言葉だけでは世界から核兵器をなくすことはできない」と強調しました。 「歴史的」と評価 欧州メディア 〖パリ=島崎桂〗欧州メディアは27日、同日行われたオバマ米大統領の広島訪問について大々的に報じました。各メディアは、オバマ氏と被爆者とのやり取りを詳細に報じるなど、今回の訪問を「歴史的」と評価。併せて、オバマ氏が原爆投下を明確に謝罪しなかった点を大きく取り上げました。 英BBC(電子版)は、「オバマ氏は1945年8月6日の記憶は決して消えないと語ったが、米国による世界最初の核攻撃に対する謝罪はなかった」と指摘。1兆ドルを要する米国の核兵器近代化をオバマ氏が承認したことに触れ、「オバマ氏は世界最大の核兵器国の指導者にとどまっていると指摘する声もある」と報じました。 また、「オバマ氏から数歩離れたところには、いつものように、核兵器発射コードの入ったカバンを持つ軍人が立っていた」とも報じました。 仏紙リベラシオン(27日付電子版)は「戦死者を追悼するも謝罪なし」との記事の中、オバマ氏が「『核なき世界』への願いを改めて表明した」ものの、「広島・長崎への核攻撃ではなく、第2次世界大戦での6000万人の死者についてより多くを語った」と論じました。 仏紙ルモンドは、被爆者の平均年齢が80歳を超えたことに触れ、「20世紀最大の悲劇の被害者の声を聞く時間はほとんど残されておらず、このことがオバマ氏が広島に向かった理由の一つとなったことは間違いない」と論じました。 仏誌ヌーベル・オプセルバトゥール(27日付電子版)は、今回の訪問がオバマ氏から後任の米大統領への「遺産」になると指摘。とりわけ、米大統領選で民主党の指名獲得が有力視されるヒラリー・クリントン氏については、「オバマ氏に比べ、核兵器問題への関心が非常に低い」と評しました。 「南京」忘れるな 中国外相 〖北京=小林拓也〗中国の王毅(おうき)外相は27日、オバマ米大統領の広島訪問について、訪問先の広西チワン族自治区で記者団に対し、「広島は注目に値するが、南京はさらに忘れてはいけない。被害者には同情すべきだが、加害者は永遠に自らの責任から逃れられない」と述べました。戦争被害だけを強調し、加害責任に背を向ける日本政府の姿勢をけん制したかたちです。 28日付の中国共産党機関紙・人民日報は「安倍首相にとって、日米同盟を強化する助けとなった」「国内での政治的圧力が高まる中、安倍首相は外交を突破口にしようとしており、自らの政治宣伝に利用するだろう」とする専門家のコメントを掲載しました。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-05-29/2016052905_01_1.html
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