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下り坂の安倍政権に参院選がとどめ刺すー(植草一秀氏)
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26th May 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks
伊勢志摩サミットで積極財政の合意を取り付けようとした安倍首相の目論見は失敗に終わる見通しである。
そもそも、緊縮財政を実行している日本が、積極財政を提唱していることが喜劇である。
安倍首相は今日から始まったG7サミットで、現在の経済状況が
リーマンショック後の経済状況と同等であることを訴えたが、
参加者から「危機」の表現は強すぎるとの批判を受けた。
安倍首相は、
原油などの商品価格の下落率がリーマンショック前後と同等になっている、
新興国・途上国の投資伸び率がリーマンショック後と同等になっている、
新興国等への資金流入がリーマンショック後と同等になっていること
などを根拠に、現在の世界経済が
リーマンショック時の危機に匹敵するものであると訴えたようだ。
しかし、これは安倍首相が得意とする
「こじつけの論理」
でしかない。客観的な正当性を欠いている。
ものごとの、ある側面だけを針小棒大に捉えて、
自分に都合の良い解釈を示すのが「安倍流」だが、他のG7首脳には通用しないだろう。
経済全体の体温とも言える株価の推移を見ると、
NYダウはリーマンショック後の安値
6500ドル水準から1万8000ドル水準へと2.8倍の水準に大暴騰している。
ドイツの株価もリーマンショック後の安値に対して2.8倍の水準にある。
英国株価も1.8倍、日本株価も2.4倍の水準だ。
あまりにも不自然な言動を繰り返すと、世界から嘲笑を浴びるだけになることを自覚するべきだろう。
2014年から2016年にかけて中国株価が乱高下し、
他方、原油価格が急落したことは重要事実で、
このために世界経済が影響を受けていることは事実だが、
これとリーマンショック=サブプライム金融危機を同列に扱うことは適正でない。
安倍首相が
「リーマンショック前後の経済危機と同等の経済危機」
をこじつけで強弁したのは、
参院選を控えて消費税再増税再延期を打ち出さざるを得ないためであると見られる。
2014年12月総選挙の直前にあたる同年11月18日、
安倍首相は消費税再増税の18カ月延期を表明した。
その際に、
「来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、
さらに延期するのではないかといった声があります。
再び延期することはない。
ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。」
「平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。
3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。
私はそう決意しています。」
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/1118kaiken.html
(動画の7分48秒以降の部分)
と述べた。
「消費税再増税の再延期はない」と断言している。
その消費税再増税を再延期するというのだから、追及されるのは当然のことだ。
この問題をクリアするため、
現在の世界経済が「リーマンショック前後の経済危機に匹敵する」という「作り話」を
でっち上げようとしているわけだ。
サミット後、安倍首相は消費税再増税再延期を打ち出し、参院選に臨むものと見られる。
衆院選については、先送りして2016年から2018年までの好機を見定める方向に
傾いていると思われるが、安倍政権の政局時計の歯車は明らかに狂い始めている。
サミットでは日米同盟の強化をアピールする予定であったが、
沖縄での米軍関係者による卑劣で凶悪な事件が表面化して、
同盟そのものの矛盾が表面化することになった。
オバマ大統領が広島を訪問することが目玉となったが、
「謝罪なき広島訪問」
は広島を侮辱するものである。
広島は物見遊山の観光地ではないのだ。
沖縄の事件についてもオバマ大統領は謝罪すらしていない。
米軍のトップに大統領が位置し、その配下の米軍関係者による凶悪犯罪について、
トップが謝罪するのは当然のことだ。
植民地での凶悪犯罪については謝罪する必要がないと判断しているのだろう。
参院選で安倍政権与党が敗北すれば、衆院選に向けて野党共闘が加速する。
株価は安倍政権発足後から2015年6月までが上り坂。
2015年6月からは下り坂に転じているが、この下り坂の先には
「まさか」
が控えているようだ。
安倍首相は積極財政を提唱しているが、喜劇でしかない。
2016年度当初予算と2015年度補正後予算を比較すると、
歳出が2兆9415億円小さく、
税収が1兆1800億円大きい。
マクロ経済に与える影響では、これを
4兆1215億円の緊縮予算
と捉える
安倍政権は熊本地震への対応として7780億円規模の補正予算を成立させたが、
これを差し引いても3兆3435億円の緊縮財政になる。
緊縮財政を実行しておきながら、他国に積極財政を要請するというのは、
国際的な外交常識にも反する身勝手な振る舞いである。
安倍首相が、このような奇妙奇天烈な言動を示している背景に、
「再延期はないと断言する」
とした消費税再増税をどうしても再延期せざるを得なくなったという事情がある。
「息をはくようにウソをつく」
と言われる安倍晋三氏。
鈍感な国民も、そのウソにようやく気付き始めている。
「TPP断固反対」のポスターを張り巡らせた2012年12月の総選挙。
安倍氏がTPP交渉参加を表明したのは2013年3月だった。
2013年9月のIOC総会。
「福島の汚染水は港湾0.3平方キロ内で完全にブロックされている」
と安倍首相は述べた。
しかし、海にブロックの壁が設置されたわけでもなく、港湾は外界に接しているのだから、
「完全にブロックされる」
ことは物理的にあり得ない。
2年以内にインフレ率を2%以上に引き上げる話も消滅した。
「トリクルダウン」で大企業の利益が一般国民にも波及するという話も、
「単なる詐欺ばなし」
に過ぎなかったことが判明している。
2014年の選挙の際に、消費税再増税を延期して、
18カ月後には必ず増税を実施できる経済状況を生みだすとした公約も破滅して、
選挙に不利になるからと、
「再延期はないと断言」した消費税再増税再延期を打ち出そうとしている。
さすがの詐欺師も、体裁を気にしなくてはならない状況に追い込まれている。
そこで、サミットの場を利用して、
「リーマンショック並みの経済危機」説をねつ造しようとしているわけだ。
アベノミクスで国民経済は浮上しなかった。
アベノミクスは
経済全体の停滞
と
1%の大企業の収益増大
をもたらしただけである。
全体のパイが小さくなるのに、1%の大企業が所得をより多く分捕るから、
一般庶民の分配所得は全体として大幅に減少した。
安倍首相は
「失業率が下がった」
「有効求人倍率が上がった」
と自画自賛するが、
全体のパイが小さくなり、労働者の取り分が大幅に減ったなかで、
それを分け合わなければならない人数だけが増えたのだから、
1人当たりの取り分は、さらに大きく減ったということになる。
大半の主権者にとってアベノミクスは、「百害あって一利なし」である。
参院選で主権者は、
「安倍政治を許さない!」
投票行動を取らねばならない。
そして、その投票が死票にならぬよう、
主権者の投票を当選可能性の高い候補者に集中させることが必要だ。
主権者が参院選に勝利すれば、衆院選での政権交代実現の可能性が高まる。
安倍政権はメディアに「衆参ダブルなし」報道を蔓延させて、
野党が内閣不信任決議案を提出したら、これを大義名分に衆参ダブルに突っ込むかも知れない。
ペテン師内閣の行動だから予断を許さない。
主権者は、いつ総選挙が実施されようとも、たじろがずに、これに正攻法で立ち向かわねばならない。
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