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伊勢志摩サミットは成功しても、「幸福なサミット」はこれが最後になるはずだ 世界各地で始まる「ミニ・トランプ」の暴走
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48769
2016年05月27日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」 現代ビジネス
■「協調の時代」の終焉
伊勢志摩サミットが5月26日、G7の「協調」をアピールして開幕した。
だが、各国が足並みを揃えられるのは、今回が最後になるかもしれない。米大統領選で共和党のトランプ候補が躍進しているのをはじめ、世界で「自国優先主義」が勢いを増しているからだ。
1975年、フランスのランブイエから始まったサミットの時代は、一言で言えば「協調の時代」だった。石油ショック(73年)への対応を話し合うために集まった首脳たちは、それぞれの国益をひとまず横へ置いても、結束して景気をテコ入れする必要に迫られた。
その後、冷戦が終結し91年にソ連が崩壊すると、旧ソ連圏諸国の民主主義的移行を後押しするために、94年からロシアが政治討議に参加する。それからしばらくは世界がユーフォリア(幸福感に満ちた楽観主義)に包まれた時代だった。
ところが、そのロシアは2014年3月にクリミア半島に侵攻する。その結果、同年6月にロシアのソチで開かれるはずだったサミットは中止され、代わりにブリュッセルで開かれたサミットでロシアの除名を決めて現在に至っている。
G7各国はロシアのクリミア侵攻を一致して非難したが、世界を見渡すと、残念ながら事態は改善するどころか悪化の一途を辿っている。
中国は尖閣諸島を脅かす一方、東シナ海の上空を「防空識別圏」と称して縄張り化を目論んだ。南シナ海では次々と人工島を建設し、軍事要塞化を進めている。中ロの無法はテロリストに伝染して、中東では「イスラム国」が暴虐の限りを尽くしている。
米大統領選でトランプ候補が健闘したり、フランス地方選でル・ペン党首率いる右翼の国民戦線が躍進したのは、中ロやテロリストたちの無法が広がっているのと裏腹の関係にあるとみていい。
テロリストが難民に混じって欧州に浸透している。その恐怖が「国境の壁を高くして国を守ろう」という主張に共感しているのだ。
■「ミニ・トランプ」たちの暴走がはじまる
英国で欧州連合(EU)離脱論が勢いを増しているのも、同じ潮流である。ロンドンや隣のパリはテロに見舞われた。人の自由移動がEUの重要な柱になっている。テロへの恐怖が自由移動のEUから脱退して国境を高くしようという議論に勢いを与えている。
もしも英国がEUを脱退すれば、英国は関税同盟(=EU)の下で関税ゼロだったEU諸国とはもちろん、100ヵ国近い国々と関税協定を結び直さざるをえない。相手国の関税引き上げ圧力に加えて自国への投資減退から、目先の景気だけでなく中長期的にも成長力が衰える。
それでも「島国で孤立していた方が安全」と考える人々が増えている。オーストリアでも、結局は敗北したが右翼の大統領候補が大善戦した。トランプはけっしてトランプだけではなく、あちこちに「ミニ・トランプ」が出現している。
先週も触れたが、もしもトランプ候補が11月の大統領選に勝利すれば、来年のサミットは様変わりするだろう。
トランプ氏は環太平洋連携協定(TPP)に反対し、日本や中国に高関税を課すと公言している。それは、いまのG7が掲げる自由貿易主義と相容れない。
外交面でもトランプ氏は「中国をサミットに加えよう」と言い出すかもしれない。トランプ氏は中国とは互いの縄張りを認め合えば、共存共栄できると考えているようだから、サミットを縄張り確認の場にしようと考える可能性がある。もちろん中国は大歓迎するだろう。
英国がEUから離脱すれば、英国だけでなくEUにも打撃になる。自国優先主義がEUの中で勢いを増すきっかけになる。ル・ペン党首が出馬するとみられている来年のフランス大統領選にも影響を与えるのは間違いない。
■日本にも「日本中心主義」勢力がいる
こうした中で、日本はどうふるまうのか。
安倍政権が昨年成立させた一連の安全保障関連法は、米国との同盟関係を強化して、中国や北朝鮮の脅威に対抗しようという狙いだった。オーストラリアやベトナム、フィリピン、インドなどとも安保協力を強化している。
その路線は周辺国との協力関係を強めて共同で脅威に対処しようとする国際協調主義であり、自分の城を固めて閉じこもる「自国優先主義」とは正反対と言っていい。
では、日本で自国優先主義を唱えているのは、どういう勢力か。それは野党勢力である。
彼らは基本的に「日本が攻められた時に日本が守ればいい」という考え方に立っている。言い換えれば「他国が攻められても、それは日本に関係ない」。あくまで日本が優先なのだ。実は、そういう考え方の米国版がトランプ氏の主張である。
野党が言うように「他国は知らない。日本は日本のことだけやる」という考え方を貫くなら、トランプ氏の「米国は米国を守るだけで精一杯だから、日本が米軍駐留費用を全額負担しないなら米国は出ていく」という主張に反対できないだろう。
それはそうだ。日本は日本のことしか考えないというのに、どうして米国が米国のことだけ考えるのに反対できるのか。野党はトランプ氏の主張に反対するのではなく、賛成して「米国は日米安保条約を破棄して日本から出て行ってもらっても結構だ」と言うべきではないか。
日本共産党はそう主張しているが、民進党はどうなのか。民進党は日米安保に賛成している。自分は「他国のことは関係ない」と言いながら「米国が日本から出て行っては困る」というのは、辻褄が合わない。そんな民進党が共産党と一緒に選挙を戦うのも、まったく辻褄が合っていない。
自国優先主義という亡霊が世界を彷徨いだした。国際協調主義に立つG7サミットが今後、どうなるか。いまは分岐点だ。
日本は自国優先主義ではやっていけない。国土が25倍、人口は10倍、国内総生産は2倍、軍事力は4倍の「中国という脅威」を隣に抱えて、自国だけでは対抗できないのだ。
■安倍首相は日本の針路を問うべき
もしも自国だけで対抗しようとすれば、とてつもない軍事国家を目指す話になってしまう。加えてエネルギー資源もない。だから日本は安保防衛はもちろん、経済面でも国境の壁を低くして他国と協調しながら生きていくほかはない。
伊勢志摩サミットは自国優先主義が勢いを増す中、日本が世界でどう生きていくのかを見直す絶好の機会である。サミットが終われば、日本は参院選を控えている。サミットで他国に財政出動を促しながら、当の日本が消費税増税するなどという身勝手は許されない。
増税はもちろん先送りだろう。衆参ダブル選はどうするのか。永田町ではダブル選見送り論が強まっている。だが、大きな時代の潮流を見れば、安倍政権はサミットを終えるいまこそ、野党勢力に「あなたたちは日本をどういう方向に導こうとするのか」戦いを挑む絶好の機会ではないか。
安倍首相は衆参ダブル選で日本の針路を問うべきだ。
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