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上久保誠人立命館大教授(消費税増税派)は、「民進党の「消費増税延期」で 自民党は野党の主張には乗りづらくなった」と書いているが、安倍首相による消費税増税延期は、表明タイミングだけで市場関係者も織り込んでいる“既定路線”であることから、的確な評価とは言えない。
野党第一党民進党の代表が「消費税増税延期」論を公言したことで、安倍首相は、消費税増税延期の判断を表明するにあたり、解散・総選挙を選択することもできるし、“総意”を尊重しての判断と説明することもできるという高い自由度を得たのである。
論考の表題となっている「民進党が共産党と共闘するのはあり得ない選択肢」というのも、上久保教授の論理に従えば「自民党が公明党と連立政権をつくるのはあり得ない選択肢」であるはずのものが現実として否定され18年も経っているのだから、思い込みか空念仏である。
民進党が共産党を選挙協力に誘い込んだ成果として、共産党の政策を“右”にシフトさせたことを上げられるので、自民党を含む支配層も好ましい戦術だと考えているはず。
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民進党が共産党と共闘するのはあり得ない選択肢だ
ダイヤモンド・オンライン 5月24日(火)8時0分配信
安倍晋三首相と岡田克也民進党代表は「党首討論」で、2017年4月の消費税率10%への引き上げの是非について論戦を交わした。岡田代表は「引き上げを先送りせざるを得ない」と主張し、「2019年4月まで消費増税の3年間延期」を首相に迫った。一方、首相は2014年12月に「消費増税を延期する決断を致しました」と言って衆院を解散した前歴がある(第94回)。首相が、再び増税延期を決断するという見方は根強いが、党首討論では「適時適切に判断する」と繰り返すだけで明言を避けた。
● 民進党の「消費増税延期」で 自民党は野党の主張には乗りづらくなった
岡田代表が「消費増税延期」を安倍首相に迫ったことは、来たる参院選のための戦術として合理的ではある。まず、首相より先手を打って「増税延期」を打ち出したことで、参院選前の与野党の駆け引きで主導権を握ろうとした。首相が野党の主張に乗ったというのでは格好がつかない。首相は増税延期を言いにくくなるからだ。首相が増税延期を決断するには、野党を超える「理屈付け」が必要になった。
また、2014年12月に増税先送りを理由に衆院を解散したように、安倍首相が「衆参同日選」に打って出ることを封じる狙いもあるだろう。誰も反対しない増税先送りだが、今度は「野党のが主張」したということになる。2014年12月のように、首相が主導権を取って、一方的に押し切るという選挙はできなくなるからだ。
そして、安倍首相が増税先送りを決めれば、野党は首相を「うそつきだ」と批判することができる。首相は、2014年12月の衆院解散時、「必ず消費税を上げられる状況にする」「再び延期することはないと断言する。確実に引き上げていく」と国民に約束していたからだ。
更に、首相が「消費税を上げられる状況」を作れなかったのだから、野党は「増税延期はアベノミクスの失敗」だと批判することもできる。党首討論では、岡田代表が「消費がこれだけ力強さを欠いているなかで、もう一度消費税の引き上げを先送りせざるを得ない状況だ」と指摘し、アベノミクスの失敗の責任を取り「内閣総辞職すべきだ」と首相に迫った。
一方で、安倍首相が予定通り増税を断行するならば、それはそれで野党に不都合はない。「増税延期」は野党の公約となり、首相は「不人気な増税」を公約に参院選を戦わねばならなくなる。岡田代表は、先手を打って増税延期を主張することで、安倍首相が増税についてどう判断しようと、野党側が主導権を握ることになると考えたのだろう。
安倍首相は年明け以降、世界経済の減速などから、消費増税延期の空気を醸成してきた。ノーベル経済学賞受賞者を呼んで「増税延期」の意見を聴き、伊勢志摩サミットで共同宣言に「政策をバランスよく進める」という、いかようにも解釈できる表現を盛り込ませ、消費増税の延期と、選挙対策としてのバラマキに、「国際的なお墨付き」を得ようとしていたのは明らかだった(第131回・5p)。だが、岡田代表の発言で、首相の目論みは少し狂ってきたといえるかもしれない。
● 財政再建を真剣に考える国民は 参院選での選択肢を失った
岡田代表の「増税延期先出し戦術」が当たるかどうかは別として、1つ指摘しておきたいことがある。それは参院選で「財政再建を真剣に考える国民」にとって、選択肢がなくなったということだ。
アベノミクスに対する高い支持が続いたので忘れられてしまっているが、国民は、第二次安倍政権が発足するまでは、歴代政権が苦心惨憺取り組んできた財政再建や持続可能な経済運営にある程度の理解を示していた。野田佳彦政権時には、国民は消費増税の必要性に一定の支持があったのは間違いない(第40回)。
アベノミクスを一言でいえば、株高・円安に誘導することで、企業が短期的に営業利益を増やして目の前の決算期を乗り切り、一息つけるというものだ。長年のデフレとの戦いに疲弊し切っていた国民は、企業経営者や、部長、課長、その部下の平社員の「とにかく利益が出るならなんでもいい」という気持ちで、アベノミクスを支持した(第75回・1p)。しかし、アベノミクスの化けの皮が剥がれつつある今、真面目に財政再建を考えていたことを思い出す国民が、少なくないはずだ。だが、彼らには参院選で支持すべき政党がないのである。
● 安倍政権は増税実施を決断しても もはや「財政健全化の国際公約」達成は遠い
安倍政権は、増税延期を決断しようがしまいが、財政再建に取り組む政権と見なすことはできない。安倍政権が誕生する前、民主・自民・公明の三党は消費増税の「三党合意」を成立させていた。だが、安倍政権が誕生すると、自民党内で三党合意を進めた政治家は、アベノミクスの意思決定から外された(第51回・2p)。
アベノミクス3本の矢の1本目・金融政策とは、円高・デフレ脱却に向けて2%の物価上昇率を目標として資金の供給量を劇的に拡大する「異次元の金融政策」を断行し、為替を円安に誘導し、輸出企業の業績改善を狙うものだった(第58回)。
第二の矢・公共事業は、公共事業の大幅な増額による巨額な財政出動であった(第51回)。2013年度には、予算規模は過去最大規模の100兆円を超え、国債発行額は、民主党政権時に財政ルールとして定められていた44兆円を大きく上回る49.5兆円に達した。
2014年度予算編成では、各省庁が概算要求で軒並み前年度より大幅増の要求を行った。一般会計の総額は、過去最大の95兆8823億円に達した。歳出で最も大きい社会保障費は4.8%増の30.5兆円と、初めて30兆円を突破した(第73回)。2016年7月の参院選に向けては「一億総活躍社会」を打ち出したが、「一億総活躍」の予算を狙った族議員やさまざまな業界が予算獲得を目指して跋扈する状況となった(第117回)。
安倍首相は消費増税に関しては、2013年10月に、当初の予定通り消費税率を現行5%から、2014年4月に8%に引き上げると決断したが、前述の通り10%への増税は延期した。また、「法人税の実効税率引き下げ」も決定した(第68回・3p)。公明党の意向も受けて、社会保障のための税収増を事実上先送りすることになる「軽減税率」も決定した(第121回)。
要するに、安倍首相は「財政健全化の国際公約」(第68回)よりも、景気腰折れを防ぐための対策と選挙対策としての財政出動・金融緩和を優先させてきたといえる。結果として、財政健全化の達成は遠のいてしまっているのが現実だ。安倍政権は参院選で、財政再建を真剣に考える国民の選択肢にはなり得ない。
● 「増税延期」で共産党と共闘すれば、 民進党はサイレントマジョリティの支持を失う
一方、岡田代表が「増税延期」を表明したことで、野党側も財政再建を真剣に考える国民の選択肢ではなくなった。もちろん、野党側にも「三党合意」に関わった政治家は多数いる。だが、野田前首相などは政権から転落した「戦犯扱い」されて、野党側の意思決定の中枢から外されている。
民進党内部で「リベラル系」の影響力が強くなっている。安保法制を巡る攻防で、野党側の保守系議員が安倍首相に対する態度を硬化させてしまった(第111回)。それ以来、野党側は安倍政権との対立軸の明確化を図るようになり、リベラル派が主導権を握る流れとなった。その流れに乗って近づいてきたのが、「国民連合政権構想」を提唱する共産党だ。
筆者は、民進党が共産党と共闘するのはあり得ない選択肢だと考える。安倍政権憎しで安保法制反対で一致したが、本来、安全保障政策は野党間で最も違いが大きい政策課題であり、民主党政権の混乱の一因も安全保障政策の不一致だった。民進党と共産党が共闘しても、必ずそのうち問題が起きてしまうからだ(第122回・3p)。
また、「消費増税延期」で民進党が共産党と組むのは、安全保障政策以上に問題だ。繰り返すが、民進党内には、社会保障充実や財政再建のために予定通りの増税を求める声が少なくない。岡田代表は、参院選を控えて共産党との共闘を重視したが、この判断は将来大きな禍根を残すことになり、いずれ後悔することになるだろう。
なぜなら、共産党との共闘は、日本のサイレントマジョリティである「中流」の支持を失うことになるからだ。「中流」というのはアバウトな概念だが、サラリーマンを引退した高齢者、現役世代のサラリーマン家庭、その予備軍である思想的な偏りのない若者などである。この「中流」の人たちは、食べていくため、家族を養うため、非常に現実的に社会を見ている(第115回・下)。
「中流」の人たちは、民進党・共産党が共闘しようとしている「安保法制廃止」の非現実性に、半ばあきれ果てている。また、元々「消費税廃止」を訴えていた共産党の非現実性に引きずられる民進党に対して、白け始めている。
なによりも問題なのは、「中流」の人たちが、実は民進党・共産党が熱心に訴える「弱者救済」に微妙な嫌悪感を持っていることだ。なぜなら、彼らは税金を多く取られているという痛税感が強く、その割に行政サービスを十分に受けられていないという不満を持っている。それなのに、「弱者救済」ということで彼らが払った税金が他人に使われることには、納得できない感情があるのだ(井手・古市・宮崎『分断社会を終わらせる』2016)。
一見、「弱者救済」は疑いようのない正義のように思われる。だが「弱者救済」を、度を越して訴えすぎると、日本のサイレントマジョリティである「中流」が不公平感を持ち、不満を募らせることになる。「中流」を取り込めなければ選挙には負けてしまう。「増税延期」を野党共闘の象徴的な政策として掲げるのは、間違いである。
● 民進党は1回の選挙の勝ち負けに右往左往せず 「政権担当能力」を持つ大政党を目指すべきだ
筆者は、共産党の野党共闘の戦略は、政党のあり方として間違いであると強く批判したい。共産党の政策を支持すれば、小選挙区での立候補を取り下げて、他の野党の候補者に共産党の支持票を提供するという戦略が合理的であることは認める。しかし、議会制民主主義下の政党としては問題があるのではないだろうか。
政党とは、「選挙で議席を増やして政権を目指すのが使命」だからだ。立候補を取り下げて、議席を減らすことになるのに、政党としての影響力が高まるというのは違和感がある。主権者である国民に対して失礼な話である。候補者を出さないのならば、政党としての存在意義はない。共産党がこの戦略を取り続けるならば、一旦解党するのが筋なのではないだろうか。
この連載では、「小政党の横暴」を防ぐために、二大政党制の優位性を再評価すべきと主張してきた(第106回)。二大政党制に対する代表的な批判は「少数意見を切り捨てている」というものだ。だが、それは事実ではなく、二大政党が少数意見を切り捨てているわけはないことは、歴史が証明している。
英国の保守党・労働党は、1960-70年代の高度成長期に、ともに福祉政策の拡大を競った「福祉国家」の時代があった。現在でも保守党・労働党のマニフェストには、「経済」「外交」「雇用」「医療」「福祉」「教育」「移民」「女性」「環境」「エネルギー」など、あらゆる分野の政策が並び、民族、宗教など少数意見に配慮した政策も含まれている。そして、財源を考慮しながら、政策の間に優先順位を付けた包括的なパッケージとなっている。
確かに、二大政党は「単一争点の中小政党」のように支持者の利益を一方的に実現しようはしない。だが、国民全体の世論の動向や、経済・財政の状況のバランスを考慮する中で、少数意見を政策の中に取り入れてきたのである。
日本政治の問題は、中小政党が、少数者の利益を強引に実現しようとすることで、歴代政権の意思決定が混乱し、財政赤字拡大を招いてきたことだと考える。今の日本政治に必要なのは、英国の二大政党のような、財源を考慮してさまざまな政策の優先順位を付けた包括的な政策パッケージを作る「政権担当能力」を持つ大政党ではないだろうか(第50回)。
民進党は、共産党に決して引きずられてはならない。1回の選挙の勝ち負けに右往左往するのではなく、堂々と自民党のオルタナティブとなる「政権担当政党」を目指すべきなのである。
<参考文献>
井手英策・古市将人・宮崎雅人(2016)『分断社会を終わらせる:「だれもが受益者」という財政戦略』筑摩選書
上久保誠人
最終更新:5月24日(火)8時0分
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160524-00091758-diamond-soci&pos=1
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