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3年半でここまで劣化 日本を腐らせた反知性政権の罪
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/181507
2016年5月17日 日刊ゲンダイ 文字お越し
名門企業の不正が続く(三菱自動車の会見)/(C)日刊ゲンダイ
不正と嘘とゴマカシが蔓延――。最近のニュースを見ていると、この国は一体、どうなってしまったのかと愕然とする。
筆頭は東京都の舛添要一知事だ。ファーストクラスの海外豪遊出張や公用車で週末別荘通いをしながら、プライベートな支出を政治資金で処理するセコさ。家族旅行中の宿泊でも、そこで“会議”をすれば全て政治活動という感覚にもア然で、公金タカリの卑しさ全開。たとえ「返金する」としても都民の9割が「釈明に納得できない」というのは当然である。
東京五輪招致をめぐるウラ金疑惑も、発展途上国並みの贈賄まがいの手法による五輪買収が濃厚だ。驚くようなデタラメが次々発覚し、政府は右往左往している。招致決定前後、2億円もの大金がIOC委員の息子が関係する口座に振り込まれたというものだが、当初、政府とJOCは「問題ない」としていたのに、仏当局が本格的に捜査に入ることが報じられると、一転、「コンサル料だった」と支払いを認めた。さらにその弁解も、「コンサルタント会社に実体がない」という疑いまで浮上し、墓穴を掘る事態に陥っている。
モラルダウンの不正は民間でも横行している。三菱自動車の燃費データ偽装では、本社が子会社に改ざんを指示するという悪質さだった。データ偽装といえば、羽田空港の滑走路工事でも東亜建設工業の虚偽報告が明らかになり、社長が辞任に追い込まれた。東芝の粉飾決算や旭化成子会社の杭打ち偽装もそうだが、日本を代表する企業で、どうしてこうしたインチキが何度も繰り返されるのか。目を覆いたくなるような劣化である。
■羞恥心が欠落、「バレなきゃ大丈夫」
「『恥ずかしいことはできない』と思うような緊張感が現場になくなってきているのではないか」と言うのは、経済評論家の山崎元氏だ。
「かつて日本人は社会と企業に対する帰属意識やプライドを持っていて、それが『恥ずかしいことはできない』というモラルにつながっていた。しかし、いまや会社は単なる給料をくれる場所になり、利害関係や金銭が優先されるようになった。『恥ずかしい』という意識が薄れてきているような気がします」
羞恥心が欠落し、「儲けが全て」「カネが全て」の拝金主義が日本中を覆っている。パナマ文書が明らかにしたように、金持ちは蓄財でさらに金持ちになるため、“節税”という名の租税回避にいそしむ。「稼ぐが勝ち」の方程式はサラリーマンや庶民にも浸透しつつある。
そんな中で、国や自治体トップは血税を納税者のためではなく、独善で勝手放題に散財しているのがこの国の現状である。
「超・反知性主義入門」の著者でコラムニストの小田嶋隆氏にも聞いてみた。
「ここ数年、日本中に『バレなきゃ大丈夫』という空気が蔓延しているように感じます。表沙汰になった不祥事はたまたまバレた案件で、もっといろんなごまかしが横行しているのではないか。短期的な目先の利益を重視し、中長期的なビジョンは後回し。単年度で帳尻合わせをする。三菱自動車の不正はその最たるものですが、この問題を三菱の企業体質に矮小化してはいけない。目先の利益だけで動くのは、企業だけでなく、役人にも、政治家にも当てはまります」
上から下まで腐敗と退廃が染み渡るおぞましさ。どうしてそんな酷い国になってしまったのか。
「宿命の子」気取り(C)日刊ゲンダイ
安倍首相の「反知性主義」が国民にも伝播
モラルのかけらもなくなった日本社会。その責任が誰にあるのかといえば、舌先三寸で悪政を続けているペテン首相なのは言うまでもない。
安倍首相の恩師である成蹊大名誉教授の加藤節氏が、先週号の「フライデー」で〈安倍晋三くんは無知で無恥なずるい政治家です〉と喝破していたが、そんなトップが3年半も最高権力を握っているのだ。国全体が劣化するのは当然だ。
いまやその壮大なウソは国民の知るところとなったが、アベノミクスは大企業・富裕層の優遇策であり、トリクルダウンなど起きず、むしろ格差が広がって庶民生活は苦しくなった。「賃金が上がる」「景気はよくなる」というのもムードだけの詐欺師の手法で、国民はすっかり騙された。
「『都合の悪いことは国民に伝えなければいい』という考え方は過去の政権にもありましたが、安倍政権で強化されている感じがします。そこにまるでロシアや中国のような“報道規制”が重なり、都合の悪い情報は国民に知らされないというのが現状です。そんな中で、『都合の悪いことを自分で言うのはバカ』という感覚は国民にもじわじわ伝播しているのではないか。行動心理学ではそういう側面もあるといいます」(山崎元氏=前出)
安倍が「まずは経済」で国民を騙したのは、その先に集団的自衛権の行使容認、そして憲法改正という悲願があるからなのは、もはや明白だ。発売中の「文芸春秋」(6月号)で、母・洋子氏は安倍が〈国家のために命を懸けようとしている〉と評価していた。そして、同様に国家のために命を懸けた祖父・岸信介の思いを受け継ぐ“宿命の子”だというのだから驚くしかない。安倍本人も「敬愛するおじいちゃんのため」が政治の原動力なのだろうが、この国を岸家と安倍家で私物化されてはたまらないのである。
■憲法改正でもご都合主義の主張
そういえば安倍は、今年の憲法記念日の改憲派集会に「今の憲法に自衛隊という言葉はない。『自衛隊は違憲かもしれない』と思われているままでいいのか」というビデオメッセージを寄せていた。憲法学者のほとんどが「違憲」だとした安保法を解釈改憲で平然と成立させておきながら、「違憲であること」を憲法改正の理由に使うご都合主義。これもこの男の欺瞞をよく表している。
ただ、安倍政権によって嘘とゴマカシがあまりに日常化したため、国民も感覚が麻痺してきたのか、いまや怒りを忘れ、慣れきってしまった感もある。そうでなければ、憲法改悪で国家破壊をもくろむ独裁首相が、5割近い支持率を維持し続けている不可思議に説明がつかない。前出の小田嶋隆氏はこう言った。
「個人より国家を大切にする安倍政権がなぜ依然、高い支持率を維持できるのか。裏を返せば、安倍首相と同様の考えの国民がそこそこ存在するということです。『憲法を守る』というのは、先の大戦で敗戦し、多くの犠牲を負った日本にとって当たり前のことでしたが、最近は『なぜ、憲法を守らなきゃいけないのか』と平然と疑問を投げかける人たちが出てきている。驚くべきことです。『反知性』という意味では、安倍首相だけが突出しているのではなく、それに呼応する国民が増えているという現状もあると思います」
だとすると、この国の劣化は止まらない。どこまでも転落を続けるだろう。安倍政権で日本はメチャクチャになってしまった。
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