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次から次へと金銭スキャンダルが出てきて、もはや収拾がつかない状態の舛添要一・東京都知事。本人の金銭感覚に問題があるのはもちろんだが、自民党や都庁職員との関係の悪さも、騒動に拍車をかけている
Photo:日刊スポーツ/アフロ
舛添バッシングの裏に自民党・都庁職員との“政争”
http://diamond.jp/articles/-/91159
2016年5月17日 鉾木雄哉[清談社] ダイヤモンド・オンライン
4月27日に発売された『週刊文春』の記事で毎週末、公用車での神奈川県湯河原町にある別荘通いを暴露され、大騒動になった舛添要一・東京都知事。その他にも高額の海外出張や政治資金による家族旅行などが次々に発覚し、批判は収まる気配すらない。そんな舛添バッシングの舞台裏を関係者が明かす。(取材・文/鉾木雄哉[清談社])
■バッシングが高まる背景には
都議会自民党との「最悪の関係」がある
「今回『文春』が書いた後にここまで話がこじれ、一向に収束しないのは、スキャンダルの内容もさることながら、本来知事を支えるはずの都議会や都職員などがまったくカバーしない、むしろ舛添さんと自民党の関係がうまくいってないという背景もあるのです」
そう話すのは、舛添氏と関係も深いという公明党幹部。ではなぜ、舛添氏と都議会自民党の間はそこまで悪くなってしまったのだろうか?
「舛添さんと都議会自民党の関係が悪化の一途をたどったのは、まずは東京オリンピック会場計画を都知事主導で見直したことからです。特に新設予定だった都内3会場の建設を中止したのは決定的でした。新設予定の会場には、それぞれ自民党都議の利権が紐付いていたので、それを白紙にするということは、つまり自民党の利権を奪いとることに他なりません。このほかにも、知事就任以来どんどん勝手に改革と称していろんな政策を進めることで、当然、都議会自民党とは最悪の関係になっていました」(前出の公明党幹部)
しかし、そもそも舛添氏は2014年の都知事選挙で自民党東京都連の支援を受けて戦い、当選したはず。普通に考えれば、都議会自民党とは協調路線を取るのが自然だが、実は舛添氏と自民党には大きな遺恨があったのだ。
「話は、石原慎太郎さんが勝利した1999年の都知事選挙まで遡ります。このときに国際政治学者でタレントだった舛添さんも立候補し、3位で敗れたものの80万票以上を獲得して注目を集めました。そんな舛添さんの人気に目をつけたのが、ときの自民党、中でも価値が高いと評価していたのが森喜朗元首相と言われています」(自民党都議団幹部)
自民党は、舛添氏を2001年の参院選に引っ張り出し、比例全国区から出馬させた。結果は160万票近くを獲得しトップ当選。自民党に大きく貢献した。
「森さんはことあるごとに舛添さんに、『あんたは将来の総理候補。自民党の宝だ』と最大限の待遇を約束したと言います。しかし自民党は、選挙で舛添人気を利用しただけで、その後は舛添さんを冷遇します。第一次安倍内閣で入閣こそさせましたが、総裁候補にしようとか、派閥の後継者にしようという声は一切出ず、党内の主流派からは外したままでした。また独断専行が目立ち、執行部に批判的な言動を繰り返す舛添さんに対して、党内では『舛添不要論』さえ囁かれるありさまでした」(前出の自民党都議団幹部)
■森喜朗氏への恨みを持つ舛添氏
オリンピック運営でことごとく対立
09年の総選挙で自民党は歴史的な大敗を喫して下野。政権担当与党でなくなった自民党に用はないとばかりに、舛添氏は自民党を飛び出し、新党改革の代表となった。
「舛添さんからすると『俺を総理にしてくれるって言っていたのに約束が違う』という思いがありますし、自民党にすれば『自民党が野党の苦しいときに飛び出しやがってふざけるな』という話で、これが両者が対立する根本的な原因です」(前出の公明党幹部)
ただし14年の都知事選では、自民党は脱原発の細川護熙氏を絶対に勝たせたくなかったことや、候補を擁立する時間がなかったこともあり、舛添氏を支援。舛添氏サイドも自民党の応援が欲しかったため、表面上は一時的に和解した結果、舛添都知事が誕生した。
「自民党にすれば、選挙で支援したんだから、都議会運営には当然協力してくれるものと考えていたようですが、舛添さんの自民党に対する恨みは凄まじく、オリンピック会場の建設計画を中止は、大会組織委員会会長を務める森さんへの復讐とも取れます。オリンピック運営費の無駄を省くなどの政策は、一見合理的に見えますが、その実は森さんが仕切っているオリンピックに水を差すことで、森さんの顔を潰す結果にもなります。要するに国会議員のときはさんざん利用されたけど、都知事になったことで自民党や永田町へのリベンジを果たしているのでしょう」(前出の公明党幹部)
そしてオリンピック関係以外でも、韓国人学校を増設するため都有地の韓国政府への貸出を決めるなど、舛添氏はことごとく都議会自民党に反する政策を進めていった。
「自民党東京都連や都議会は、もう舛添さんを切る方向で動いています。それで今回の『週刊文春』以降、この問題を放置し、むしろ陰では『いつまで持つか。俺たちは模様眺めだ』などと言っているのです。また不倫スキャンダルで潰れましたが、乙武洋匡氏を参院選に出馬させて、ゆくゆくは自民党から知事候補として公認し、舛添さんの後釜に据えるというシナリオもあったんです」(前出の自民党都議団幹部)
■別荘通いは都庁職員からのリーク!
なぜ彼らは舛添氏を守らないのか
舛添氏へのバッシングが止まらない大きな原因は、確かに自民党との確執だが、実はそれだけでもないのだと都庁OBはいう。
「毎週、公用車での湯河原別荘通いは都庁関係者から情報提供されたものです。舛添都知事は、都庁内部にも敵が少なくありません。これは東京都庁の独特の仕組みゆえのものです」
アジア諸国の国家予算並みの予算を持ち、全国の都道府県で唯一、国からの地方交付税交付金や補助金を必要としない東京都は、1つの独立した国といっても過言ではない規模だ。
「お金もあり、学歴もあり、優秀な都庁の職員たちは、『俺たちが都政を動かしているんだ』と思っています。つまり霞が関の官僚と同じメンタリティなんですよ。たとえば中央官僚は、大臣になった国会議員が上司としてやってきても、基本的に自分たちより下に見ています。そのままの図式が都庁職員と都知事にも当てはまるのです。つまり都知事は、自分たちの手のひらの上で踊っているだけだと都庁職員は認識しています。都庁職員にとっては、都政を動かしているのは自分たちなので、誰が都知事になっても関係ありません。だから誠心誠意仕え、身を捧げて知事を守ろうという考えは、都庁の職員にはないのです」(前出の都庁OB)
そして長年にわたり都議会を牛耳ってきた自民党東京都連と都庁職員は関係が深い。当然、建前では仮に自分たちのトップだとしても、職員が舛添氏の言うことを聞くはずもなければ、ましてや守ろうとするはずがないのだ。
また自民党や都庁職員との関係だけではなく、危機管理における舛添氏個人の資質にも問題があるという。
「舛添さんは、自分で危機管理をやってきた人だから、人に相談するとか助けてもらうタイプじゃありません。今回も『こういう風に言う』『こういう風に言わない』『このタイミングではまだ言わないけど、次回に言う』と、すべて自分でシナリオを書いています。それが上手くいっていないのが致命的でしょう。そこに彼が1人でやることの限界があるんじゃないかと思います」(前出の公明党幹部)
5月12日発売の『週刊文春』では、新たに舛添氏の政治資金の流用問題が取り沙汰され、もはや辞任問題にまで発展しそうな勢いだ。自民党、都庁職員との権力闘争に勝利し、舛添都知事が再び自在に権力を振るうことができる日がくるのだろうか? それとも政争に敗北し、このまま表舞台から消え去ってしまうのだろうか?
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