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「日露接近」がサミット真の懸案、首相は欧米を説得できるか
http://diamond.jp/articles/-/90978
2016年5月12日 山田厚史の「世界かわら版」 ダイヤモンド・オンライン
安倍首相はロシア南部のソチに赴き、プーチン大統領と会談、「新たな発想に基づくアプローチ」で両国の関係改善を促した。焦点は北方領土。さらに日ソ平和条約、シベリア共同開発へと広がる。歓迎できる方向だが気になることある。安倍首相はどこまで本気なのか?
日本政府が「国際社会」と呼ぶアメリカやEU諸国がこの動きを歓迎するはずはない。抵抗を突破する気概が首相にあるか。クリミア半島の併合やウクライナ紛争でロシアと「国際社会」は険悪な関係だ。プーチンが安倍を誘い込むのを欧米諸国は黙って見ていないだろう。
伊勢志摩で行われるG7サミットで「日露接近」は隠れたテーマに浮上した。「日本は何を考えているのか」という疑念を安倍首相は払拭できるだろうか。
■経済政策は出来レース
サミット真のテーマは日露接近
G7サミットは主要先進国が結束をアピールする政治ショーとなった。ホスト国の首相の顔を立てるのがサミットのならわしだ。日本が取り組む近隣外交を他国が表だってなじることは、まずないだろう。
日本の役目は各国が合意できるG7声明をまとめること。成長に陰りが出た世界経済に「金融緩和、財政出動、構造改革」の三本に矢をぶち上げる手はずになっている。
堅実財政にこだわるドイツは財政出動に懐疑的だが、各国が足並みそろえて景気対策を表明することに反対はしない。財政出動で声を合わせても、どこまで踏み込むかは、それぞれの政府が決めることだ。
表舞台の政策は官僚がお膳立てする。ホスト国の首相は、事前に各国を回り「よろしく」と挨拶するのが仕事だ。首脳を集めることに意味がある。勢ぞろいし、にこやかに結束する映像がメディアに流れれば「成功」なのだ。テロでも起きなければ、サミットの表舞台はシャンシャンで終わるだろう。
問題は舞台の裏だ。日本はロシアとの関係を説明しなければならない。
外交の場でしばしば語られる「力による現状変更」。日本では尖閣諸島や南シナ海での中国の動きを指すが、欧米ではプーチンの振る舞いにこの言葉が使われる。クリミア、ウクライナだけでない。シリア内戦でもロシア軍の空爆は容赦なく地上の命を奪い、アサド政権の支配地を拡大している。プーチンは嫌われ、危険視されている。
日露接近は、孤立するプーチンが日本を抱き込む外交戦略でもある。北方領土という餌で誘き寄せ、窮地に立ったロシア経済をジャパンマネーで潤そうという筋書き。EUやアメリカはそう見るだろう。
プーチン会談へと動いた外務省ロシア人脈も似たような見方をしている。西で欧米と対峙するロシアは東の日本に寄って来る。国内経済は悪化し、シベリア開発のカネもない。恩を売って領土交渉を有利に進めたい――。
安倍に持たせた8項目の手土産は日本得意の経済協力だ。石油・ガスなどエネルギーの開発や病院、上下水道、交通網の整備など盛りだくさん。シベリアに手が回らないプーチンは大歓迎だ。
今後の交渉手順も決まった。6月に平和条約締結に向け次官級会合が、9月には安倍がウラジオストックを訪問し首脳会談を行う。ウクライナ紛争の勃発で凍結されていた「日露歩み寄り」が再稼働したかに見える。
関係修復は日露新時代を思わせるものだが、大きな壁が立ちはだかっている。一つは国際社会の壁。もう一つは国内世論の壁だ。
■「4島一括返還」を主張する
強硬派を安倍首相は説得できるか
「日本は『4島一括返還』を主張してきた。それが現実的にあり得ないことは交渉に関係した者なら分かっている」
外務省OBは言う。領土問題は、歯舞・色丹の2島を返還させ国後・択捉は事実上諦める、というのが現実的選択になっている、というのだ。
戦後70年、ソ連時代を含めロシアの実効支配が続き、北方4島、特に国後・択捉島には都市機能や軍事施設が整備された。
政府は「ビザを取得して訪問することはロシア領であることを認めることになる」と邦人の渡航を禁止している。訪れる人は少なく北方領土はロシア人の島になっていった。
安倍・プーチンで合意した「新たな発想に基づくアプローチ」は何を意味するのか。双方とも語らないが、こう着状態にある北方領土の打開策だろう。領土問題が動かなければシベリア開発も日露平和条約もありえない。
これまでの交渉は、日本が4島返還を主張してまとまらず、時の経過の中でロシアの実効支配がますます進む、という悪循環だった。「この機会を逃せば北方領土は返ってこない」という思いが外務省にはある。
2島だけでも返って来れば日露関係は回りだし、シベリア開発など日本の経済圏が広がる、と期待する。
日本の世論はどうだろう。安倍首相に期待を寄せる右派に「2島返還はあり得ない」と主張する強硬派が多い。
「4島一括返還」にこだわってきたのは歴代の自民党政権だった。政府部内では「2島返還先行」が現実案として検討されてきたが「敗北主義」として封印された。
「新たな発想に基づくアプローチ」とは「2島返還」が軸となると見られるが、安倍首相は返り血を浴びる覚悟で現実路線を訴えることができるだろうか。
■欧米は対露接近を許さない
首相に「独自外交」を貫く覚悟はあるか
サミットで首相は「日露接近」を各国にどう説明するのだろうか。
日露会談がサミット直前にセットされたのは最悪である。日本は何を考えているのか、と首脳たちは当惑しているだろう。
日本がロシアと領土問題を抱えていることは知られている。参議院選挙が間近に迫っていることも分かっている。だが、ロシアに接近することはG7の結束にヒビを入れる。アメリカも「晋三は本気でプーチンに近づこうとしているのか」といぶかしく思っているだろう。
残念ながら、日本にはG7諸国を黙らせる政治力はない。説明して納得してもらうしかないだろう。ロシアと友好関係を結ぶことが国際社会の秩序と世界平和にどう貢献するのか。首脳たちが聞く耳を持つほどに安倍首相は敬意を得ているだろうか。
「本気でプーチンと手を組むことはアメリカが許さない」との見方は外交関係者に少なくない。シリアやウクライナの情勢を脇に置いて日露が接近することはEU諸国も認めないだろう。日本の勝手な振る舞いは許されない。それが今の「国際社会」である。
このような論理はアメリカやEUの都合でしかない。日本には日本の事情があり、国益を貫くのが自立した外交ではないのか。信念があれば、自らの道を進めばいい。政治家安倍晋三の真価が問われる局面である。
賢明な読者はお分かりだろう。安倍晋三にその器量があるだろうか。
慰安婦問題で昨年12月、韓国と合意し「日本政府は責任を痛感し、元慰安婦の方々に心からおわびと反省の気持ちを表明する」という談話を発表した。
首相になる前、さんざん批判していた河野談話に沿った決着だった。持論を引っ込めた裏には「日韓関係を正常化しろ」という米国の意向があった。
「戦後レジームからの脱却」と言いながらアメリカへの自発的従属が続いている。日米ガイドラインの変更やTPP交渉によく表れている。
心情的には「右翼」だが、バックボーンとなる思想があるようには思えない。受け売りのような軽い言葉。自分の発言を簡単に忘れ、都合のいい理屈を並べ立てる。過去や未来への責任が希薄。そんな傾向が目立つ首相が、壁が立ちはだかる日露関係を打開できるだろうか。そもそも「日露」へ深い思いを持つ政治家ではなかった。
■日露接近は選挙向けの
パフォーマンスに終わるか
ここまでは官僚が用意した神輿に乗ってきた。同行記者を引き連れてソチでプーチンとの2ショットに納まった。次はオバマ大統領を広島に案内する。イベントとしての政務には熱心で、本人もご満悦の様子だが、これが政治では困る。
対ロ接近に現実味が出てくればアメリカが動き、外務省中枢も黙ってはいないだろう。首相はどう裁断するだろうか。
「アベノミクスのメッキが剥がれ、上手くいっていたはずの経済が失速している。成果とするはずのTPPも歯車が狂った。八方ふさがりの中でプーチンの誘いに飛び乗ったが、この先は簡単ではない」
20年来の友人という閣僚経験者はそう指摘する。首脳会談や共同記者会見など脚光を浴びるのは好きだが、状況を自ら突破しようという意欲に欠けるのが安倍晋三だという。
G7諸国に抵抗されれば、日露接近にブレーキが掛るのではないか。
小泉政権の北朝鮮外交がそうだった。外務省のアジア人脈が独自の外交ルートをたどり日朝平壌宣言にこぎ着けた。日本が北朝鮮を国際舞台に引き出すか、と期待されたが、アメリカから横やりが入った。孤立化を深めた北朝鮮は核開発に一段と力を入れるようになった。
プーチンのロシアも似た状況にある。国際的孤立、国内経済の混乱、開発資金の欠乏。経済協力しかカードのない日本が自らの外交力を活かせる貴重な機会である。その日本に対ロ外交の自由はあるのだろうか。
「対ロ接近はG7の枠組みの中で」という制約がサミットの裏で課せられるのではないか。ロシア経済を温める経済協力にも注文が付きそうだ。「国際協調」という美しい言葉で頭を押さえられる。日本は、アメリカの意向なら仕方ないという、もの分かりのいい国である。
G7の干渉を振り切る覚悟が首相にない限り、日露接近は選挙向けのパフォーマンスに終わるだろう。
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