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米大統領選 駐留米軍の費用負担すべきか?(大前研一)
【米国】共和党トランプ氏 駐留米軍の費用負担「全額支払うべき」
ドナルド・トランプ氏が、3日に行われたインディアナ州の予備選でも圧勝し、この日の敗退を受けて、2位につけていたテッド・クルーズ上院議員が選挙戦から撤退を表明。トランプ氏の指名獲得が確実となりました。そのトランプ氏は先月27日、外交政策について演説し、日本など同盟国に駐留アメリカ軍の費用負担を求め、支払わなければ撤退するとの考えを改めて表明しました。
全ての人の予想を裏切って、クルーズ氏も撤退となりました。いわゆる共和党のメインと思われていたジェブ・ブッシュ氏なども早々と撤退しました。トランペットを吹いているトランプ氏が、結局残ってしまったのです。ですから今みんなが唖然としていて、この後どうなるのかわからない局面です。
クリントン氏と対決するとなると、どちらも傷を負っていることになります。トランプ氏はこれからクリントン氏と一対一になってきた時に、一つずつ様々な事実が明らかになると、結構ダーティでグレーな仕事をしてきていることがわかってくるでしょう。ポピュリストとしてのトランプ氏とダーティビジネスマンとしてのトランプ氏、アトランティックシティーでカジノ場まで経営していた人なので、もちろん両面があるのです。
トランプ氏は7月の共和党大会以降、本当の大統領選挙をクリントン氏と一対一で丁々発止と戦えるのかどうかというと、そこはかなり疑問です。それと同時にちゃんとしたアドバイザーがつくだろうと思われます。そのアドバイザーは伝統的な人たちだと思うので、それによって少しトーンがマイルドになるだろうと思います。今までのトランペットは言わば序曲で、メインストーリーとは関係がなく、邪魔な対立候補を全て排除するための進軍ラッパであったと言えます。
今後トランプ氏は、共和党のかなり責任のある人たちが織り成す政策というものにすり寄っていくと思います。共和党候補者指名を勝ち取ると、伝統的な共和党の人たちの票も取れるものですが、今のままではそうした人たちは投票しないと言っているので、その票が取れないからです。
また、今は党大会で民主党と共和党としてやっていますが、どちらにも属していない無党派と言われる人が、4割に上っているのです。本当の大統領選挙はこの4割の人たちが出てくるわけで、この人たちは変な野郎のトランプ氏には絶対に投票しません。そうしたことから、トランプ氏はこれからまともな政策を打ち出していかないと、4割もの票田を失うことになるのです。ですから、トランプ氏は今後、クリントン氏に対しては徹底的に攻撃するものの、それ以外のところは鈍ってくると思います。
では、トランプ氏が勝ってしまった場合はどうなるでしょう。何しろトランプ氏はポピュラーで、テレビ番組の人気司会者でもあります。大統領になる前となってからではガラリと変わるというのがアメリカの特徴で、中国嫌いだったニクソンでも、後に国交正常化につながる電撃的な訪中をしています。カーター、ニクソン、レーガン、いずれも大統領選の頃とは様変わりのことをやって、逆に大統領としては成功しています。その意味で、トランプ氏が大変節をする可能性はゼロとは言えません。ただ、その前に不正、スキャンダル、イカサマなどがいっぱい出てくると思うので、それを本当に乗り越えられるのかが問題だと思います。
また最近トランプ氏は駐留軍の費用を払えと発言しています。アメリカ駐留軍の兵士の数を見ると、48,000人以上と日本が一番多くなっていて、中東、ドイツと続きます。ですが、自分の都合で置いている兵士も多くいるのです。また、日本の防衛費を見ると、GDP比1%、5兆円を超えたところです。日米同盟の規定をみると、日米同盟は日本のためではなく両国のためで、極東の安全と平和のためということになっています。トランプ氏の言うように日本を守るためにアメリカが負担しているわけではなく、アメリカを守るために、出先の日本のようなところで展開しないと具合が悪い、本土だけで展開していては非常に不利になるということなのですが、その部分が欠けているのです。
ただし、もしトランプ氏が大統領になり、在日米軍の費用を全て日本で負担するとなった場合の金額は8000億円で、1兆円以下です。日本はその場合、東京上空の横田基地の空域制限や、アメリカにとって一番重要な嘉手納基地の返還など、こちらからも条件を出していくべきです。費用を日本が負担する一方、その展開を肩代わりしていくということになると、安倍政権的には大いに喜ぶことになるでしょう。それによって日本はまた、いつか来た道を行くということになる危険性はあります。アメリカはそのところをよくわかっているでしょうが、日本がまた自由気ままに、中国を仮想敵にして軍備を高め、武器輸出もやっていくこともありえます。経済が苦しくなれば第二次大戦前もそうでしたが、当然そうした方向に向かうわけです。
日本の財界的にはトランプ氏の出現を喜んでいると思います。全部払えというなら払いましょう、全部渡してくださいというわけです。横須賀はそのまま置いておいて、日本が使っても良いですし、横田は住宅街として非常に良いところです。日本にとってもメリットが大きく、そのお金は1兆円以下なので、それほど大騒ぎする額ではありません。ただ、アメリカがいなくなってしまうと、日本はさみしくなるでしょう。いきなり中国、ロシア、北朝鮮と向かい合うわけです。
トランプ氏に対しては費用負担をする代わりにこちらの言い分も聞いてもらい、今まで基地があったために色々と我慢していた部分を全て直してもらうということが非常にプラスになることだと思います。さらに、アメリカの防衛商品を購入することを提案していけば、トランプ氏は商売人なのでうまくいくと思います。今までのようにアメリカが頭から占領直下のままでフリーズしている今の日米安保を一度見直す良い機会にもなり、逆手に取る方法があると思います。
【世界】パナマ文書問題に米国で課税逃れ対策強化の法改正を提案
アメリカのオバマ政権は5日、企業や個人の課税逃れ対策を強化する法改正を米議会に提案しました。匿名性の高いペーパー企業などに実質的な所有者の報告を義務付けるもので、これにより資産隠しやマネーロンダリングを防ぐ考えです。
これは当然の措置です。匿名の企業にしてその何%かを持っている人の名前が出てこないというこのやり方ですが、中国やロシアなどはこの匿名が外れて実際にペーパーカンパニーの所有者が明らかになっているのです。これにより、パナマやバミューダなどは成り立たなくなってくるということにもなります。パナマ文書の中にはアメリカは驚くほど少ないですが、アメリカの議会が所有者の報告義務を要求するのは当たり前のことだと思います。日本も同様に要求するべきだと思います。
【サウジ】国営サウジアラムコ株上場へ 時価総額約220兆円見通し
サウジアラビアのムハンマド副皇太子は先月25日、世界最大の石油会社サウジアラムコの株式を同国内で上場する方針を明らかにしました。
時価総額は220兆円ということで、米アップルどころかとてつもなく大きな規模になります。サウジアラビアではムハンマド副皇太子が非常に力を持ってきていて、原油がなくなっても生き残れるように、サウジアラムコを金に換えて、うまく使っていくという考えです。歴史的にはアメリカがサウジの石油を世界中、主にアメリカに持っていくために作った会社ですが、今では100%サウジの会社になっており、これを上場しようということです。
サウジは原油生産量がアメリカ並みで、埋蔵量は世界2位です。サウジアラムコの時価総額は、エクソンモービルやロイヤルダッチシェルなどが30兆円、20兆円ほどなのに対し、200兆円を超える大きさです。基本的に上場して極一部だけをマーケットに出して、それ以外は必要に応じて徐々に売っていくということです。これにより、石油の価値を使って、石油ではないお金というものを取り、そのお金を使ってサウジを脱石油依存型にしていこうというわけなのです。
講師紹介
ビジネス・ブレークスルー大学
資産形成力養成講座 学長
大前 研一
5月8日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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落ち込む経済指標 短期的か長期的か見極めよう(福永博之)
http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/backnumber/20160511-2/
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