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「首相官邸 HP」より
安倍首相、消費増税見送り決定へ…アベノミクスが失敗、黒田日銀の異次元金融緩和も頓挫
http://biz-journal.jp/2016/05/post_15041.html
2016.05.11 文=鷲尾香一/ジャーナリスト Business Journal
2017年4月からの消費税率10%への引き上げに関する観測が喧しい。
今年7月の参議院選挙や今月26、27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)と絡めた観測が出ているが、過去の安倍晋三首相の政策を振り返れば、消費税率引き上げの再延期は既定路線といえるだろう。
安倍首相はこれまで、経済財政政策を打ち出すことでその人気を回復し、その後に自らの夢である政治課題(安全保障問題・憲法改正)に向かって突き進むという手法を繰り返している。政治課題をクリアすると再び経済財政政策を打ち、再び政治課題に取り組むその戦略は明確だ。
12年12月26日に安倍政権が誕生し、デフレ経済を克服するため「大胆な金融緩和措置」「機動的な財政出動」「民間投資を喚起する成長戦略」の「三本の矢」と称した一連の対策を打ち出す。マスコミはこれを「アベノミクス」と呼んだ。
年が明け13年3月20日、盟友・黒田東彦氏が日本銀行総裁に就任。待ちに待った3本の矢の要となる大胆な金融緩和措置を実行に移せる日銀総裁が誕生した。安倍首相と黒田総裁が描く「デフレを脱却し、経済成長したインフレの世界」というバラ色の夢に人々は大きな期待を抱いた。
同年4月、黒田総裁は大胆な金融緩和措置に打って出る。のちに「黒田バズーカ」と呼ばれる量的・質的金融緩和を決定し、2%の物価目標を2年程度で実現することを宣言する。
この効果は絶大だった。世の中では黒田総裁の狙った「インフレマインドの醸成」が着実に進んだ。ここからしばらくの間、円安・株高の効果から日本はあたかも景気回復が急速に進んでいるかのような錯覚に陥った。
■政治課題から経済政策への舵切り
だが、同年12月6日、安倍首相の政治目標のひとつでもある特定機密保護法が成立すると安倍内閣の人気は急速に低下する。加えて14年4月に消費税率が8%に引き上げられると、その影響は徐々に経済にも表れ始める。さらに7月1日、臨時閣議で憲法9条の解釈を変更し「集団的自衛権の容認」の方針を決定すると、安倍内閣の支持率は急速に低下する。
その上、消費税率8%への引き上げの影響により、黒田総裁の宣言した「2%の物価目標」は実現が困難になった。黒田総裁は巻き返しを狙い10月31日、量的・質的金融緩和の追加緩和、いわゆる黒田バズーカ2を決定する。
これに呼応するように、安倍首相も政治課題から経済政策に舵を切る。安倍首相は11月18日に、15年10月の消費税率10%への引き上げを17年4月に先送りすると表明、国民に信を問うとして衆議院を21日解散すると宣言する。総選挙の結果、圧勝した安倍首相は12月24日、第3次安倍内閣を発足させる。
総選挙を乗り切り国民の支持を得た安倍首相は、再び政治課題へと舵を切りなおした。
戦後70周年となる15年、安倍首相の頭には安全保障問題しかなかった。7月16日、集団的自衛権の限定的行使容認を含む平和安全法制関連法案が衆議院で可決される。9月19日未明、平和安全法制関連法が成立した。
同法成立を勝ち取った安倍首相は、すぐに経済政策へと動く。10月7日、内閣改造を行い新内閣を発足。政権の新たな看板政策「一億総活躍社会」を打ち出した。
しかし、経済は大きな改善を見せず、むしろ原油価格の暴落、中国景気の後退懸念などが足かせとなり、経済は低迷を続ける。特に日銀の金融政策効果が薄れたことも大きなマイナス要因となった。
■金融政策の行き詰まり
そこで日銀は今年1月29日、マイナス金利政策の採用を決定する。だが、金融政策以外のアベノミクスが大きな成果を挙げることはできず、頼みの金融政策もマイナス金利政策に踏み込むほど行き詰まった。
経済政策を“餌”に人気を回復し、自らの信念である憲法改正に向かうという手法を駆使してきた安倍首相としては、ここは経済対策を打ち出し支持率回復に動く局面だ。首相が夢にまで見る憲法改正は、手が届くところまで来ている。
だが頼みの金融政策の効果が薄れている現在、打つ手はひとつ。消費税率引き上げの再延期だろう。すでに下準備は整っている。高名な経済学者を呼び意見を聞く「国際金融経済分析会合」では、その振付どおりに「消費税率の引き上げに反対」する意見を多く得た。さらに自民党内でも議員連盟「アベノミクスを成功させる会」が消費税率引き上げの再延期を求めている。
金融政策に頼ることができない状況のなかで、もっとも効果のある経済対策は消費税率引き上げを再延期すること。4月に発生した熊本地震の影響もあり、消費税率引き上げの再延期と財政政策を抱き合わせで行う可能性が限りなく高まったことは間違いないだろう。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)
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