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米国は日本への原爆2発投下を「目的」に行動したー(植草一秀氏)
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7th May 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks
伊勢志摩サミット参加のために来日するオバマ米大統領による広島訪問についての情報が観察されている。
米国はオバマ大統領の広島訪問を検討していることを明らかにしている。
しかし、謝罪はしないとの方針も明示している。
オバマ大統領が広島を訪問することになるとすれば、
伊勢志摩サミットを散会した直後の5月27日午後、あるいは5月28日朝になるとの情報もある。
ただし、オバマ大統領が広島を訪問することになるとしても、
そのアナウンスは訪問直前になるだろうとの見方も浮上している。
オバマ大統領はワシントンポスト紙への寄稿で
“As the only nation ever to use nuclear weapons, the United States has a moral obligation to continue to lead the way in eliminating them.”
「唯一の核兵器使用国として、アメリカは、核廃絶への道を先導し続ける道徳上の義務を負う」
と述べている。
オバマ大統領は大統領就任直後の2009年4月5日、チェコの首都プラハでの演説において、
「核兵器を使用したことのある唯一の核保有国として、合衆国には行動する道義的責任がある」
と述べた。
そして、
「故に私は本日、信念を持って表明する。米国は、核兵器のない世界の平和と安全を追求するのだと。
私は、甘い考えを持ってはいない。この目標は、直ちに達成される訳ではない――
恐らく、私の生きている間は無理であろう。
この目標を達成するには、根気と忍耐が必要である」
と述べた。
3月のワシントンポストへの寄稿文においてもオバマ大統領は、
「人類は核と共存できない。短期的には核不拡散に注力するしかないが、長期的には核廃絶を目指す」
考えを示した。
オバマ大統領は、この演説でノーベル平和賞を受賞している。
オバマ氏は大統領任期が残り1年を切るなかで、自ら望んで広島を訪問することになるだろう。
こうしたタイミングに、日本への原爆投下を改めて見つめ直すための著書が刊行された。
『核の戦後史』(創元社)
著者の木村朗氏と高橋博子氏は、ともに実証的な視点から平和学に取り組んでいる研究者である。
本書の前編では木村氏が、原爆開発から投下に至るまでの経緯を詳細な史料、
データを基に分かりやすく解説している。
そして、「原爆投下の知られざる真実」を明らかにしている。
後編では高橋氏が、アメリカの機密解除文書の緻密な探索、分析の結果として、
アメリカ政府が当初から「放射能の人体への影響はない」との見解を堅持し、
それに反する幾多の症例を無視してきた事実を明らかにする。
原爆投下には「人体実験」の側面があり、人体被害は詳細に調査しながら一切の治療を行わず、
また原爆による残留放射能を認めなかったことや
内部被ばくの存在を認めなかったことなどの衝撃の事実が明らかにされる。
「100ミリシーベルト以下の被ばくは健康に影響がない」
という御用学者の主張は、残留放射能や内部被ばくを無視した原爆調査に起源があり、
これがICRPの公式見解となり、現在の福島原発事故における健康被害隠蔽につながっている。
これらの事実が浮き彫りになる。
高橋氏は、日本が政府としてアメリカに原爆使用について公式に抗議したのは、
1945年8月10日に、スイス政府を通じてアメリカ政府に伝達した抗議文の1回しか存在しない事実を摘示する。
当時の新聞は
「帝国、米に厳重抗議 原子爆弾は毒ガス以上の残虐」
の見出しで、日本政府のこの抗議を報じた。
しかし、日本政府による原爆投下に対する抗議は、
あとにもさきにも、この1回を除いて存在しないことを高橋氏は明らかにしている。
高橋氏は2年ほどの毎日、1945年8月6日以降の新聞を丹念に読み返してみたが、
原爆関連の記事がまったくと言っていいほど存在しない。
米国政府が原爆に関するすべての情報が流布しないように統制をかけたからである。
終戦期において、日本の降伏は時間の問題であった。
しかし、米国政府は日本を最速で降伏させて戦争を終結させることより、別の目的で行動した。
木村氏の綿密な分析の行間から浮かび上がるのは、この事実である。
ソ連の影響を最小限に抑制する。
しかし、日本が降伏する前に原爆を投下する。
この二つの事項を両立させる方策として、8月6日と8月9日の原爆投下が実行された。
この原爆投下によって無辜の市民が一瞬にして数十万人単位で殺戮され、
その後もおびただしい数の放射能被害者を死や苦しみに追い込んだ。
このことに日本政府は抗議せず、米国は謝罪していない。
この現実に手を付けぬまま、オバマ大統領の広島訪問だけが実行されようとしている。
欺瞞に満ち溢れていると言わざるを得ない。
本書で高橋氏は、2015年8月25日の、参議院安保法制審議特別委員会での
山本太郎参院議員の質問を取り上げた。
山本太郎議員は、
「広島、長崎、それだけじゃない、東京大空襲、そして日本中が空爆、爆撃をされた。
それによって50万人以上の方々が亡くなっていますよ。
この50万人の中に、そのほとんどを占めるのが一般市民じゃないですか。
子供、女性、民間人への無差別攻撃、アメリカによる広島、長崎の原爆投下、
それだけじゃなく、東京大空襲を含む日本全国の空爆、民間人の大虐殺、これは戦争犯罪ですよね、
国際法違反ですよね、いかがですか。」
この質問に対して岸田文雄外務大臣は、戦争犯罪、国際法違反にあたるかどうかには触れず、
アメリカの行為が
「国際法の思想的基盤にあります人道主義の精神に合致しない、このように我が国は理解をしております。
国際司法裁判所等におきましてもそうした議論が行われていると承知をしております」
と答弁し、質問に対して正面から答えなかった。
高橋氏は、1945年8月10日付の日本政府の抗議文を紹介したうえで、
「アメリカが広島の市街地を無差別に攻撃したことを批判したうえで、
当時、日本もアメリカも調印していた、戦時国際法であるハーグ陸戦条約に基づき、
はっきりと原爆を「非人道的兵器」であると指摘しています」
と明記している。
この点について、山田宏衆院議員が2014年に、
日本政府がこの抗議文を継承しているのかどうかを質問主意書で日本政府に質問した。
しかし、日本政府は明確な回答を示さなかった。
1945年3月10日の東京大空襲。
米軍は334機のB−29爆撃機を投入し、約33万発の焼夷弾を投下し、東京の下町一帯を焼き払った。
死者は約10万人、被災者は100万人以上にのぼった。
広島、長崎への原爆投下に投入されたB−29はそれぞれ6機。
投下された爆弾はそれぞれ1発である。
この原子爆弾により、数万、十数万人の死者が生みだされた。
戦後の東京裁判においては、日本軍による中国重慶への年無差別爆撃である重慶爆撃は裁かれなかった。
重慶爆撃が国際法違反であることは明らかだったが、重慶爆撃を裁くことになれば、
東京大空襲も、広島、長崎への原爆投下も戦争犯罪として裁かれる必要が生じるからだった。
原爆投下の候補地として選定されたのは、京都、広島、横浜、小倉、そして長崎だった。
そして、望ましい目標として、
「極めて重要な軍事工場であり、かつ大勢の従業員が働いており、
かつ従業員の住宅に隣接して囲まれているような所」
であった。
何というおぞましい検討がなされていたことか。
つまり、
「世界初の原子爆弾の標的として一般市民」
が意図して選ばれたのである。
第一候補は本来京都であったが、
新婚旅行で京都を訪れた経験を有するスティムソンの強硬な反対に
トルーマン大統領が賛成して京都が外された。
8月9日に投下された2発目の原発の目標値は小倉であったが、視界不良のために長崎に変更された。
広島に投下された原爆はウラン型、長崎に投下された原爆はプルトニウム型であった。
ウラン型は製造が容易だが量産できない。
プルトニウム型は製造が困難だが量産できる。
米国はまず失敗の可能性の小さいウラン型原爆を投下し、
そのうえで、プルトニウム型原爆を投下した。
ソ連に脅威を与えるために、
2発目のプルトニウム型原爆の投下を強く求めた結果であると指摘されている。
当時、日本の降伏は時間の問題であった。
米国が戦争終結を優先するなら、原爆投下前の終戦も可能であったはずである。
しかし、米国は日本の早期降伏を推進するのではなく、
原爆投下まで日本降伏を先送りさせることに腐心したと見られる。
日本側が早期に無条件降伏に応じていれば、広島、長崎の悲劇を回避できたはずだが、
日本側は「国体維持」にこだわり、原爆投下まで降伏を決定しなかった。
他方、米国はソ連の対日戦争参戦後、速やかに戦争を終結させたいと考えた。
事実としては、8月6日広島原爆投下、8月8日ソ連参戦、8月9日長崎原爆投下、
そして8月14日のポツダム宣言受諾決定という時系列の現実を見た。
オバマ大統領が本心で核廃絶を目指すのなら、
広島を訪問して、原爆投下への謝罪を公言するべきである。
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