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甘利問題、今なお消極見解を述べる宗像紀夫弁護士・内閣官房参与
https://nobuogohara.wordpress.com/2016/04/28/%e7%94%98%e5%88%a9%e5%95%8f%e9%a1%8c%e3%80%81%e4%bb%8a%e3%81%aa%e3%81%8a%e6%b6%88%e6%a5%b5%e8%a6%8b%e8%a7%a3%e3%82%92%e8%bf%b0%e3%81%b9%e3%82%8b%e5%ae%97%e5%83%8f%e7%b4%80%e5%a4%ab%e5%bc%81%e8%ad%b7/
2016年4月28日 郷原信郎が斬る
4月8日、甘利問題で、東京地検特捜部が、都市再生機構(UR)の千葉業務部と建設会社に対して、夜を徹して家宅捜索を行ってから、20日が経過した。
検察が、国交省所管の公益法人のURに対して強制捜査を行ったのであるから、相当な嫌疑があり、今後の捜査によって証拠を固めれば犯罪を立証できると判断しているはずだ。
今年8月20日に、告発事実の一部の公訴時効期間満了も迫っており、東京地検特捜部では、初の国会議員又は秘書によるあっせん利得処罰法違反(あっせん利得罪)の立件に向けて鋭意捜査を行っていると思われる。
宗像弁護士の消極見解
それにしても不可解なのは、今回の甘利問題が表面化した時点から、あっせん利得罪の成立に否定的な見方を示していた検察OBの一人、宗像紀夫弁護士が、検察の強制捜査以降においても、あっせん利得罪の要件である「権限に基づく影響力の行使」について、全く的外れな解釈を示し、犯罪が成立する余地が乏しいかのようなコメントを行っていることだ。
検察は、私が、甘利問題が週刊文春で報じられた直後から、ブログ等で述べてきた解釈と同様に、この点についても、今後の捜査によって、要件をクリアできる可能性が十分にあると考えたからこそ、強制捜査に着手したはずだ。法解釈上の問題で立件できる可能性がほとんどないものであれば、検察内部で強制捜査が是認されることはあり得ない。
4月13日付け日経新聞社会面記事の中の宗像氏のコメントに関連する部分を全文引用する。
元東京地検特捜部長の宗像紀夫弁護士によると、同法違反罪の成立には「議員の権限に基づく影響力の行使」が必要という。金銭授受のあった当時、甘利氏は経済財政・再生担当相だった。宗像弁護士は「分かりやすい例は『言うことを聞かないと議会で質問して追及する』といった場合だが、甘利氏は当時閣僚で、議会で質問する立場にはなかった」と指摘。URを所管する国土交通相でもなく、「URとのトラブルに関連して職務上の権限があるとは考えにくい」としている。
当時閣僚で、議会で質問する立場にはなく、URを所管する国土交通相でもなかった甘利氏には、「議員の権限に基づく影響力の行使」が認められる余地がないというのであれば、今回の問題について、あっせん利得罪が成立する余地はないことになる。宗像氏は、検察が、法解釈上犯罪成立の見込みが乏しいのに、無理に強制捜査を行っているとでも言いたいのだろうか。
あっせん利得罪は、刑法のあっせん収賄と同様に、公務員が他の公務員(URのような公益法人の役職員は、法律で「みなし公務員」とされている。)に一定の職務行為を行うこと、或いは行わないことを働きかける「あっせん」を行って対価を受け取る行為を処罰の対象としている。
国会議員のような「政治的公務員」の場合、政策実現のための政治活動として、官僚等の公務員に職務行為に関して働きかけを行うこともあり、その対価を「政治献金」として受領する行為を広く処罰の対象にすると、正当な政治活動の委縮を招きかけないという考え方(この考え方の是非については議論の余地はあるが)から、あっせんの対象とされる公務員の職務行為が、あっせん収賄では「不正行為」に限定され、あっせん利得処罰法では、対象が「契約」や「行政処分」に関するあっせんに限定された上、「権限に基づく影響力を行使して」あっせんを行った場合に限定されている。
そのため、一般的には、国会議員やその秘書に対する適用のハードルはかなり高い。しかし、今回の甘利問題は、そのように狭く設定されたあっせん利得処罰法の処罰対象のストライクゾーンの「ど真ん中」の事案であり、あっせん利得罪で立件・起訴される可能性も十分にある。そのことは、ブログ【甘利大臣、「絵に描いたようなあっせん利得」をどう説明するのかhttp://qq4q.biz/tAbH】などでも繰り返し述べ、今年2月24日の衆議院予算委員会公聴会での公述人意見陳述でも、同様の見解を述べたが(【独法URのコンプライアンスの視点から見た甘利問題】http://qq4q.biz/tAbN)、これまで、反論は全くない。
「権限に基づく影響力の行使」について言えば、国会議員の「権限」とは、議院における議案発議権・評決権・委員会における質疑権等であり、国会議員の「権限に基づく影響力」とは、権限に直接又は間接に由来する影響力、すなわち職務権限から生ずる影響力のみならず、法令に基づく職務権限の遂行に当たって当然に随伴する事実上の職務行為から生ずる影響力をも含む。「他の国会議員への働きかけ」も、国会議員としての職務権限に密接に関連するもので、そのような行為を行い得ることによる影響力も、「権限に基づく影響力」に含まれるとされている。このような解釈は、立法当時の国会答弁や立法者の解説書などでも示されているものであり、否定される余地はないものだ。事件当時、有力閣僚の地位にあった甘利氏の場合、与党内でのURに関する議論にも大きな影響力を及ぼし得る有力議員であり、「権限に基づく影響力」を及ぼし得る立場であったことは明らかだ。
宗像氏の日経新聞記事でのコメントは、全く誤ったものと言わざるを得ない。
同氏は、特捜部長経験者で、元検事長という大物検察OBだが、一方で、現在、安倍内閣の「内閣官房参与」という地位にもある。今回の甘利問題についての発言は、特捜検察OBという立場で言っているのか、それとも、内閣官房参与として、安倍内閣の擁護者の立場で言っているのだろうか。
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