http://www.asyura2.com/16/senkyo204/msg/562.html
Tweet |
[真相深層]ふるさと納税 曲がり角
返礼品競争、総務省が自粛求める 「宴の後」税収展望どう描く
総務省が新年度入り早々、好きな自治体に寄付する「ふるさと納税」の「行き過ぎ自粛」を求める通知を出した。寄付に対するお礼に商品券やパソコンなど特産品とは言いがたい品が目に余るためだ。2008年の制度導入から8年。納税者の支持を受けて順風満帆だった制度はどこで一線を踏み外したのか。
幼児向け教育ソフト・タブレット(多機能携帯端末)「iPadミニ」付き、健康センターの入浴回数券付きデジタルカメラ――。日本有数の漁港を抱える静岡県焼津市。ふるさと納税の寄付者に送る返礼品リストに並ぶ品物は自慢の海産物だけではない。
「隠すような表記だが実質は家電の返礼だ」(東北のある市)との批判もある同市は「市内業者が扱う商品が対象。特産品にはこだわらない」との考えに立つ。現在は市内約100社が返礼品を扱い、15年度の同市への寄付は38億円と全国トップクラスになった。
パソコンが目玉
ふるさと納税による寄付は急増中だ。15年4〜9月は453億円と14年度年間の389億円を半年で超えた。15年度の通年では14年度の約4倍に膨らむと予測される。
返礼品競争も過熱している。「4月8日よりVAIO製ノートパソコン6機種をお礼の品に追加します」。長野県安曇野市は地元メーカーのパソコンを目玉に据える。コメや果物だけでなく消費者の目を引きやすい家電などの返礼品が目立つようになった。
同市担当者は「地元企業の活性化と消費者への製品のPRになる」と話す。自治体は寄付を受ければ収入が増え、返礼品を扱う地元業者にもお金が回り一石二鳥だ。「育児や教育にお金をかけても大人になると上京して税収は入らない。制度をテコに都市から地方へのお金の流れをつくる」(焼津市)。財政難にあえぐ自治体は必死だ。
黙っていられないのは都市部の自治体だ。「単なる自治体運営の通販になっている」(東京都世田谷区)。住民がふるさと納税で寄付すると住民税が減る。寄付をする7割は三大都市圏の住民で、同区の減収額は15年度で2億6千万円に上る。「地方の収入を増やすのにこちらが割を食うのはおかしい」と憤る。
変容し始めた制度の見直しに、所管する総務省も今月、動いた。商品券、電子機器、ゴルフ用品など具体例を示し、これらの返礼の自粛を求めた。「制度はあくまで寄付。対価の提供になるような返礼は控えてほしい」(同省)ためだ。
実は自粛を求める通知は昨年4月に続いて今回で2回目だ。前回の対象は「換金性の高いプリペイドカード等」だった。「通知の意図を理解してくれるはず」と期待し細かく例示しなかった。
しかし、返礼品競争はあまり改善されず、家電などの返礼品が転売されているとの指摘も出て動かざるを得なくなった。「自治体は自分で自分の首を絞めている」。ある総務官僚はつぶやく。
潤っている地方は確かにある。宮崎県綾町、北海道上士幌町など寄付額が年間の税収を超える自治体も現れた。山形県天童市の返礼品、将棋の駒のストラップをつくる中島清吉商店の中島正晴代表は「売り上げは以前の2倍。1月から従業員を1人増やしたよ」とうれしい悲鳴を上げる。
「制度がいつなくなってもおかしくない」(天童市)との危機感も芽生え始めた。長崎県平戸市はいち早く「宴(うたげ)の後」を見据える。
通販の練習台に
「ジェラートのセットは8個と16個を用意して消費者の反応を見てみよう」。3月中旬、市の担当者は市内のジェラート店店長の男性とこんなやりとりをした。同市は返礼品をインターネット通販の練習とみなし、事業者にはニーズを踏まえた商品開発、曜日・時間指定の配送など通販仕様を徹底的に求めている。
中小・零細が多い同市の事業者は通販の経験が乏しい。黒田成彦市長は「事業者が力をつけて制度が終わっても取引を維持・拡大できるようにする」と意気込む。
将来の展望を描いている自治体はまだ少ない。戸崎肇・大妻女子大教授は「返礼品として行政への参加権を与えるなど地元の活性化につなげる工夫が不可欠」と指摘している。
(杉本耕太郎)
[日経新聞4月16日朝刊P.2]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK204掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。