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「増税再延期」論の既視感:消費税税率引き上げ再延期は事実上の再増税封印
http://www.asyura2.com/16/senkyo204/msg/137.html
投稿者 あっしら 日時 2016 年 4 月 06 日 19:12:46: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 

(回答先: 「アベノミクスを成功させる会」の言動は“消費税税率引き上げ凍結”の正当化が目的 投稿者 あっしら 日時 2016 年 4 月 06 日 18:48:49)


[核心]「増税再延期」論の既視感
どう抜ける 停滞の迷路 編集委員 滝田洋一


 扉を押し出口へと進んだはずなのに、ぐるりと回り元の場所に。子供のころ遊びに行った遊園地で、経験があろう。鏡の間である。

 2017年4月の消費再増税を延期ないし凍結するかどうかで、大騒ぎとなっている。政府が開催している国際金融経済分析会合。ノーベル経済学賞受賞者であるジョセフ・スティグリッツ、ポール・クルーグマンの両氏は、そろって再増税の延期を主張した。

 何という既視感。14年11月、安倍晋三首相は15年10月に予定していた再増税の延期を問う衆院総選挙に打って出た。財務省が再増税包囲網を敷くなか、延期を考えていた首相に自信を与えたのは14年11月6日に官邸を訪ねたクルーグマン氏。本田悦朗内閣官房参与が会談をしつらえた。

 それから1年半近くたった。「デフレから脱却しきらないうちに、増税すべきでない」。そう唱える米経済学者を官邸に呼ぶ手法は制度化されたようだ。確かに、消費の各種指標をみると、14年4月の消費増税の前の水準を下回っている。

 増税した14年度。政府は年度当初、実質成長率をプラス1.4%と見込んでいた。ところが年度を終えると、マイナス1.0%に。成長率は2.4%ポイントも下振れし、アベノミクスにはブレーキがかかってしまった。「今もトラウマになっている」と首相周辺はいう。

 とはいえ「日本経済の再生」で胸を張りたい安倍首相にとって、再増税の延期ははたで見る以上に厳しい決断だろう。世論は延期が優勢で野党も延期に傾くが、一度延期した増税を再び先に延ばすと、「事実上の再増税封印となる」と財務省OBはいう。

 「成長による財政再建」ということになり、一段と成長に軸足を置く必要が出てくる。もちろん日本経済が成長軌道に乗り、名目国内総生産(GDP)が20年ごろに目標とする600兆円に達すればよい。経済の足踏みが続くようだと、成長を通じた財政の立て直しの目標は崩れてしまう。

 15年の名目GDPは499兆円。12年に475兆円だったGDPは、安倍政権の3年間で24兆円増えた。民主党政権下の10〜12年の3年間でGDPが4兆円増にとどまったのと比べれば、成果を上げたとはいえる。それでも世界経済が下振れするなかで、この先5年程度で名目GDPを約100兆円増やすのは、容易なことではない。

 こんな現実をみて、アベノミクスは失敗と断じ、成長の限界を強調する向きも増えている。「成長より分配を」というわけだが、高齢化とともに社会保障のコストが膨らむ。そうしたなかで、成長路線の放棄は経済の活力を一層そぎかねない。企業も活動の場を海外に移すばかりだろう。

 今は再増税を延期するかどうかばかりでなく、成長の道筋をどう描き直すのかが問われているのである。3年間に実現した24兆円の名目GDP増を踏まえ、どう上積みを図るか考えるのが現実的である。それとても、世界経済の逆風が吹くなかでは、容易ではない。

 安倍政権は5月26〜27日に開く主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)を、「経済サミット」と位置づける。世界経済のけん引役だった中国など新興国が失速している。そんななか、G7会議が本来の経済サミットに戻るのは、大いに意味があるが、話が「財政の出番」というのにとどまってはなるまい。

 何よりも重要なのは、消費の弱さをどう克服するかだ。雇用市場の逼迫を背景とした賃金上昇を引き続き後押しするとともに、社会保障の持続性への不安の払拭に取り組み、高齢者の安心感を高めることが欠かせない。

 先進国に共通の悩みは、企業が高収益を上げながら、お金を抱え込み投資や賃金に回らないことだ。その先頭を走るのは日本であり、ここ20年ほどは企業が資金余剰を抱え込む「貯蓄主体」となっている。

 黒田東彦日銀総裁が採用したマイナス金利政策は、企業が余剰資金を抱えていては損となる金融環境をつくろうというものだ。それでも企業の動きが鈍いとすれば、投資機会が乏しいとみているからにほかならない。景気がもたつくなかでお金を注ぎ続ければ、不動産など資産市場にばかり資金が流れ込みかねない。

 果たして投資の種が本当にないのだろうか。インターネット・オブ・シングス(IoT)やビッグデータ、人工知能(AI)と総称される「第4次産業革命」はどうなのだろう。

 新しい技術革新の波は、既存の大量消費分野でサービスのコストを下げ、需要を掘り起こすだけでない。これまで手が及ばなかった、各個人・各企業向けのきめ細かなサービスを提供することを通じても、新規の市場を創出することが可能となる。

 石原伸晃経済財政・再生相に具体策を問うと「例えば蓄積された医療情報を適切に活用することを通じて、医療のコストを抑えるとともに、付加価値も高められる」と語る。経済財政諮問会議の常任メンバーに厚生労働相を加えることも考えている様子だった。

 本気になってビジネス志向の姿勢を示し、企業と一緒になって日本経済の課題に取り組もうとしているのか。いま政権に問われているのはこの点だ。メッセージが不明確では、経済は鏡の間からは抜け出せない。

[日経新聞4月4日朝刊P.4]

 

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