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「米軍撤退」「核保有容認」トランプ発言によって、安保反対論者は致命的なまでに追い詰められた
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48341
2016年04月04日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
■「トランプ勝利の可能性5割超」の理由
3月31、4月1日ワシントンで第4回核安全保障サミットが開かれた。安倍首相、習・中国国家主席、朴・韓国大統領、キャメロン・英首相、オランド・仏大統領らも出席した。当然北朝鮮問題も話し合われた。ただ、インパクトはいまいちだった。それは、米大統領選挙の候補者に過ぎないドナルド・トランプ氏の発言が、世界を動揺させていたからだ。
核安全保障サミットの直前の3月29日、トランプ氏は日韓の核を容認する発言を繰り出したことはご承知の通り。実際の発言は、「ある時点で、われわれは『日本は北朝鮮の凶暴な指導者に対して自国で防衛したほうがいいし、韓国も率直に言って自衛し始めたほうがいい』と言わざるを得ない」というもので、将来の「ある時点」を具体的に言わない限り、意味がある発言とはいえない。
まして、トランプ氏は核拡散を否定しているので、直ちに日韓の核保有を容認するという話でもない。ただし、核安全保障サミットの日程に合わせた、絶妙な言い方ではあった。
歴代の米大統領は、同盟国の核開発を容認するより米国の「核の傘」で守るほうが米国の国益になっているという方針を堅持してきた。トランプ氏はその米国安全保障を一変させるかもしれない。それは、「米国が日本を必ず守ってくれる」という、日本の平和ボケ的発想を考え直すいい機会にはなるだろう。
米大統領選の共和党候補者選びで、トランプ氏が大躍進している。筆者は、朝日放送の『正義のミカタ』に出演しているが、この番組は国際情勢の話を扱うことが多い。米大統領に誰がなるか、どのくらいの確率かを各出演者に聞く企画が時々ある(放映されない場合もある)。
その中で、筆者はかなり前にトランプ氏が大統領になる確率を50%超としていた。もちろん、そうあってほしいという願望ではなく、好き嫌い抜きに客観的にみているだけだ。
今の時点ではあくまで共和党の候補になるかもしれないとの段階であるが、トランプ氏の勢いは侮れない。共和党候補になっても、大統領は無理という意見も多い。ただ、トランプ対ヒラリーとなった場合、ヒラリー氏は選挙資金を手広く集めているので、過去にトランプ氏にも選挙資金を無心していた可能性がある。
もしそれが本当で、「メール」のように証拠のある形で暴露されたら、例のメール事件を彷彿させて、ヒラリー氏は負けてしまうだろう。
■「トランプ大統領」の影響を一番受けるのは日韓
トランプ氏の発言は、人を驚かすものが多い。例えば、「メキシコとの国境に壁を作る」というものもそうだ。ただし、その発言をまともに受ける必要もない。というのは、「壁建設のコストはメキシコに持たせる」といっているからだ。
つまり、メキシコが壁建設を無視すれば、壁は実現しない、ということだ。このように、トランプ氏の発言は一見荒唐無稽のようだが、実はきちんと計算されているものも多い。
外交、安全保障について、トランプ氏は米国優先の孤立主義だ。本人は「孤立主義ではない」というが、日韓の核保有を容認するとの示唆、北大西洋条約機構(NATO)や国連などの国際機関への資金分担は不相応に多いという発言、さらには日本や韓国、サウジアラビアといった同盟諸国との関係についても不公平だとしていることは、従来の米大統領と比較して、世界の安全保障に対する米国のプレゼンスを後退させている。
これは、世界の警察官の役割を否定したオバマ大統領にも似ている。実際、オバマ大統領は、2013年9月10日、シリア問題への対処の中で「もはやアメリカは世界の警察官ではない」とテレビで演説している。
オバマ時代の米国の後退に呼応したのが、ロシアと中国の進出だ。ロシアは、2014年3月のクリミア併合、シリアのアサド政権継続で、世界に存在感を示した。中国も南シナ海の軍事拠点化を着々と進めた。
ワシントンでの核安全保障サミットでは、相変わらずプーチン・ロシア大統領は欠席したし、習・中国国家主席も、昨年まで南シナ海は軍事化しないと言っていたが、今では軍事拠点化を指摘されると「国家主権侵害だ」といい、一歩も引かない。こうしたロシアや中国の対外攻勢は、米国が世界の警察官の役割を放棄したからだ。
ヒラリー氏は、オバマのナイーブさに批判的であったので、ヒラリーが大統領になれば、ロシアや中国の進出姿勢も少し収まるだろう。が、トランプ氏が大統領になれば、ロシアや中国の勢いはさらに加速するだろう。
その影響を最も受けるのは、日韓であろう。第二次大戦以降の紛争地をみると、アジアと中東が多い。今、なんと言っても、危険な国は北朝鮮である。しかも、北朝鮮は度重なる核実験によって国連制裁を受けている。7回も国連制裁を受け、結果としてつぶされたイラク並みである。そうなると、朝鮮半島での有事ということも考えざるを得ない。
■トランプ発言が日本に突きつけた課題
朝鮮問題の専門家にいわせれば、今の南北間の緊張はかつてないほどだという。開城工業団地から韓国が撤退したのは有事の際に韓国民が捕虜になるのを避けるためであるという。
そうした中、ロシアが北方4島にミサイル配備するというニュースもある。北朝鮮の混乱に乗じて、プレゼンスを増すというプーチン・ロシア大統領のしたたかな戦略を見え隠れする。紛争の血の臭いをかぎ取る嗅覚がプーチン氏にはあるのかもしれない。
トランプ氏は、北大西洋条約機構(NATO)や国連などの国際機関への資金分担は不相応に多いとし、日本や韓国、サウジアラビアといった同盟諸国との関係についても各国は相応の負担をしていない、と批判している。そして日本に対して、在日米軍の負担増額を要求し、できなければ撤退、最終的には日本の核兵器保有を容認するとしている。
まず、トランプ氏の発言の基本はよく練られたものであると思うが、細かな事実はかなりデタラメなことが多い。日本が負担していないというのは間違いだ。次の表は、米国国防省が公表していた「同盟国による駐在米軍のコスト負担」である。
これをみると、日本は75%と一番負担しており、サウジアラビアも2位だ。ただし、韓国の負担は低い。もっとも、NATOも低いので、トランプ氏の発言すべてがデタラメというわけでもない(この資料は、2004年からは公表されていないようだ)。
ただし、トランプ氏の発言は日本として真剣に考えるべき課題も提供している。
■自主防衛ならコストは20兆円超との試算も
防衛については、いろいろな立場や考えがある。一つは非武装中立の立場で、国連などの場で外交努力をするが、自国による防衛をしないというものだ。この“お花畑”論を唱える人はいまも結構多い。
防衛を行うと考える場合、他国との共同防衛か自主防衛かという選択肢がある。前者は日米同盟を考えると現状に近い。後者は、対米追随ではなく完全自主防衛というのであれば、(日本の武力だけで他の大国と対等に渡り合うのは困難であるから)いずれ核兵器保有も視野に入れなければならない。
お花畑議論を論外として、日米安保(=共同防衛)と自主防衛のどちらを選ぶかというと、戦争リスクと防衛コストの問題から、現実問題としては日米安保にならざるを得ない。
というのは、筆者は、過去の戦争に関するデータから、集団的自衛権の行使を認めるほうが、防衛コストが75%安くなって、最大40%も戦争リスクを減らすという実証分析結果を示してきた(2015年7月20日付け本コラム〜http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44269)。もし、これを覆すことができるのなら、国際政治・関係論から見ても画期的であるので、是非とも知りたいものである。
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また、日米同盟と自主防衛のコスト比較については、防衛大学校教授の武田康裕氏と武藤功氏による『コストを試算!日米同盟解体 国を守るのに、いくらかかるのか』(毎日新聞社)という本が参考になる。同書の中で、日米同盟のコストは1・7兆円、自主防衛コストは24〜25・5兆円と書かれている。
自主防衛コストのうち20兆円程度は貿易縮小などの間接的な経済の悪影響が含まれており、これをどう見るかで意見が分かれるものの、日米同盟コストに今の防衛関係費を加えても6・7兆円であり、自主防衛コスト24〜25・5兆円より小さいという結論は変わりないだろう。
■集団的自衛権を否定した結果…
自主防衛とすれば、トランプ氏が言うようにいずれ核兵器まで行かざるを得ないので、日本としては選択しにくい。
日米安保を維持する立場をとるのが自然だが、トランプ氏のように日本の負担増を求めてきたとき、集団的自衛権を認めるか否かで、交渉スタイルは大きく異なる。集団的自衛権を認めれば、米国側にもメリットがあるので、日本側の負担は抑えられるだろう。
一方、集団的自衛権を認めないと、日本側の負担が際限なく大きくなるか、米軍が撤退するかという事態になる。すると、結果的に「自主防衛」を選択せざるを得なくなってしまう。つまり、集団的自衛権の否定は結果的に自主防衛、ひいては核保有の流れになってしまう、ということだ。
翻ってみると、日本の周辺はかなり緊迫した情勢であるのに、日本だけが平和ぼけしている。集団的自衛権(の限定行使)を容認する安全保障法を「戦争法案」として廃案にしようと、野党は共闘している(自民党、公明党は決着済みとして今国会で審議しない方針だ。野党は表向き反対しつつも、本当は審議したくないという意見もある。北朝鮮情勢、トランプの発言があるので、審議したくないというのが本音かなと邪推してしまう)。
野党をはじめとする集団的自衛権の否定論者は、トランプ氏の提案にどう答えるのだろうか。日米安保を破棄していいというお花畑論なのか、自主防衛を選び、核武装まで突っ走る気なのだろうか。
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