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戦略なき浪費内閣が閉ざす財政健全化の道 日本経済一歩先の真相
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/178415
2016年4月1日 日刊ゲンダイ
場当たり主義(C)日刊ゲンダイ
選挙目当ての場当たり策
2016年度予算案が成立した。96兆7000億円余りとなる一般会計の総額は過去最大となり、安倍政権の誕生後、実に4年連続で歳出額は過去最大を更新した。その中身たるや、アレもやる、コレもやるというテンコ盛り予算だ。事業を目いっぱい詰め込むことで、安倍政権は国民の要求に応えたつもりでいるのだろう。あまりにも短絡的すぎる発想であり、「戦略なき浪費内閣」と言わざるを得ない。
新たな借金となる新規国債の発行額は34兆4000億円。歳入に占める国債依存度は35%強と、かなりの部分を借金に頼っている状況だ。しかも、異次元緩和に踏み切って以降、日銀が世に出回る国債の大半を買い占めている。緩和策がマイナス金利に行き着き、国債利回りまでマイナス圏に突入。国債を保有することで損失が発生する事態に陥っても、日銀の旺盛な購入ペースは変わらない。
日銀が損失覚悟で国債を大量に購入する姿勢は、先の大戦の遂行のため、無軌道に発行された戦時国債を彷彿させる。敗戦後、巨額の戦時国債の処理に政府が困り、日銀に支払いを引き受けさせると、ハイパーインフレを招いてしまった。この国の負の歴史のひとつである。
かように異常な調達状況で、予算の財源が成り立っていることを、現政権のメンバーはどれだけ認識しているのか。15年度補正予算に盛り込んだ低所得の年金受給者への3万円バラマキを見る限り、いびつな財政状況への危機感は皆無だ。
ここ数年、異常な資金調達により、膨れ上がったテンコ盛り予算のバラマキ策で、実体経済が良くなったならともかく、結果は逆だ。安倍首相が矢を何本放っても、景気は冷え込むばかり。本予算が成立した途端、補正案の編成も念頭に政権内で新たな経済対策の検討に追い込まれるほど、あらゆる経済指標は悪化の一途をたどっている。
経済の惨状を目の当たりにして、安倍首相はなぜ、自身の経済政策を見直そうとしないのか。本当に不思議でならない。自らが放った「矢」は正しい方向に飛んだのか。そもそも狙った「的」も正しかったのか。今こそ総点検が必要だ。
消費税増税の「先送り検討」報道が相次いでおり、これにも危機感を覚える。財政のバランスを改善するための増税を再び延期すれば、戦時国債を思わせる歪んだ財政状況から抜け出す道を閉ざすことになる。有権者のご機嫌取りを優先させ、票に結びつけたいだけの発想なら、安倍首相の政治家としての良心を疑う。
その場当たり主義は、それこそ戦略なき戦争に突き進んだ軍事政権を想起せざるを得ない。ましてや安保関連法が施行された今、この国の先行き不安はますます募っていく。
高橋乗宣エコノミスト
1940年広島生まれ。崇徳学園高から東京教育大(現・筑波大)に進学。1970年、同大大学院博士課程を修了。大学講師を経て、73年に三菱総合研究所に入社。主席研究員、参与、研究理事など景気予測チームの主査を長く務める。バブル崩壊後の長期デフレを的確に言い当てるなど、景気予測の実績は多数。三菱総研顧問となった2000年より明海大学大学院教授。01年から崇徳学園理事長。05年から10年まで相愛大学学長を務めた。
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