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2016年03月25日 「ジャーナリスト同盟」通信
<ロッキード事件の真犯人は中曽根だ!>
東京・平河町の砂防会館が取り壊されるという。そこが日本政治史のメッカ、毎日のように通い詰めた場所だったことだけに、わびしく感慨も深い。ここは田中派と中曽根派の牙城だった。歴史の真実は、ここで生まれ、ここで明らかにされる。特に、世紀の疑獄事件・ロッキード事件のことである。元首相の田中角栄失脚で幕を下ろしたが、真犯人はうまく逃げて、その後に天下を取った。中曽根康弘の盟友が熟知しているはずだが、筆者は田中の盟友・大平正芳の側近・田中六助の告発証言を聞いて知った。無念にも、それを記事にしなかった。当時は中曽根を、まともな政治家と誤解したことによる、まさに悔やまれる汚点となっている。
<大平伝令に対して田中角栄の怒りの一撃>
ロ事件は、元首相の逮捕とその後の裁判、その心労による無念の脳梗塞発作でもって、真相が明らかにされないまま、不幸にして結末を迎えてしまった。娘・真紀子の仇討ちも、小泉純一郎の反撃に屈して成功しなかった。
「勝てば官軍」とは、よく言ったものである。しかし、ワルが永久に勝つことはない。精神の安定はないだろう。正義は、墓場まで追い詰めてゆくだろう。この小論も史実を明らかにする、そのための一環である。
ワシントンから撃ち込まれた米軍用機・民間機のメーカー社長のピーナッツ証言を、当初、東京では右往左往するばかりで、犯人を特定できなかった。三木内閣の法務大臣は、幸か不幸か稲葉修・中曽根側近である。
ロ社の工作資金は、中曽根とナベツネの盟友である右翼のドン・児玉誉士夫へと集中していたことが明らかになったものの、法務・検察は時の田中首相に焦点を絞ってゆく。新聞報道も国民もそれに従った。見事な世論操作に検察は安心して田中捜査へと舵を切った。
こうした報道に、田中の盟友・大平正芳(当時三木内閣大蔵大臣)の心痛も膨れ上がる。彼は「田中の議員辞職で乗り切るしかない」と判断した。その意思を側近の田中六助を伝令役として、砂防会館の田中のもとへ派遣した。
この時の場面を、筆者は六助から直接、彼の国会事務所で聞かされた。
「ワシは大平さんの要件を伝えに、砂防にいる角さんのもとへ走った。事務所に入ると、金庫番の佐藤昭さんがいた。彼女は”オヤシはウイスキーばかり飲んでいますよ。止めるように言ってください”とワシに懇願してきた」
「わかった、と言って、角さんのいる奥の部屋に行くと、確かに昼間から酒浸りになっていて顔が赤い。”おう六か、何か用事でもあるか””今日は大平の使いで来ました””そうか、一体何なんだ。大平は何と言ってきた」
六助は元新聞記者出身だ。足腰が軽い。池田勇人首相との関係で、政界入りした人物だ。彼は「昭和の妖怪」といわれた岸信介の取材も、安倍晋太郎と一緒に取材していた。その関係で、岸の娘は、長身の安倍を選んだ、との経緯もある。結果、二人は別々の道を歩くことになる。安倍は岸の右翼・台湾派、六助は大平のリベラル・大陸派である。
それはさておく。六助は、角栄に対して「議員辞職が大平の希望であることを伝言、それが逮捕を免れる道だから、辛抱してほしい」と伝えた。
この大平進言を聞くと、角栄は大声を張り上げて否定した。「ふざけるなッ、何を勘違いしているんだ。俺は関係がないッ。犯人は俺ではないッ。上だッ」と普段のだみ声をエスカレートさせた。そして右手の親指を上に突き出した。
田中事務所は砂防会館2階、中曽根派の事務所は3階、中曽根の個人事務所は5階にあった。田中が「犯人は中曽根」と断定した場面だ。彼がロ社工作を受け入れたのは、児玉と中曽根に頼まれたことによるものだったと推認できる。
中曽根は首相になるや、自民党幹事長に六助を抜擢した。六助の口を封じたのだ。六助は、正義を殺してポストを手にしたことになる。
<大陸派と台湾派の攻防>
自民党の権力闘争には、二つの流れがある。戦前派の戦争勢力の台北・台湾派と戦後派の北京・大陸派である。それは前者の反共・イデオロギー派と、それにはこだわりの少ない経済重視派の争いだ。日本国内・自民党内のそれは、天皇制国家主義に傾倒する戦前右翼とそれに反発するリベラル派の戦い、したがって憲法の平和主義を破壊するか、擁護するかの争いへとつながる。
リベラルの北京派・中国派は日中友好派である。日中友好が、アジアの平和と安定の基礎という理念で貫かれている。東アジアの経済連携を重視する。現在では、海部俊樹・福田康夫・鳩山由紀夫・小沢一郎らの立場である。
<財閥と右翼・CIAの連携で逆転した現在>
永田町の権力抗争は、財閥が右翼・CIAと連携する過程で大きく変貌することになる。極右の台頭である。
河野洋平のもとで政権を奪回した自民党は、社会党の村山富市から旧田中派の橋本竜太郎、小渕恵三を経て、神社本庁・日本会議の森喜朗内閣が誕生して、それまでの政治潮流が逆転する。
小泉内閣の下でリベラルの加藤紘一が失脚すると、自民党内のリベラルは総崩れとなってゆく。靖国参拝の小泉と、それを補佐する安倍の背後で台頭した靖国派の神社本庁と日本会議。この激変の黒幕が財閥である。財閥が右翼と合体するや、NHKのみならず新聞テレビが右翼化して、読売化している危うい日本である。
この政治的激変を、世界の学者も研究者も正しくは見えない。ひとりCIAのみである。平和を叫んできた創価学会でさえも、この危険な戦争勢力に呑み込まれている。
<日本国民を裏切ったメディア・信濃町・宏池会>
国民は、何が何だか理解できない。いっぱしの政治記者も、翻弄されて真相がつかめない。
戦争法反対に立ち上がった市民の、国会包囲を正確に伝えようとしなかった新聞テレビに驚愕するばかりである。正義を伝えようとしないテレビは、砂防会館の真実を報道しない。
信濃町の裏切りを報道しない。池田・大平・鈴木・宮澤のリベラルを継承しない宏池会の変質を報道しない。結果、中国など隣国民をも裏切っている。
それを目撃してきた砂防会館が姿を消す。しかし、真実が消えることはない。そのための、これはささやかな、リベラルの再興を求めての記録である。
戦争か平和かの攻防戦が、既に始まっている2016年の桜花の季節である。
2016年3月25日記(政治評論家・日本記者クラブ会員)
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