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安保論議の再構築を望む 「仮面の同盟」化せぬよう
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/column/2016/04/03/post-765.html
サンデー毎日 2016年4月 3日号
倉重篤郎のサンデー時評 連載93
この国会、おかしくないか。自民も野党も審議を急いでいる。参院議員は7月の選挙に向けて一日でも多く選挙区を回らんとし、衆院議員は衆参ダブル選挙のブラフに踊らされ、腰を据えた論戦どころではなくなっている。勢い、予算もかつてないスピード成立だ。
選挙は大事である。だが、何をもって選んでもらうか、という争点もまた重要である。万人注視のせっかくの国会論戦の場を使ってもっと明確化すべきではないのか。特に、安保法制論議である。昨年9月19日成立の集団的自衛権行使容認を軸にした一連の法制は今月29日に施行される。法律としていや応なく動き始めるのだ。安倍晋三政権は、新法の実際の運用は、参院選後に先送りする予定だが、世界はそれを待ってくれない。
南スーダンに派遣中のPKO部隊については、一旦緩急あらば、新法で付与された「駆けつけ警護」「任務遂行のための武器使用」に踏み切らざるを得ない局面が予想され、南シナ海で米中間衝突発生の場合には集団的自衛権の発動を求められる可能性があるのだ。
その時に安倍政権はどうするのか。法的にできることであっても政策判断でしないことがありうる、とは言うものの、これまでの日米関係を振り返ると、とても今の安倍政権に「ノー」と言える度量と選択肢はないように思える。
もちろん、この設問は安保法制廃案を求める野党にも向けられるべきだ。廃案後に一体どう対応するんですか、と。この二つの問いこそが、日本の安全保障にとって最も本質的かつ現実的なものであり、夏の国政選挙では争点の中心に据えるべき議論だと思うのだ。
もちろん、いくつかの論戦は行われた。志位和夫共産党委員長は、南スーダンのケースは、内戦状態である同国で武力を使っての住民保護にならざるを得ず、憲法9条違反の武力行使になり自衛隊側の戦死者も予想される、と指摘。安倍政権にその覚悟を問うた。これに対して政権側は自衛隊のリスクや自衛隊員の戦死を前提にした議論を避けるばかり。やはり、安保法制論議は、依然として自衛隊の海外派遣を対米外交のカードに使わんとする外務省ペースにあり、実際に派遣される自衛隊側に立つ現実的、実務的な議論を著しく欠いている、と言わざるを得ない。
◇中国のさらなる台頭と沖縄からの異議申し立て 日米安保を根本から見直せ
安保法制の論点は以下三つに集約される。憲法に整合するかどうか。安倍氏が言うように日本の安全保障にとって唯一の政策なのか、他に代替策、よりベターな道はないのか。新法制が施行されるとどのような事態が現実的に生じるのか。第一の論点は、どうみても立憲主義に反している、との結論が出ているが、第二、第三の論点はなお煮詰まっていないのだ。
私はこの稿で、もう一つの大きな論点を提示したいと思う。日米安保体制トータルの再検証である。この戦後日本政治の屋台骨的仕組みについて、改めてその実態と意義を日本人が自らの手でつまびらかにし、今後それをどのように維持、発展(縮小、廃止という選択肢も排除せずに)させるか、国民的議論にさらしながら、20年、30年先をにらんだ戦略を熟慮すべき時期に来ている、と考える。
というのも、今起きていることは、敗戦、1991年の冷戦崩壊に次ぐ安保環境の激変だからである。その一つは、中国のさらなる台頭と米国の漸次的撤退という抑止力バランスの変化という全体構図の中で表出。二つ目は、日米側抑止力の要である在日基地負担に対するオール沖縄の異議申し立て、という国内問題として現れた。
政治は、この突き付けられた課題の解を見つけ出さなくてはならない。その変化の中で、日米同盟に真に必要な抑止力とは何かを見極め、それを日米がどう役割分担すべきか、について交渉を重ね、さらには、日本が自ら引き受けた役割の中で沖縄の基地負担をどれだけ本土で引き受けるのか、という国内調整に真正面から向き合うべき時が来た、と思うのだ。
その際、二冊の書籍を参考にしたい。いずれも昨年暮れに出版されている。『仮面の日米同盟』(春名幹男著 文春新書)には驚くべきことが書いてある。日米安保があるから米は日本を守ってくれる、というのは日本人の思い込みにすぎない、というのだ。その証拠として、安保法制の前提としてまとめられた「日米防衛協力のための指針」では、日本防衛についての米軍の役割をあくまでも自衛隊を支援・補完することとされ、従来の防衛公約から後退した表現になっている。また、指針の英語版を日本語版に翻訳する際に後退を隠すために作為的工夫がなされている、との指摘である。元共同通信記者として安保政策に明るい著者は、複数の機密文書をひもとき、いかに米軍の日本駐留目的が日本の防衛になく、米の世界戦略のための兵站(へいたん)基地化であるかを立証している。
もう一冊は、『戦う民意』(翁長雄志(おながたけし)著 角川書店)である。翁長沖縄県知事が自らの原点を切々とつづっている。自民党出身の知事として日米安保の重要性は理解するとしながら、沖縄だけに基地負担を押し付けたままにして恥じることのない日本の民主主義のあり方に根源的な疑念を呈している。辺野古新基地を阻止することが沖縄を変え、日本を変え、真の民主主義を確立することにつながる、と決然と論じる。その信念とオール沖縄をまとめる求心力は、政権側が一つ覚えで繰り返す「辺野古移設は唯一の解消策」では対抗不能と、私には思える。
国会会期はまだ2カ月余りある。参院選の争点を明確にするためにも、節目の時代に政治が逃げずに課題と向き合った実績を作るためにも後半国会では安保議論を再構築するよう、強く望みたい。
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