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「保育園落ちた日本死ね」待機児童問題を解決する、ある大胆な提案
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48240
2016年03月21日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
■保育士はどれだけ「苦しい」のか
「保育園落ちた日本死ね」と書かれた匿名のブログが話題となり、待機児童問題が政局がらみで取り上げられ、国会でも議論になっている。
保育園に子供を預けられない人が多い背景には保育士不足があり、保育士の待遇改善が必要だとの指摘もある。そこで、民主党と維新の党は、保育士の給与を5万円アップさせる法案を提出するという。その財源は、公共事業の削減などで確保するという。
まず、現状を整理しておこう。
話題になっている保育士の給与だが、厚労省の平成27年賃金構造基本統計によれば、決まって支給する現金給与額の男女平均でみると、全産業では勤続12.1年で33.3万円(平均42.3歳)、保育士では勤続7.6年で21.9万円(平均35歳)となっている。
年齢差や勤続差を考慮する必要があるが、保育士の給与がそれほど高くないのは事実だろう。もっとも、この格差は欧米にも見られるが。
次に、保育士の労働市場を見ておこう。
保育士の有効求人倍率は、5月から12月に上昇し、その後は低下するという季節性がはっきりしている。これは、保育所が規制対象になっているため、その許認可サイクルによるモノであろう。ただし、地域によって有効求人倍率が大きく異なっているため、地域偏在が見られる。もっとも、傾向としては、有効求人倍率は各地で上昇傾向になっている。
次に、全国の待機児童数の推移を見ておこう。2008年4月に19550人であったが、その後上昇し、2010年4月に26275人。その後徐々に低下し、2014年4月に21371人となり、翌2015年4月には再び上昇し、23167人となっている。
地域分布を見ると、東京に半数近くが集中しており、まさに都市問題の典型である。
東京23区で見ると、23区の特定区に待機児童問題が集中している。待機児童の就学前児童に対する比率でみると、世田谷区2.73%、渋谷区2.62%、目黒区2.34%と高く、一方、千代田区は0%、杉並区0.18%、港区は0.22%と低い。これらの自治体では、待機児童の多くは0〜2歳だ。
東京23区の外の横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市になると待機児童数はかなり減る。逆に23区の中心区でも、待機児童数はかなり減少する。
■一律に給与を上げてもダメ
このように、保育士と待機児童の問題はかなり地域性がはっきりしている。こうした地域差のある問題を解決するには、全国一律の話しかできない国に任せるのではなく、地方自治体に任せるほうがよい。
安倍政権は、マクロ経済分野では異次元金融緩和など比較的まともな経済政策がとられてきた(ただし消費増税は除く)が、ミクロ経済分野では、もっと地方分権を進めるべき点で不十分なところがあった。待機児童はまさにその分野であり、はっきり地方に任せておけば、安倍政権として国の施策で指摘されることはなかったはずだ。
地域偏在のある問題には、カネを投入するにしても、その方法はよく考えてやらなければいけない。民主党や維新の党のように、給与を補填するにしても、全国一律にしてしまえば、効果が発揮できなくなる。むしろ、保育士の余っている地域にも給与補助を行うと、保育士の移動が妨げられて、かえって都市の保育士不足を助長する場合も出てくるのだ。
短期的な対応策として、まず考えられるべきは、保育士・保育所という供給サイドではなく、待機児童(とその保護者)という需要サイドを動かすことだ。
共稼ぎ世帯が待機児童問題に直面しているが、そうした世帯はしっかり稼いで税金を納めるので、行政にとっては大切な層だ。そこで、各自治体の保育計画を見ながら、弾力的に居住地を選択できるように、例えば住居移転について公的補助ができれば、ある程度のミスマッチは解消できるだろう。あるいは、広域的な保育バスを導入するのも、それと同様な効果がある。
■「シェアード ・エコノミー」という解決策
一方、保育士・保育所という供給サイドについては、中長期的な対策がいろいろある。
政府は、新たに50万人分の保育の受け皿を用意するという。具体的には、保育士を増やすために、一度離職した保育士が現場に復帰するために20万円の準備金を出すこと、保育専門学校や短大に通う学生に月5万円の返済免除の奨学金を出すなどの政策を行うなどを提示している。結構なことだ。
ただし、これは経済の新しい流れをつかんでいない旧来の策だ。今注目されているのが、「シェアード・エコノミー(共有型経済)」である。
例えば、配車サービスの「Uber(ウーバー)」や 「Lyft(リフト)」が代表例である。マイカーの1日の平均稼働率は、24時間で換算した場合わずか2%程度という。まったく使われていないので、配車サービスが本格化すれば、マイカー所有者はいい副収入が入るだろう。
今でもネットで探せば、「カーシェア」、「シェアルーム」などいくらでも、シェア・サービスが出てくる。
このシェアード・エコノミーを待機児童問題に応用すればいい。かつて保育士資格を取った人や保育サポーター・保育ママなどを登録させ、彼ら彼女らの自宅などを活用したマッチングビジネスを地方自治体が支援する、ということだ。
現状の仕組みでは、保育所に入所できるか否かの二者択一しかないのに対して、この新たな仕組みをつくれば、対応可能な保育士・保育サポーター・保育ママとスペースの活用(Uberの応用)による柔軟なサービス展開が可能になる。
シェアード・エコノミーを導入すれば、現状の保育士の低い給与の改善にもつながる可能性があると筆者はみている。
■保育士試験改革も必要
まず、現状の保育士の給与が低いのはなぜかを考えてみる。
これまで有効求人倍率がそれほど高くなかったこと、それに地域によって保育士のニーズが限定され全国一般では給与が低かったことから、保育士の全般的な質を保つことができない、という実情をある程度反映してきた可能性がある。
これを改善するカギは、保育士資格を得るためのルートにある、と筆者はにらんでいる。
保育士になるルートは、@養成校(短大、専門学校など)に通うか、A保育士試験を受けるかの2つしかない。業界関係者の共通認識は、@のルートの人たちの多くは、育児の経験不足のために(少し酷な言い方だが)使いものにならないという。
一方、育児経験や教育経験のある人たちをAのルートで保育士にしようとしても、試験が無駄に難しくてなれない。実際、合格率は概ね20%程度である。その理由は、試験を保育士養成協議会(=養成校の業界団体)が作っていて、学校利権のために過度に難しくしているからである。
これでは、保育士全般の質の向上は難しい。そして、質が悪いから待遇も悪くなるのだ。悪循環に陥っているわけだが、これを断ち切るためにまず、試験制度を改善し、Aのルートの合格者を増やし、保育士の質を向上することからはじめるのがいい。質が向上したうえで、給与が改善していくのがベストだろう。
さらに、「シェアード・エコノミー」を活用すれば、保育士の質と待遇両方の向上が期待できる。つまり「シェアード・エコノミー」での必須要件である顧客の評価フィードバックを活用すればいいからだ。
これで、利用者評価やスキルに応じた給与が可能になって、質の高い保育士に高い給与を払うことができるようになる。保育士の生産性を向上させ、スキルの高い人に高い給与を払う仕組みに変えていくことが本筋である。
■安全はこうして確保する
ただし、「シェアード・エコノミー」を活用した待機児童対策というと、必ず反論として出てくるのが、安全性に問題があるという意見だ。インターネットのベビーシッティング斡旋サービスで事件が起こったことは記憶に新しい。
それに対しては、もちろん対策が必要だろう。自治体で一定のルールで保育士・保育サポーター・保育ママを監督するのは必須である。具体的には研修は当然として、複数で組ませること、カメラによる監視を行うことだ。今の技術ならカメラ監視(保護者からも監視が可能)もきわめて安価でできる。
現状の保育施設にかかる過剰規制の問題は、政府の規制改革会議などでも長年にわたって取り上げられてきたが、いまだ十分解決されていない。「シェアード・エコノミー」の活用(空きスペースと対応可能な人員の活用)をしようとすれば、規制体系をさらに全面的に見直す必要がある。
ともあれ、「シェアード・エコノミー」はあくまで活用のひとつの手段であり、いまある保育所の役割を否定するものではない。既存の制度上に重層的な仕組みを作ろうというものだ。
待機児童問題にはいろいろな角度からのアプローチがあるので、地方分権の中で、いろいろとやってみればいいのだ。
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