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2016-03-10 09:20:25
読売新聞は本日3月10日の社説で、「判例を逸脱した不合理な決定」という見出しを掲げて、裁判所の判決を批判しました。書き出しは、「裁判所自らが、原子力発電所の安全審査をするということなのか」と、ご立腹なのです。
裁判所は、正しい姿を描いて判決を出すべきであり、間違った考えを批判することです。ところが、読売は、関電側のいう言い分を率直に採用し、あるいは政府の言い分をそのまま取り上げて、裁判所の言い分を批判しました。
裁判所の判決は、例えば、もし同じような事故があった場合、市民はただちに避難できるか、ですが、それも危ういのです。原子力規制委の田中俊一委員長は、「原発事故が起きた場合の避難は、われわれとは関係がない」といってはばかりません。それは地元自治体の判断であって、われわれの判断基準とは関係がないというのです。
そもそも、安倍政権が「日本の原発技術は世界最高水準のものができた」といいますが、その最高水準とは「一体何をさしているのか。何と何を比べて判断するのか」が全く明らかになっていません。単なる自己認識をいっているにすぎません。
読売は、「大津地裁が、規制委の新基準に疑問を呈したのも問題だ」と決めつけます。「規制委の策定方法などに対して、『非常に不安を覚える』と独自の見解を示した」と、原発ゼロリスクを求める姿勢がうかがえることを示しています。
読売新聞の論説委員を務める人間は、もう少し「知性」を磨く必要がありますね。
高浜差し止め 判例を逸脱した不合理な決定
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20160309-OYT1T50157.html
2016年03月10日 読売新聞社説
裁判所自らが、原子力発電所の安全審査をするということなのか。
滋賀県の住民29人が、福井県の関西電力高浜原子力発電所3、4号機の運転差し止めを求めた仮処分申請で、大津地裁が差し止めを命じる決定を出した。
重大事故や津波の対策、事故時の避難計画の策定などについて、「関電側が主張や説明を尽くしていない」との理由である。
原子力規制委員会は、福島第一原発事故後に厳格化された新規制基準に従い、1年半をかけて3、4号機の審査を実施した。昨年2月、合格証にあたる「審査書」を交付し、関電は今年1月に3号機を再稼働させた。
大津地裁は、規制委と同様、関電に原発の安全性の技術的根拠を説明するよう求めた。関電は、審査データを提出し、安全性は担保されていると主張した。
だが、大津地裁は「対策は全て検討し尽くされたのか不明だ」として、受け入れなかった。
司法として、関電に過剰な立証責任を負わせたと言えないか。
最高裁は、1992年の四国電力伊方原発訴訟判決で、原発の安全審査は「高度で最新の科学的、技術的、総合的な判断が必要で、行政側の合理的な判断に委ねられている」との見解を示した。
高度な専門性が求められる原発の安全性の判断で、司法は抑制的であるべきだとする判例は、その後の判決で踏襲されてきた。
今回の決定も、最高裁判例に言及はしている。だが、再稼働のポイントとなる地震規模の想定などについてまで、自ら妥当性を判断する姿勢は、明らかに判例の趣旨を逸脱している。
大津地裁が、規制委の新規制基準に疑問を呈したのも問題だ。
新基準は、第一原発事故を踏まえ厳しくなったにもかかわらず、規制委の策定手法などに対して、「非常に不安を覚える」と独自の見解を示した。原発にゼロリスクを求める姿勢がうかがえる。
菅官房長官が「世界最高水準の基準に適合するという(規制委の)判断を尊重していく」と強調したのは、もっともである。
仮処分決定を受け、関電は、再稼働したばかりの高浜3号機を停止する作業に入る。4号機は2月に再稼働したが、直後のトラブルで停止している。
関電は、大津地裁に対し、保全異議などを申し立てる。それが認められなければ、高裁に抗告することになろう。裁判所には、冷静で公正な判断を求めたい。
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