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「やる気にさせます!」北海道警がおとり捜査で有罪判決を取ったが、札幌地裁が違法性認め再審決定。
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/bedc66a035921169a6e379f078ba4e18
2016年03月03日 | 刑事司法のありかた Everyone says I love you !
銃刀法違反で懲役2年が確定したロシア人男性の再審開始が認められ、垂れ幕を掲げる弁護団=3日午後、札幌地裁前。
寒い中ご苦労様です。
刑事訴訟法の授業では、おとり捜査は捜査機関が
1 全くやる気のない人をそそのかして、やる気にさせたら違法。
2 もともとやる気のある人に犯罪の機会を提供したのなら適法
と教えるのですが、今回はもろに1の場合だとして、札幌地裁がいったん確定した判決をひっくり返す再審決定をするという画期的な判断をしました。
北海道小樽市で1997年11月、拳銃1丁と実弾を所持していたとして銃刀法違反に問われ、懲役2年の実刑判決を受けて服役したロシア人男性船員(46)の再審請求に対し、札幌地裁(佐伯恒治裁判長)は2016年3月3日、再審開始を決定したものです。
全然画像がなくてすみません!2時間ドラマでも上のような常識は守ってほしい、ということで。
男性側は公判で
「道警の捜査協力者のパキスタン人から拳銃と中古車の交換を持ちかけられた。違法なおとり捜査だった」
と訴えたのですが、道警側はこれを否定し、捜査を担当した元警部らが
「現場には被告以外誰もいなかった」
と証言し、98年9月に有罪判決が確定しました。
ところが、元警部は2002年に覚醒剤取締法違反容疑で逮捕され、ロシア人男性の公判での偽証を供述し、男性側が道などに損害賠償を求めた民事訴訟では、元警部が自分で
「協力者のパキスタン人に拳銃を持って来させろと指示していた」
と証言しました。
このため民事訴訟の判決は、北海道に50万円の賠償を命じました。
弁護団は2013年9月、元警部の証言などを新証拠として札幌地裁に再審を請求し、佐伯裁判長は
「本件おとり捜査に重大な違法があるのは明らかで、無罪の言い渡しをすべきだ」
としたものです。
山田正紀ってSF作家では?
恐ろしいのは、このおとり捜査が、担当していた元警部が覚せい剤取締法違反で検挙されたことをきっかけに「自白」したからわかったことで、本来であれば闇に葬られていてもおかしくなかったということです。
私たちは、「犯人」が「逮捕」されたというと、完全に捜査機関のことを信じ切ってしまいますし、職業裁判官でさえそういう傾向が著しいため、99・9%の有罪率が維持されているのですが、やはり、推定無罪が常識とならないといけないことがわかります。
特に市民が刑事訴訟に参加する裁判員制度を続けていくなら、裁判員もこの推定無罪を必ず頭に叩き込んでから裁判を始めるということが絶対に必要です。
また、私たちも捜査機関がマスコミに垂れ流す情報を疑ってかかる必要があります。
もうおじいちゃん、テレビ出るのやめて!とご家族に言われていると思う。
ふざけた画像で印象がぼやけてしまいましたが、捜査機関は必ず一定の割合で違法捜査をするということです。
外国籍でハンディもあるのに嫌疑を晴らすのに20年近く頑張ったロシア人男性と、弁護団に心から敬意を表したいと思います。
「おとり捜査で有罪」違法性認め再審決定 札幌地裁
動画→http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160303/k10010430071000.html
3月3日 18時04分 NHK
拳銃を所持していたとして懲役2年の刑が確定し服役したロシア人の男性が、違法なおとり捜査で有罪にされたとして、再審=裁判のやり直しを求めていたのに対し、札幌地方裁判所は「男性に銃器犯罪を起こす意図はなかったが、おとり捜査で中古車との交換を持ちかけられて拳銃を持ち込んだ。捜査には重大な違法があり、男性に無罪を言い渡すべきだ」として再審を認める決定をしました。
このロシア人男性(46)は、19年前の平成9年に船員として北海道の小樽港を訪れた際、拳銃を所持していたとして懲役2年の刑が確定し服役しました。男性は出所後、ロシアに帰国しましたが、その後起こした民事訴訟で、捜査を担当した元警部が事件について、「違法なおとり捜査だった」とする証言をしたことから、男性はこの証言などを新証拠に3年前、札幌地方裁判所に再審=裁判のやり直しを求めました。
3日の決定で佐伯恒治裁判長は「男性は、警察の捜査協力者だったパキスタン人から拳銃と中古車を交換すると持ちかけられ、父親の遺品の拳銃を日本に持ち込んだもので武器商人ではない。銃器犯罪の意図がない者に犯意を誘発させるような強い働きかけをする必要性は到底、認められない。警察は組織ぐるみでおとり捜査を隠蔽しており、公正な裁判を受ける権利を踏みにじっている」と指摘しました。
そのうえで、「今回のおとり捜査は犯罪捜査の名に値するものではなく、重大な違法があるのは明らかだ。男性には無罪を言い渡すべきだ」として再審を認めました。
これについて、札幌地方検察庁の片岡敏晃 次席検事は「決定内容を精査し、上級庁と協議のうえ適切に対応したい」とコメントしています。
また北海道警察本部は「コメントできる立場にない」としています。
弁護団「極めて画期的な決定」
再審開始の決定を受けて、ロシア人男性の弁護団は札幌市内で会見を開きました。この中で、主任弁護人を務める岸田洋輔弁護士は「裁判所がおとり捜査の違法性を認め、収集された証拠を排除したのは初めてのケースで、極めて画期的だ」と述べて、裁判所の決定を評価しました。そのうえで、岸田弁護士は、違法なおとり捜査について「何もないところから事件を作り上げた許されない行為で憤りを感じている。こういうことは二度とあってはならない」と述べました。
会見では、ロシア人男性の「日本の裁判所がようやく自分の話に耳を傾けてくれ、受け入れてくれたことに感謝しています」とするコメントも読み上げられました。
再審請求までの経緯
問題のおとり捜査を担当したのは、当時、北海道警察本部の銃器対策部門に所属していた元警部です。この元警部は、ロシア人男性が実刑判決を受けた4年後の、平成14年に覚醒剤取締法違反などの疑いで逮捕されました。
これを受けて、北海道警察本部は、元警部の過去の捜査に問題がなかったかを調査しました。その結果、元警部を含む警察官4人が、ロシア人男性の事件で、捜査協力者のパキスタン人が現場に立ち会っていたのに、「いなかった」といううその書類を作成したり、法廷でうその証言をしたりしていたことが分かりました。
しかし、検察は「協力者を守るためで違法ではない」として、4人を起訴しませんでした。その後、ロシア人男性は国と北海道を相手取って民事訴訟を起こしました。裁判では、当時、服役中だった元警部への尋問も行われ、元警部はロシア人男性の事件について、「拳銃を持ってくる気がない人に持ってこさせた。違法なおとり捜査だったと思う」と証言しました。
しかし、札幌地方裁判所は6年前、「ロシア人男性はおとり捜査による働きかけがなくても、拳銃を持ち込む意思があった疑いが残る」として、違法な捜査とは断定できないとする判断を示し、平成25年、上告が受理されずに判決が確定しました。これを受けて、ロシア人男性は実刑を言い渡した刑事裁判をやり直すよう、札幌地方裁判所に再審を請求していました。
おとり捜査を巡る議論
おとり捜査を巡っては、最高裁判所がどのような場合に認められるか基準を示しているほか、刑事司法改革の議論の中でも対象の拡大が議論されました。
いわゆるおとり捜査について、最高裁判所は、平成16年に、直接の被害者がいない薬物事件などの捜査であること、通常の捜査では摘発が難しいこと、機会があれば犯罪を行おうという者が対象であることがそろっている場合には、認められるという判断基準を初めて示しました。
その後は、平成23年に設置された刑事司法改革を巡る法制審議会の特別部会でも議論されました。特別部会では、供述調書に依存しすぎた捜査や裁判の見直しなどが議論され、海外ではおとり捜査が広く導入されていることが紹介されました。
また、出席した検察官が「日本では取り調べで供述を得る以外の手段が十分ではない」と述べ、例として、おとり捜査の対象の拡大を挙げました。しかし、その後は議論が進まず、法制審議会は、おととし、新しい捜査手法として他人の犯罪を明らかにする見返りに、検察官が起訴を見送ることなどができる、いわゆる「司法取引」を導入する法改正の要綱を決めましたが、おとり捜査の対象の拡大は見送られました。
ロシア人男性の再審開始決定 地裁、おとり捜査と認定
http://www.asahi.com/articles/ASJ334FGBJ33UTIL00P.html
2016年3月3日13時42分 朝日新聞
北海道小樽市で1997年に起きた銃刀法違反事件で、懲役2年の実刑判決を受けたロシア人男性が求めていた再審請求について、札幌地裁(佐伯恒治裁判長)は3日、開始を認める決定をした。「本件おとり捜査は、およそ犯罪捜査の名に値するものではなく、重大な違法があるのは明らかだ」としている。
再審は、ロシア人のナバショーラフ・アンドレイさん(46)が2013年9月に請求した。弁護団は捜査を担当した元北海道警警部の「拳銃の摘発目標を上げるため、自分たちが主導した違法なおとり捜査だった」との趣旨の証言を提出し、無罪を主張している。
アンドレイさんは97年11月、小樽市内で拳銃を所持した疑いで逮捕され、懲役2年の実刑判決を受けた。捜査に関わった警察官が覚醒剤取締法違反容疑で逮捕され、アンドレイさんの事件で違法な捜査があった疑いが浮上した。
道などに損害賠償を求めた民事訴訟では、札幌地裁が、「違法なおとり捜査とは断定できない」としながらも、道警がおとり捜査を隠すために偽証やうその捜査書類を作成したことを認め、道に50万円の支払いを命じ、判決が確定している。
拳銃おとり捜査、重大な違法=ロシア人男性の再審認める—銃刀法違反事件・札幌地裁
http://jp.wsj.com/articles/JJ12321856598567394520716821455570392907073
2016 年 3 月 3 日 18:21 JST 更新 ウォールストリートジャーナル
北海道小樽市で1997年、拳銃と実弾を所持していたとして、銃刀法違反に問われ有罪が確定したロシア人男性(46)が「北海道警の違法なおとり捜査だった」と訴えた再審請求で、札幌地裁(佐伯恒治裁判長)は3日、再審開始を認める決定をした。
佐伯裁判長は、「本件おとり捜査は重大な違法があるのは明らか」と指摘。「無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したときに該当する」とした。
男性は弁護団を通じて、「ようやく自分の話に耳を傾け、受け入れてくれたことに感謝している。あまりに長い時がかかってしまい、残念な気持ちもある」などとコメントした。
男性は97年、拳銃と実弾を所持した容疑で逮捕された。公判では「道警の捜査協力者が取引を持ち掛けた違法なおとり捜査だ」と無罪を主張したが、札幌地裁は98年、懲役2年の実刑判決を言い渡して確定。服役した。2013年9月に再審請求した。
道警は「警察としてコメントすることはない」としている。
札幌地検の片岡敏晃次席は「決定内容を精査し、上級庁と協議の上、適切に対応したい」とした。
[時事通信社]
最後まですみません。
◇
おとり捜査
http://keiso-ronsyou.seesaa.net/article/403193346.html
刑事訴訟法の論証 刑訴・司法試験論文対策ブログ
おとり捜査
:捜査機関orその依頼を受けた捜査協力者が、
その身分や意図を相手方に秘して犯罪を実行するよう働きかけ、
相手方がこれに応じて犯罪の実行に出たところで現行犯逮捕等により検挙するもの
(最判平16・7・12)
<論証>
捜査官が、麻薬売人Xに対して麻薬の購入の話を持ちかけ、現場に現われたXを逮捕
→このいわゆるおとり捜査は適法か?明文なく問題となる
↓
おとり捜査が強制処分にあたるとすれば、
明文なき以上、強制処分法定主義(刑事訴訟法197条1項但書)に反し違法
↓
しかし、強制処分にはあたらない ∵ 個人の意思を制圧していない
↓
では、任意捜査(刑事訴訟法197条1項本文)として許されるか?
この点 ↓
任意捜査にも捜査の必要性・相当性が必要と解される
∵ 任意捜査にも適正手続の要請(憲法31条)が及ぶ
では↓
本件のおとり捜査にかかる要件が満たされるか?
↓
(一)必要性
麻薬犯罪など、被害者が存在せず秘密裡に行なわれる犯罪については
真実発見の要請から、おとり捜査の必要性は否定できない
(二)相当性
(1) 犯意誘発型(国家が犯人の犯意を生じさせた場合)
→ 認められない
∵ 国家が犯罪者を作り出すに等しいので、適正手続の観点から相当とはいえない
(2) 機会提供型(国家が犯行の機会を提供したに過ぎない場合)
→ 認められる
∵ 適正手続の要請に反するとまではいえない
ただし ↓
→ 執拗に働きかける等の手段を用いれば、相当性は否定される
∵ 犯意誘発型と同視できる
<判例・最判平16・7・12>
少なくとも、
@直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において、
A通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難である場合に、
B機会があれば犯罪を行う意思があると疑われる者を対象におとり捜査を行うことは、
刑訴法197Tに基づく任意捜査として許容されると解する
* 従来の下級審判例の立つ二分説の方向性を是認するものといえる
<おとり捜査が違法とされた場合の問題点>
(1)逮捕→違法
∵ 違法な捜査を前提とする以上、適正手続の要請から、後行する逮捕も違法と解すべき
(2)違法な逮捕に基づく勾留請求の可否
判例→許される ∵ 逮捕と勾留は別個の手続
通説→許されない
∵ 二度の司法審査による不当な身柄拘束の排除という
逮捕前置主義(刑事訴訟法204条〜207条)の趣旨
ただし ↓
軽徴な瑕疵であれば許される ∵ 真実発見の要請
(3)違法収集証拠の証拠能力
↓
証拠の収集過程に
㋐令状主義の精神を没却するような重大な違法があり
㋑これを証拠として許容することが将来の違法捜査抑制の見地からして相当でない
と認められるときは、その証拠の証拠能力を否定すべき
∵ 適正手続の要請、違法捜査抑制、司法の廉潔性維持
(4)公訴権濫用論
↓
公訴提起自体が無効となり、公訴棄却(刑事訴訟法338条4号)すべき
∵ @捜査の廉潔性を失っており、適正手続に反する重大な瑕疵
A違法証拠排除で足りるとの見解もあるが、
これでは他の証拠で被告人が有罪となる可能性があり、被告人の救済として不十分
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