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今の時代に実現不能 同一労働同一賃金 日本経済一歩先の真相 高橋乗宣
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/176030
2016年2月26日 日刊ゲンダイ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
安倍首相がしきりと「同一労働同一賃金」を前面に打ち出している。23日の1億総活躍国民会議でも有識者による検討会を設け、具体的な法制度の在り方などを検討するよう指示を飛ばした。
安倍首相が訴える「同一労働同一賃金」はどういう構図を想定しているのか、どうもボンヤリしている。正社員も非正規社員も仕事の内容が同じなら賃金を同じにするという意味であるならば、その発想はあまりに古典的過ぎる。この発想自体は、古典的資本主義経済の下では当然のスローガンだった。しかし、90年代初頭から経済のグローバル化が叫ばれて、すでにもう四半世紀が経った。事態は大きく変容してきている。
首相がこのスローガンを掲げる背景には、正社員と非正規社員の待遇格差が横たわっている。特に最近は若年層への就職門戸がかなり狭まり、代わって派遣労働など非正規雇用が急増している。こうした雇用では彼らの生活維持は難しく、将来展望も大変厳しい。
安倍政権は新3本の矢の1つに「希望出生率1.8」を掲げているが、肝心の若者たちの生活実態が不安定では出生率を引き上げ、少子高齢化を打開するのは困難だ。そこで、何はともあれ「同一労働同一賃金」の実現を掲げたのだろう。
まっとうな目の付けどころだとは思うのだが、何せ今は国境なき時代なのだ。国内の労働市場も国際化が進んでいる。企業は製造・サービスの現場では安い労働力を求め、中国、台湾、韓国など近隣アジアの人々に限らず、ブラジル人やナイジェリア人までも非正規社員として雇っている。
安倍首相は「同一労働同一賃金」のルールを、外国人労働者にまで当てはめるのだろうか。強引にルールを押し付ければ、企業経営者には「日本を出ていく」という選択肢もある。資本や労働の出入国が自由になっている今日、「同一労働同一賃金」という古典的原理原則を実現するのは不可能とみるべきだ。古典的資本主義経済は国境に囲まれていることが大前提だった。アダム・スミスやカール・マルクスの経済学もその前提に基づいていた。古典的な理想を今の時代に本気で成し遂げる気なら、安倍首相は資本と労働の出入国を徹底的に取り締まる「新鎖国主義」を打ち出さねばならないだろう。
国境なき時代の経済理論が確立していないので、今日の経済環境を語るうえでも古典主義が幅を利かせてしまうきらいはある。だが、安倍首相が振りかざす「同一労働同一賃金」は、昔の教科書から聞き心地のいいスローガンを引っ張り出してきただけだ。ムリに実現しようとすれば企業も体裁を整えようとする。仕事内容が一緒だからという理由でキャリアも能力も度外視して、等しく低い賃金で統一されかねない。
古典的発想の強要は、経済の現場をますます歪めるだけである。
高橋乗宣
エコノミスト
1940年広島生まれ。崇徳学園高から東京教育大(現・筑波大)に進学。1970年、同大大学院博士課程を修了。大学講師を経て、73年に三菱総合研究所に入社。主席研究員、参与、研究理事など景気予測チームの主査を長く務める。バブル崩壊後の長期デフレを的確に言い当てるなど、景気予測の実績は多数。三菱総研顧問となった2000年より明海大学大学院教授。01年から崇徳学園理事長。05年から10年まで相愛大学学長を務めた。
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