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米国政府はなぜ北朝鮮との秘密接触をリークしたかー(田中良紹氏)
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24th Feb 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks
米国のケリー国務長官と中国の王毅外相が23日にワシントンで会談し、
北朝鮮の核・ミサイル実験に対する国連の制裁決議に「重大な進展」があり、
早期採択で一致したことを明らかにした。
両外相は「これまでのいかなる決議よりも強力になる」、
「核・ミサイル開発の前進を効果的に制限できる」と述べ、
強硬な制裁を求める米国に消極的な中国が歩み寄ったように見せた。
その一方でケリー国務長官は中国が主導する6か国協議再開の重要性を指摘、
また王毅外相は北朝鮮の非核化と同時に
朝鮮戦争の「休戦協定」に代わる「平和協定」を結ぶための米朝対話を行うよう
米側に提案した事を明らかにした。
これを見てフーテンは21日付ウォールストリート・ジャーナルが
「1月の北朝鮮の核実験を前に米朝は秘かに平和協定を巡る交渉を行っていた」と
報道した意図を改めて考えた。
ウォールストリート・ジャーナルは当初、米国側が交渉を持ちかけたと報じたが、
カービー国務省報道官は記者会見で「北朝鮮側から提案された」と否定し、
「慎重に検討した結果、核開発問題を議題に含めるよう要求すると、
北朝鮮がこれを拒否したため交渉は実現しなかった」と述べた。
これが22日に日本に伝えられ、ニュースを見たフーテンはオバマ大統領が
残された唯一の冷戦体制、すなわち朝鮮半島問題に手を付けるかもしれないと直感した。
ウォールストリート・ジャーナルの報道は米政権内部からリークされたと考えられる。
しかも米中外相会談の直前のタイミングでリークされた。
オバマ政権は秘かに中国と協働で南北朝鮮統一を構想しているのではと思わせたのである。
これまで南北統一は北朝鮮の非核化が前提と考えられてきた。
ところが今月の17日に王毅外相は訪中したオーストラリアのビショップ外相との共同会見で
「朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に切り替える交渉と核問題を並行して行う事を提案している」と述べた。
非核化が先ではなく、平和協定と並行の考え方を示したのである。
それを見ると中国は米国と北朝鮮との秘密交渉を知っていた可能性がある。
そして米国政府内部からウォールストリート・ジャーナルにリークがあり、
その内容の一部を否定する形で国務省報道官が秘密交渉の存在を認め、
次いで米中外相会談が行われた。そして両外相の北朝鮮制裁決議表明会見になったと考えられる。
今年に入ってから北朝鮮の「核・ミサイル実験」の後、
フーテンはそれぞれ「米国はとっくの昔から北朝鮮の核を容認している」と
「平和条約を求める北朝鮮と冷戦を終わらせたくない米国」という2本のブログを書いた。
世界の冷戦は終わってもアジアでは冷戦を終わらせない方が
米国にとって経済的利益になるというブログである。
朝鮮戦争がまだ終わっていない北朝鮮は冷戦の崩壊で旧ソ連の核の傘が消え、
自前の「核抑止力」を持たない限り、米国と平和条約を結ぶ交渉は出来ないと考えている。
そこで北朝鮮は核とミサイルの実験を繰り返すが、それは平和ボケした日本人を恐怖させ、
米国への依存度を強めさせる。
その結果、米国は日本に次々兵器を買わせて金を吸い上げることが出来る。
だから米国はアジアの冷戦を終わらせようとしない。
安倍政権の集団的自衛権行使容認はそうした米国の戦略への全面屈服であったとの内容である。
ところが今回の出来事はそれとは異なる動きが生まれた事を示した。
米中が連携してアジアの冷戦を終わらせようとするかのような出来事である。
しかしこれまで何度も指摘してきたように米国も中国も単純な国ではない。
これまでも二枚舌外交を繰り返してきた。
今回も北朝鮮と秘密接触を行いながら、
韓国には北朝鮮の脅威を口実に高高度ミサイル防衛兵器を買わせようとしているし、
日本にもミサイル防衛の新システム導入を迫っている。
それらはすべて米国の経済的利益となり、
かつ自衛隊も韓国軍も米軍指揮下のパーツ(部品)になるのである。
一方は中国敵視政策につながり、もう一方は中国との連携なしには実現しない。
その相容れない二つの道を米国は同時に追及している。
しかしそのどちらも、米国が中国を一目も二目も置く相手と見ている事を証明している。
そして日本と韓国は全く相手にされていない。
今回の米朝秘密接触の報道を受けて衝撃を受けているのは韓国である。
同盟国であるのに何の相談もなく頭越しで朝鮮戦争の終結が話し合われた。
米国は北朝鮮の提案を拒否したと発表したが、しかしそれをリークして報道させたのは、
米国がそちらの方向に各国を動かそうとする布石に見える。だから韓国メディアは騒いでいる。
ところが不思議なのは日本だ。なぜか騒がない。
昨年末には米国の強制によって韓国との間で「慰安婦問題」を決着させられ、
日米韓の結束を固めて中国と北朝鮮に対する構えを強化したが、
その裏側で米国はそれとは異なる道を中国と組んで追い求めていたのである。
それに全く反応しないのはなぜなのか。
かつてクリントン大統領は政権末期にレガシー(遺産)として南北朝鮮の統一を考えた事がある。
東西ドイツの統一で西ドイツが巨額の経済的負担を被る事になった事例を参考に、
南北朝鮮統一ではかつて植民地支配をした日本に統一に伴う費用を出させようという構想だった。
それは日本に相談したうえでの構想ではない。米国が勝手に考え日本に押し付けようとした構想である。
東アジアの主要国の一つであるはずの日本は、南北朝鮮統一を構想する事も、
中国を交えてアジアの安定化を構想する事も出来ず、ひたすら米国の言いなりになるだけで、
韓国と同様に米中が頭越しで決めた事に従うだけの国である。
冷戦が終わるまでは米国が舌を巻くほどの「絶妙の外交術」を駆使した日本が、
冷戦後は見る影もない国に成り果てた。「失われた数十年」とは経済だけの話ではない。
国家の外交も品格も失われて久しい。
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