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この国の野党は「野合」するしか能がないのか? 消費増税反対を打ち出しても、やっぱり民主党が勝てない理由
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47995
2016年02月22日(月) 高橋洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
■正直に過ちを認めればよいのに…
おおさか維新は、すでに「消費増税ストップ」と言った。共産党も同じだ。そして、ついに民主党が動いた。
「軽減税率撤回なければ消費増税反対」
2月19日、民主と維新が一致したようだ。増税の条件は、政府が導入予定の軽減税率の撤回と衆院議員定数の大幅削減。安倍晋三首相は19日の衆院予算委で衆院議員定数の10削減の実施を表明したが、これを不十分とした。
軽減税率も政府の導入予定のものに反対しているわけで、もっと素直に「三党合意を破棄するから、消費増税に反対」と言えばいいものを、何かが引っかかっている。
そもそも民主党の政権発足時には、まったく消費増税を考えていなかった。そうした発言をネットの上で探すには、外国メディアが便利だ。
たとえば、2009年5月の民主党代表選の時の話。
消費税引き上げ、岡田氏「4年間はない」・鳩山氏「議論する必要ない」(http://jp.reuters.com/article/idJPJAPAN-38041120090515?sp=true)
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ところが、野田政権になって、突如変節する。これについて筆者は、2012年1月22日付け本コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/31627)で、「マニフェストに書いていない消費税を上げる。書いていないことはやらないといいながら、やるのは、子どもでもおかしいとわかる」と書いた。
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はっきり言えば、野田首相が選挙を経ずして、当初の民主党政権構想にない、消費増税を決めたものだから、その取り消しが難しくなったわけだ。
三党合意に基づく、税制改革法( 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律〔平成24年8月22日法律第68号〕)第7条第1号イ、ロの概要は以下のとおりである。
一 消費課税については、消費税率の引上げを踏まえて、次に定めるとおり検討すること。
(イ)低所得者に配慮する観点から、番号制度の本格的な稼動及び定着を前提に、関連する社会保障制度の見直し及び所得控除の抜本的な整理と併せて、総合合算制度、給付付き税額控除等の施策の導入について、所得の把握、資産の把握の問題、執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討する。
(ロ)低所得者に配慮する観点から、複数税率の導入について、財源の問題、対象範囲の限定、中小事業者の事務負担等を含め様々な角度から総合的に検討する。
素直に読めば、軽減税率も検討したうえでの三党合意なのだから、民主党の消費増税反対は「こじつけ」である。だから、「軽減税率撤回なければ反対」というわかりにくい表現になっている。
いっそのこと、「野田政権の時に、選挙を経ずに、マニフェストに書いていない増税を財務省の口車に乗せられてやってしまい、すみませんでした」と正直に言ったほうがいい。
■微妙な首相の答弁
いずれにしても、ここに来て、急に民主党が方向転換したのは、19日の衆院予算委員会での安倍首相の答弁がかなり微妙だったからだろう。
まず、おおさか維新の松浪健太氏の質問だ。消費増税した場合としない場合の試算である。ベースになっているのは、政府の中長期の経済財政に関する試算である。
まず、「2017年4月から消費増税しても、経済成長率があまり落ちない」という2016年1月21日の政府試算について、である。松浪氏は、2014年4月からの消費増税の直前、2014年1月20日の政府試算でもやはり「消費増税でも経済成長率は落ちない」として計算していることを指摘した。
これはとてもいい指摘である。しかし、2014年4月からの消費増税で実際に経済成長率が落ちたわけで、それと同種の計算を、今度は2016年1月21日の政府試算について、行っている。これが、2017年4月に消費増税をした場合の経済成長というわけだ。
同時に、2017年4月に消費増税をしない場合として、2016年1月21日の政府試算の増税後の経済成長率が増税時から生じるとしている。これが2017年4月に消費増税をしない場合の経済成長というわけだ。
これらの質問素材はいい。しかし、これを石原伸晃・経済再生相に質問したのは、戦略ミスである。この質問は、「増税して経済を悪くすると元も子もない」と何度も国会答弁している安倍首相に行うべきだった。
石原経済再生相は、計算経緯も知らないので、役人答弁を読むだけだった。それもかなり適当に答弁しているが、何か堂々と見えた。
松波氏の試算結果は、安倍首相の「増税して経済を悪くすると元も子もない」と定性的には同じ方向なので、もし安倍首相が否定するなら、どのような数値なのかと聞くこともできたはずだ。
その点、松波氏の後に質問した小沢鋭仁・改革結集の会会長のほうが一日の長があった。小沢氏は、資料は一切使わず、安倍首相が国会で答弁した「リーマンショックのような事態がない限り、消費増税する」という発言と、従来から発言している「増税して経済を悪くすると元も子もない」の関係を質問していた。
「リーマンショックのような事態」と「増税して経済を悪くすると元も子もない」の間では明らかに差がある。小沢氏は、後者のように考えればいいと言っていた。
松波氏の試算結果と小沢氏の安倍首相への質問力があれば、かなり安倍首相の本音を引き出せたはずだ。
このほかにも、世界で政策を連係するとか、かなり財政支出と消費増税スキップを意識している発言があった。これをみて、民主党では消費増税反対方針を出したのだろう。
■それでも民主党に勝ち目はない
ただ、仮に、現時点で総選挙があったとして、民主党はどうだろうか。とてもではないが、勝てない。
本コラムで繰り返して述べているように、まず雇用分野の政策で民主党は勝てていない。このあたりは、2015年12月21日付け本コラム「民主党は雇用政策のキホンすら知らないのか…」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47022)を見てもらいたい。なお、就業者数と倒産件数を再掲しておこう。
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しばしば、民主党は実質GDPの伸び率はよかったというが、これは、民主党が仕掛けた2014年4月からの「消費増税爆弾」のおかげである。
消費増税爆弾は、安倍政権下の経済に大きな打撃を与えたので、実質GDPは確かに伸びなかったが、名目GDPはかなり伸びている。民主党時代に名目GDPが低下傾向であったのと、好対照である。
21日のBS朝日の番組で、金子勝・慶大教授と議論する機会があった、同氏はアベノミクスを批判していたが、雇用では非正規が増えただけという民主党と同じことを言っていた。最近では、予想通り正規化が進んできたと言ったら、金子氏は、雇用ではなくインフレ率が達成していないと話題を変えた。
金子氏は、岩田日銀副総裁が、2年間で目標達成できなければ辞めるといったのだから、辞めるべきと指摘した。これに対して、筆者は、失業率が下がっていれば物価は上がらなくてもたいした問題でないと反論した。
日銀が、インフレ目標を定めているのは、雇用が重要だからで、雇用と逆の関係にあるインフレ率で目標を定めているだけだ。就業者数が増加して失業率が完全雇用の近くまで低下する方向なら、別にインフレ率が上がらなくても問題ない。
なお、インフレ率も、食品とエネルギー抜きのコアコアなら、0.8%(2015年12月)とまずまずである。
このように、民主党の言いぶりと同じ金子氏に反論するのは、データからかなり楽だ。それが素直に、内閣支持率と自民党支持率に出ている。
■「青木率」の推移
2014年11月10日の本コラム「解散するなら「今でしょ」! 「青木率」から分析する自民党が勝つためのタイミング」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41027)で、筆者は解散日やその理由などを予想し、同時に青木率(=政党支持率と内閣支持率)から自民党勝利の予想をしている。
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そこでの分析に、新しいデータを入れてみよう。青木率の推移は以下のとおりだ。
まだ、高い水準を維持している。過去の総選挙との関係は以下の通りになる。
かりに現時点で解散総選挙すると、自民党は270〜280議席程度を獲得できるだろう。
その対抗策として、5野党は党首会談で
1.安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を共通の目標とする。
2.安倍政権打倒をめざす。
3.国政選挙で現与党及びその補完勢力を少数に追い込む。
4.国会における対応や国政選挙などあらゆる場面でできる限りの協力を行う。
を決めたという。安保法制しか共通点はない、これでは野合である。このほかに、消費増税ストップくらいは出てくるだろうが、安倍政権も同じように対抗するはずで、経済政策で対抗できない。
しかも、2月8日付け本コラム「国際社会はいま、北朝鮮をどう見ているか」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47808)で書いたように、朝鮮半島は有事一歩手前の状況なのに、安保法制廃止とは冗談としか思えない。
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〔付記〕本コラムをまとめた新著『数字・データ・統計的に正しい日本の針路』が発売された。過去の予測はそれほど外れていないと思う。これからの未来を見るために、参考にしていただければ幸いである。
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