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右往左往のアベノミクスが再び路線転換へー(植草一秀氏)
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16th Feb 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks
昨日2月15日、昨年10‐12月期のGDP統計が発表された。
前期比年率1.4%のマイナス成長になった。
事前予想通りのマイナス成長になったが、マイナス幅は事前予想を超えた。
アベノミクス相場が始動したのは2012年11月14日である。
2012年10−12月期から2015年10−12月期までの13四半期のうち、6四半期がマイナス成長になった。
経済を浮上させたと自画自賛する安倍晋三首相だが、現実のデータはこの自画自賛を否定している。
第二次安倍政権が始動してから実現した事実は
円安と株高
である。
8664円の株価が20868円にまで上昇した。
しかし、これは上場企業の企業収益の増加を反映したもので、日本経済全体を反映するものではない。
かつては、株価が経済全体を反映することが多かった。
経済の浮き沈みと株価の浮き沈みが連動していた。
しかし、今回は違う。
ここにアベノミクスの本質が表れている。
経済全体は超低迷を続けるなかで、大企業の企業収益だけが拡大し、
上場企業の株価だけが上昇したというわけである。
安倍首相は労働者の賃金も増えたと自画自賛するが、
これも大企業の正規社員の所得が増えたことを言っているに過ぎない。
中小企業庁が示す日本の企業数412万社のうち、大企業は12000社しかない。
東証1部上場企業は1942社しかないのであり、企業数全体の0.05%でしかない。
労働者の4割は非正規労働者である。
国税庁の公表数値によると、正規労働者の年収平均は471万円であるのに対し、
非正規労働者の年収平均は170万円に過ぎない。
日本社会全体の、本当に上澄みの上澄みの部分だけが浮上しているのであって、
大半の国民はアベノミクスによって下流に押し流されているのだ。
昨年10−12月期のGDP統計の特徴は中身の悪さにある。
実質GDP成長率は前期比年率でマイナス1.7%になった。
需要項目別の成長率を見ると、
民間最終消費支出 前期比年率 −3.3%
民間住宅投資 前期比年率 −4.8%
国内民間需要 前期比年率 −2.4%
になった。
景気を決定する核心である個人消費が大幅に下落したのである。
暖冬で季節消費が伸びなかったこともあるが、最大の要因は所得環境の悪さである。
大企業の利益は増えたが、国民の所得はまったく増えていない。
昨日は先週末のNY株価上昇の影響を受けて日本株価が上昇した。
想定通りの動きである。
株価は一気に急落したから、急落後の反動高はあるだろう。
しかし、こうした短期の変動とは別に、中期の変動の見極めが重要である。
アベノミクス下の2013年から2015年の3年間、日本経済は停滞を続けたが、株価は上昇した。
それは、円安とインフレ誘導が大企業の利益を増大させたからである。
円安の進行なくして日本株価の上昇はあり得なかった。
しかし、この環境が変化している。
為替変動の基調が円安から円高に転換していると考えられるのだ。
円高に転換している最大の理由は、日本円が円安に振れすぎたためである。
振り子の振動と同じように、一方向に大きく揺れれば、必ず反対方向に逆戻りする。
この状況を金融政策の対応だけで対処することに無理がある。
結局、安倍政権は財政政策の軌道修正を迫られることになる。
すでに、安倍政権は追加的な経済政策発動の検討に着手した模様である。
政策はブレまくりなのだ。
アベノミクスは財政金融政策発動と成長戦略の組み合わせである。
2013年は財政金融政策を総動員して日本経済を浮上させた。
この日本経済の成長を維持すればよかったのである。
他方、成長戦略は日本経済の構造を変える施策である。
構造を良い方向に変えるのであるなら是認されるが、悪い方向に変えるのなら、否定されるべきものである。
アベノミクスの成長戦略は、大企業収益の拡大を目指すもので、
これが、労働者一般の処遇悪化と表裏一体になっている。
安倍政権は大企業の利益が拡大すれば、
これが一般労働者の所得増大につながると説明してきたが、そのような現実は観察されていない。
アベノミクスの成長戦略そのものが、労働コストの削減を後押しするものである以上、
このような説明は成り立ちようがなく、極めて悪質な粉飾であると言わざるを得ない。
マクロの経済政策では、財政金融政策を適正に活用して、
日本経済の自立的な成長軌道を誘導することが正しい。
2013年の経済政策には、この面での正しさがあった。
しかし、このポリシーミックスを2014年には破壊してしまった。
消費税大増税に突き進み、ようやく緒についた日本経済浮上の腰を折ってしまったのである。
アベノミクスと表現すると、
オリジナリティーのある独創的な経済政策体系であるかのようなイメージを生み出すが、
実際には普通の財政金融政策構造政策の組み合わせに過ぎない。
このうち、構造政策に問題があることをすでに指摘した。
構造政策は、本来、弱肉強食を目指すべきではなく、共生を目指すべきだ。
構造税策とは分配政策でもある。
経済活動の結果得られる果実を、経済主体にどのように配分するか。
これが分配政策である。
アベノミクスの成長戦略は生産の果実の多くを大資本に集中させようとするものであある。
その結果として、日本はいま、世界有数の格差大国に移行している。
いま求められている分配政策は、生産の果実を、とりわけ低所得者層に手厚く分配することである。
かつて日本は一億総中流と言われた。
きわめて分厚い中間層が存在した。
ところが、これが世界有数の格差社会に移行した。
この格差拡大が日本のさまざまな問題を生み出している。
成長戦略という名の構造政策を根本から刷新することが求められている。
マクロ経済政策は構造政策と区別して考察するべきである。
日本の失われた26年を振り返るとき、日本経済の長期低迷をもたらした最大の要因は
財政政策のブレ
にある。
政策総動員で経済を浮上させるところまでは良い。
しかし、経済が浮上すると、きまって財政当局が主導して政策逆噴射を実行する。
財務省にとっては消費税大増税が悲願である。
税収を広く大衆からむしり取るのが消費税である。
財務省の行動原理は利権の拡大である。
法人税減税は財務省の利権拡大の一つのツールである。
所得税を軽減することは、富裕層に対する恩恵の付与になる。
大資本と富裕層を優遇し、一般庶民を踏みつけにする。
これが財務省の利権拡大行動の裏側なのだ。
本来は、景気が浮上したときに、浮上した経済を安定飛行に移行させることに専念するべきなのだ。
経済成長が持続すれば税収も増大する。
この税収増こそ財政健全化の最大の源泉になる。
ところが、財務省は仕組みとして庶民に重税を強制する消費税で税収の大半を賄おうと企んでいる。
経済が浮上し始めると、財務省が主導して緊縮のブレーキを踏む。
この結果、せっかく浮上した経済が再墜落してしまうのである。
これが「失われた26年」を生み出した主因である。
2013年に政策総動員によって日本経済を浮上させた。
この流れを維持すべきだった
しかし、2014年に大増税を強行実施して日本経済を撃墜してしまった。
2015年は増税先送りを決めたところに原油価格暴落が重なり、景気転落を回避できた。
ところが、2016年は再び超緊縮財政に転じている。
さらに、2017年4月の消費税率10%が予定されている。
この政策逆噴射が日本経済を再転落させてしまう可能性は極めて高い。
安倍政権下の財政金融政策もブレまくっている。
これが日本経済の低迷持続の主因になっている。
こうした状況から、2016年は安倍政権が財政政策運営の転換を迫られることになる可能性が高い。
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