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「1・17」と「3・11」の間で考える大地震への危機管理力を競え
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/column/2016/02/28/post-687.html
サンデー毎日 2016年2月28日号
倉重篤郎のサンデー時評 連載88
北朝鮮が飛ばしたのはミサイルか、ロケット(人工衛星)か。
そんな疑問を反芻(はんすう)している。各メディアは大見出しで一斉に「ミサイル」と断定した報道をしている。というより、書き出しの一文に「『ロケットと称した』ミサイル」と入れてはいるものの、記事の99%はミサイル扱いである。
一方、北朝鮮側は一貫して人工衛星と呼び、発射時間、場所、方向、落下海域もすべて公表、実際に地球の周回軌道に達したようだ。つまり、その発表形式、機能発揮面では限りなくロケットに近い。
寝ぼけたことを、と怒られるかもしれない。何をしでかすかわからない暴君の独裁国家の言い分を採用するのか。今回もその意図は、弾道ミサイル試用の技術開発でありその誇示にある。すでに数発の核を保持、運搬手段の技術が宇宙にまで達すれば、米国ですらその標的になるではないか、と。
その通りである。だからこそ各メディアとも「ミサイル」報道をしている。ただ、割り切れないものも残る。平和目的のロケットも戦争目的の弾道ミサイルも発射、推進、制御技術は同一だからである。載せるものが違うだけである。
歴史を振り返れば、戦争目的も平和目的も技術の革新は紙一重である。インターネットもロケットも元はといえば、軍事技術だ。軍事を民生化し、民間技術を軍事利用する。この出し入れ自由の技術革新を好き放題にしてきた先進各国が北朝鮮にだけはその理屈を許さない、というのもいかがか。
そんな思いで各紙を読み比べていたら『産経新聞』(8日付朝刊)に掲載された各党談話の中で、唯一社民党が「ロケットの発射」とし、「いたずらに『北朝鮮の脅威』をあおり、ミサイル防衛システムの整備・強化や『南西諸島防衛』名目の自衛隊の沖縄展開に利用することは、北東アジアの緊張関係をかえって増幅しかねない」と指摘していた。
産経の掲載意図は別にして、世の中が北朝鮮けしからん、もっと制裁を、で一色に染まった中で、貴重な少数意見と受け止めた。
◇国民の命と生活の安全 北朝鮮の脅威より、天災対策に向き合え
北朝鮮の脅威とは、その脆(もろ)さ、弱さの裏返しである。経済規模、核保有数で圧倒的に優位な日米同盟にとって、小国のなけなしの脅しは本質的な脅威なのだろうか。軌道上から落下するかもしれない小物体に対し、ものものしく地対空ミサイルを配備し、NHKが朝から晩まで逐一その挙動を報道するほどのものなのか。北の独裁者を喜ばすだけではなかろうか。
むしろ、安倍晋三政権は防衛費増額の応援団を得、安保法制は正当性の衣をまとわされ、解決しない拉致問題は免罪されるだろう。それでいいのだろうか。国民の命と安全を守るという政治の役割からすれば、阪神大震災(1月17日)と東日本大震災(3月11日)の間に位置するこの時期にもっと議論すべきことがあるのではないか。
寺田寅彦の『天災と国防』という一文にこんなくだりがある。
「国家の安全を脅かす敵国に対する国防策は現に政府当局の間で熱心に研究されているであろうが、ほとんど同じように一国の運命に影響する可能性の豊富な大天災に対する国防策は政府のどこでだれが研究しいかなる施設を準備しているかはなはだ心もとないありさまである」
国防の重要性を否定するものではない。だが、戦争以上に発生確率の高い天災対策に政治がきちんと向き合っているのか。阪神、東日本という直近2大地震に対する検証は十分なされたのか。必ずや発生する首都直下型地震や東海、東南海、南海大地震への備えにその教訓は十全に生かされるのか。
とても十分とは言えません、と言うのが平野達男参院議員である。民主党政権で防災、復興担当相だった。問題点を二つ指摘した。
一つは、体制の問題だ。例えば、首都直下型地震が週末ないし夜間に発生した時、各省庁のしかるべき担当の役人がただちに集結できる住環境になっていない。民主党政権時に都心の官舎を廃止したためだ。人手がなければ情報収集も発信もできず、それは致命的に初動対応を遅らせる。官舎の位置を見直し少なくとも幹部は歩いて出勤できるようにすべきだ。
防災担当相の役割が軽視されている。専任の大臣を置き(ちなみに現在の河野太郎氏は国家公安委員長、消費者及び食品安全担当相、規制改革担当相も兼務)、役人数も現行の80人程度では足りない。せめて倍増させるべきだ。
二つ目は、原発避難者対策だ。
3・11では、津波被害者へのケア、体制作りは比較的早かった。抜け落ちていたのは、15万人といわれる原発被災者、避難者に対する対応だった。実は、発災後2週間はその存在に気付かなかった。
いきおい、原発避難者への聞き取り調査も遅れた。発災4年後の15年になってそれなりの規模の調査結果が発表されたが、回収率が悪いうえ、総括ができていない。原発再稼働を念頭に調査、発表を意図的に遅らせた疑いすらある。
避難者には、十数カ所移動した人がいた。その中で体力を失った人もおり、結果的に災害関連死を多く生み出した。特に病院に入院していた人たちは深刻だった。
原発再稼働のために策定された住民避難計画には、そんな福島の教訓がきちんと反映されているとはいえない。最初に再稼働ありき、その範囲内の避難計画の立案、という本末転倒になっている。
現政権が大震災に対してどれだけの危機管理能力を有しているのか、私は不安である。3・11を与党として乗り切った民主党はその経験と反省の上に立ち、大震災時のシミュレーション的な議論を国会で提起したらどうか。明日の家族の命、生活のため、国民的関心が高まるのは必至である。
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