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TPP(環太平洋連携協定)協定をめぐって、開会中の通常国会で審議が本格化する。元農水大臣で、弁護士の山田正彦氏(TPP交渉差し止め・違憲訴訟の会幹事長)に、TPP協定案の問題点や、加盟12カ国の批准の見通しなどについて話をうかがった。
■TPP差し止め違憲訴訟が広がる、第3次提訴へ
――重大な事態が起きているにもかかわらず、マスコミの報道で知らされていないことが多い。最後に、亡国、売国の事態を止めるために、どうしたらいいか。
山田 私たちは、前日本医師会会長の原中勝征さんが代表となって、「TPP交渉差し止め・違憲訴訟」を提訴している。 第1次、第2次訴訟合計1,582人が原告に参加している。第2回口頭弁論が東京地裁で2015年11月に開かれ、傍聴者が400人くらい集まった。次回 の第3回口頭弁論は、2月22日に開かれる。第2回では裁判官が立証計画を出すように求め、4回目の口頭弁論期日も4月に決まっている。追加提訴の原告の 応募者が350人くらいになっており、500人くらいまで増やして第3次訴訟を提訴する予定だ。詳しくは、「TPP交渉差し止め・違憲訴訟」のホームペー ジを見ていただき、TPPを差し止めるため、1人でも多くの人に原告になってほしい。
■米国、カナダ…批准は進まない
――批准の動きはどうですか。
山田 TPPをめぐる議論は、1月4日に開会された通常国会の場で始まる。日本ではあたかも決まったかのように報道されているが、外国ではまったく違う状況だ。
年末に、米国の弁護士のトーマス加藤さんが来て話を聞いたが、「山田さん、米国ではTPPは批准されないよ」と語っていた。大統領選挙の予備選が2月から始まる。2月上旬に各国首脳が集まって、協定書に署名することになるだろうが、米国が批准できる見通しはない。
米国大統領選挙で、共和党の候補がまだ16人いるが、トランプもクルーズもブッシュもみんなTPPに反対で、賛成しているのは2人しかいない。民主党は、 ヒラリー・クリントンも、サンダースもともにみんな反対だ。マッコーネル院内総務が年末に「16年中の批准は難しい」と発言した。大統領選挙が終わって次 の議会が始まるのは、17年1月20日以降だから、それまで動かない。院内総務というのは、大統領、副大統領、下院議長が死んだら4番目に大統領になる人 だ。そういうポジションにあるマッコーネルがあり得ないと言っている。
トーマス加藤さんらワシントンの弁護士やパブリックシチズンからの情報で も、大統領選挙が終わってからも米国民は労働総同盟のトラカム議長も、環境団体も猛反対するだろうという。労働総同盟や環境団体は、民主党の有力な支持基 盤だ。共和党の中も、国の主権が損なわれるISD条項が問題だと言っているし、各州議会も反対の決議をしている。
米大統領に通商交渉の権限を委 ねるTPA法案では賛成に回った共和党のハッチ上院議員・上院財務委員長は、今回のTPP合意を批判している。TPAでは、通商交渉権限をすべて米大統領 に与えたわけではなく、まだ米国議会が権限を持っている。下院議員の選挙も予定されている。トーマス加藤さんは、「今年は下院議員の総選挙もあり、反対派 の議員はこのところ増えている。米国議会では、来年も批准されることはない」と言う。米国議会で、このまま17年に批准されることはないだろう。
カナダもトルドー政権は最初の一歩から見直すと言っている。だから簡単には批准できない。昨年10月、TPP閣僚会議が開かれたアトランタで会った、カナダの日本で言えば連合の会長の立場にある人物から「カナダは急激に反対運動が盛り上がっている」とお聞きした。
今一番反対が盛り上がっているのは、ペルーとチリ、マレーシアだ。マレーシアは貿易大臣が、会議の途中でアトランタから帰ってしまった。協定文書ができあがった時点で、国民と議会に内容を知らせて、議会の承認がないと署名しないと述べている。
■批准できないのに、日本だけ急ぐな!
山田 そういうことを考えると、各国でいよいよ審議が始まるというときに、各国とも反対が起こっているから、審議は大変で批准は容易ではない。各国 が協定に署名しただけで決まったと思ってはいけない。これから大筋合意した内容を、各国で国内議論に入っていくところだから。それを、日本だけがあたかも 決まったかのように、いち早く批准しようとしている。
だから、「批准できないだろうに、日本だけ急ぐな!」というのが結論だ。国内法と違って、 TPP協定は条約なので、国内法よりも上位にある。国内法がTPP協定によって、すべて書き換えられてしまう。国の主権、食の安全、農業、生存権など基本 的人権が侵される。私は今、「バカなことをやるな」と言って、全国を回っている。一人ひとりの声と力は小さくても、声と力を合わせて、なんとしてもTPP を阻止したい。
TPP批准は止められる〜山田正彦元農相に聞く(5)了 NETIB-NEWS
その前編、(1)〜(4)は、
TPP批准は止められる〜山田正彦元農相に聞く(前)すでに遺伝子組み換え種子の稲がモンサントと住友化学の間で開発されている
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