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甘利疑惑。世耕官房副長官発言見れば安倍政権早くも幕引き図る。首相もぶれていないという。こんなことをしたら、日本は法治国家ではないことを一段と証明。−(孫崎享氏)
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25th Jan 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks
読売新聞(YOMIURI ONLINE) 1 月25 日 (月) 版は
『「わなを仕掛けられた」…甘利氏を擁護の声も』の標題の中で、次を報じた。
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「 政府・自民党から23日、違法献金を受け取ったと報じられた甘利経済再生相を擁護する発言が相次いだ。
世耕弘成官房副長官は長野市内での講演で、
2月4日にニュージーランドで行われる環太平洋経済連携協定(TPP)の署名式に、
甘利氏が予定通りに出席するとの見通しを明らかにした。
世耕氏は「甘利氏は、後ろ指をさされることはないと言った。
きちっと説明責任を果たしてもらえると思う。安倍首相はまったくぶれていない。
『淡々と事実関係を説明した上で、仕事をやってもらう』との立場だ」と強調した。」
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滅茶苦茶な論である。
本人は「後ろ指をさされることはないと言った」、
「説明責任を果たす」そしたら罪は消えるというのだからびっくりする論だ。
ここで「安倍首相はまったくぶれていない」という事だから、擁護の方針を決めたのであろう。
世耕弘成氏は官房副長官として安倍内閣の広報に責任を持っている人物と言われているだけに、
発言の信ぴょう性は高い。
私達は今一度、ハフポスト掲載、郷原信郎氏の論点を想起したい。
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(事実関係について)
報じられている疑惑の中身は以下のようなものだ。
甘利大臣の公設第一秘書が、URの道路用地買収をめぐるトラブルに関して、
UR側に補償金を要求していた業者から依頼を受け、UR側との交渉に介入し、
URに2億2000万円の補償金を支払わせ、2013年8月に、その謝礼として500万円を受け取った。
それに加え、甘利大臣自身も、業者と直接会って、
URと業者との産業廃棄物処理に関するトラブルについて説明を受けて
補償交渉に関する対応を依頼され、同年11月に大臣室、
2014年2月には神奈川県内の事務所で、現金50万円ずつ計100万円を直接受け取った。
その後、別の秘書(現・政策秘書)が環境省の課長と面談し、
URの担当者と面談するなどして、産廃処理をめぐるトラブルに介入。
その秘書は業者から多額の接待を受け、
URの監督官庁である国交省の局長への「口利き」の経費などと称して
合計6百万円以上を受領するなどしていた。
(あっせん利得処罰法について)
「あっせん利得処罰法」は、国会議員等の政治家が、行政機関等に「口利き」をして
金品を受け取る行為を処罰する法律だ。政治家が「口利き」をし、
その見返りとして「報酬」を受け取るという行為は、
政治家と行政との腐敗の象徴としてかねてから批判されてきたが、
2000年に中尾元建設大臣が、
公共工事発注の口利きの見返りに建設会社から賄賂を受領して
受託収賄事件で逮捕されたのを契機に、改めて国民から批判が高まったことを受け、
2002年に法律が制定された。
(今回の事件が犯罪を構成するか)
あっせん利得処罰法1条1項は、
「衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体の議会の議員若しくは長が、
国若しくは地方公共団体が締結する売買、貸借、請負その他の契約又は特定の者に対する
行政庁の処分に関し、請託を受けて、その権限に基づく影響力を行使して
公務員にその職務上の行為をさせるように、又はさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき、
その報酬として財産上の利益を収受したときは、3年以下の懲役に処する」と定めており、
2項で、「国又は地方公共団体が資本金の二分の一以上を出資している法人」の
「役員又は職員」に対しての行為も同様としている。
また、同法2条は、「衆議院議員又は参議院議員の秘書」が同様の行為をおこなったときは
2年以下の懲役に処するとしている。
URは国交省が100%出資している独立行政法人であり同法2項の「法人」に該当すること、
甘利大臣は衆議院議員であり、その秘書が、2項の「衆議院議員の秘書」に該当することは明らかだ。
問題は、
@秘書のURの職員に対する行為が、法人の「契約」に関するものと言えるか、
A「請託」があったと言えるか、
B「権限に基づく影響力を行使」したと言えるか、である。
@については、秘書が関わった問題は、
URの道路用地買収をめぐる業者との間の補償交渉であり、公共工事などとは違い、
契約の内容が具体化しているものではない。
しかし、補償交渉の結果、URと業者との間で合意が成立すれば、それは契約であり、
その合意が業者にとって有利なものとなるよう、
URの役職員に対して働きかけが行われたのであれば、「契約」に関するものと言うことができるであろう。
Aの「請託」とは「一定の行為を行うよう又は行わないよう依頼すること」である。
請託事項は、その案件の具体的事情に照らして、
ある程度の特定性・具体性を要するものでなければならない。
「請託を受け」とは、単に依頼されたという受身の立場では足らず、
その職務に関する事項につき依頼を受け、これを承諾したことが必要である。
記事によれば、甘利大臣の秘書は、実際にURの職員と面談したりしているのであるから、
URの役職員に補償に関する「職務上の行為」を行わせるよう働きかけるという「具体的行為」を、
業者が依頼したことは明らかであろう。
Bについても、ここでの「権限に基づく影響力の行使」というのは、
「大臣としての権限」ではなく、「国会議員の権限」に基づくものでなければならないが、
政権与党の有力閣僚である甘利大臣は、
国会議員としても、予算や法案の審議や評決に関して大きな影響力を持っていることは
明らかであり、その秘書も、それを十分に認識した上で活動しているはずなので、
UR側への働きかけが「権限に基づく影響力の行使」であることは否定できないであろう。
甘利大臣についても、「権限に基づく影響力」を行使して
UR側に一定の職務行為を行うことの「請託」を受け、
現金をその報酬として受領したのであれば、あっせん利得が成立することになる。
記事では、甘利大臣は、業者とURとのトラブルに関して、資料に基づいて説明を受け、
同席した秘書に、「これ(資料)を、東京の河野君(現・大臣秘書官の河野一郎氏)に預けなさい」
と指示したとされているが、大臣自身がその後、実際に業者からの依頼に基づく行為、
例えば、自ら行政庁やURに働きかけたり、
秘書へ指示するなどの行為を行ったのか否かは明らかではない。
また、「請託」というのは、依頼する行為が、何らかの具体性を持ったものであることが必要であり、
漠然としたものでは「請託」とは言えないというのが一般的な理解であろうが、
記事を前提にしても、業者側が大臣に具体的にどのような行為を依頼したのかは明らかではない。
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いずれにせよ、郷原氏は「議員や秘書がURとの契約に関して、
業者からの依頼を受けて、URとの契約に関して、業者から依頼を受けてUR側に働きかけ、
報酬を受けたとすれば違反が成立します」と述べている(週刊文春)
「わなを仕掛けられた」か否かは本質ではない。
誰が「わなを仕掛けた」といいたいのか不明であるが、わながあったから犯罪がなくなるものではない。
郷原氏は次を記載した。
「何と言っても焦点となるのは、現職大臣やその秘書について、
検察当局による犯罪捜査がどのように行われ、どのような刑事処罰に発展するのか」
1. あっせん利得処罰法が存在する、
2. 今回の事件は、甘利氏本人および秘書がこれに違反した可能性は高い
3. それでも警察、検察が捜査をしないとすれば、
もはやこの機関は法治国家の機関として機能するのではなく、
権力擁護の機関であることを自ら示すこととなる。
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