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安倍政権に交錯する「二つの政治」 2016年政治決戦の行方は?
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2016.01.02 13:00 THE PAGE
安倍晋三首相は二度目の首相就任から2016年は4年目の政権運営となります。今年は例年より早い通常国会の召集から始まり、夏には「衆参ダブル選」になるのではとの憶測もある参院選が控えています。「官邸1強」と呼ばれる状態が続く中、野党側には統一候補を模索する動きもありますが、昨年末に大阪市長を退任した橋下徹氏は安倍首相と会談し、独自の動きを見せています。政治学者の内山融・東京大学教授に2016年の日本政治を展望してもらいました。
■早い通常国会召集、衆参同日選はある?
[写真]今年は例年より早い1月4日召集となる通常国会。衆参同日選の思惑があるとも言われる。写真は昨年の通常国会(ロイター/アフロ)
本年の日本政治について、1月に召集される通常国会や、7月に予定されている参院選を中心に、先行きや課題を展望してみたい。
通常国会は、三が日明けの4日に召集される。このような早い時期の召集は例年にないことであるが、参院議員の任期切れを前にして、審議時間を十分に取る必要があるのに加え、選挙日程にフリーハンドを確保する意図があるようだ(細かい説明は煩雑なので省くが、公職選挙法の規定により、この日よりも遅く召集すると選挙日程が固定されてしまう)。会期末の衆院解散による衆参同日選への思惑があるともいわれている。
この通常国会で審議される案件としてまず注目すべきなのは、2015年度補正予算と2016年度本予算である。3.3兆円規模の2015年度補正予算は、「一億総活躍社会」のための施策や、環太平洋経済連携協定(TPP)の発効に向けた農業対策などを内容としている。低所得の年金受給者に3万円を配る給付金の予算も盛り込まれているが、これについては、参院選を前にした「バラマキ」だとの批判が野党などから出されている。
2016年度本予算は、総額96.7兆円と過去最高の予算規模である。高齢化の進展に伴って社会保障費が32兆円弱とやはり過去最大となったことなどのため、この金額となった。一方、景気回復による税収の伸びのため、国債依存度(予算における借金の割合)は前年度より改善して35.6%となった。リーマンショック直後の2009年度には50%を超えていたのを考えると大幅な改善であるが、それでも他の先進国と比べるとまだ高い。米国は11.9%(2016年度)、英国は6.5%(2014年度)、ドイツに至っては0.1%(2015年度)である。財政健全化への道筋は依然として不透明だといわざるをえない。
■新予算案にみる「二つの政治」
これらの予算の内容や策定経緯を見ると、日本政治の底流にある「二つの政治」の関係が新たな局面を迎えているように思われる。「二つの政治」とは、20世紀後半の主流だった「従来の政治」と、21世紀に入ってから目立ってきた「新しい政治」のことである。
「従来の政治」とは、農協や医師会、後援会、労働組合などといった各種団体の組織力に支えられた政治である。かつての自民党政権は、支持組織から票や献金を得る一方で、見返りに保護や利益分配を行っていた。そこでの政策の形成は、族議員や各省官僚などが中心的な役割を担うボトムアップ的なものであった。
一方、小泉政権(2001年〜2005年)の頃より、組織されていない有権者、特に無党派層の支持を基盤とする「新しい政治」が優勢になってきた。そこでは、首相主導のトップダウン的な政策形成が行われ、政策の内容も、規制緩和や歳出削減などの構造改革路線が中心となった。
安倍政権は、「官邸一強」といわれるように、トップダウン型決定という点で「新しい政治」の典型である。「岩盤規制の打破」や農協改革といった政策を掲げてきたこともそれと軌を一にしている。ところが、今回の一連の予算では、「従来の政治」の要素がかなり入り込んでいるように見える。
2016年度予算では、診療報酬本体のプラス改定や農業予算の積み増しなどに、首相官邸の意向が強く働いたと聞く。消費税の軽減税率対象品目の決定も官邸主導で行われた。注意したいのは、これまで「官邸主導」の手法は、一般に、党内や支持組織の抵抗が大きい構造改革路線の政策を進めるのに活用されてきたことである(小泉政権の郵政民営化が好例である)。
一方、今回の予算で官邸が主導した方向は、支持組織の利益に沿う歳出拡大路線である。財政健全化や構造改革の路線が重視されたようには見えない。
要するに、今回の予算で見る限り、上記のような、<「従来の政治」=ボトムアップ型政策決定=組織志向で保護・分配中心の政策>対<「新しい政治」=トップダウン型政策決定=構造改革路線の政策>という構図が崩れてきている。「新しい政治」のトップダウン型手法と、「従来の政治」の組織志向・歳出拡大路線とが結びつき、両者の交錯が生じているのである。
なお、2017年4月に予定されている消費税10%への引き上げが再び見送られるとの観測も一部でなされている。財政健全化への展望をどのように描くのか、政権の対応を注意して見ていきたい。
■橋下氏の動向と改憲に向けた動き
[写真]安保法案採決へ攻防が続く中、国会前で行われたデモで演説する民主党・岡田克也代表(Duits.co/アフロ)
今国会では、予算のほかにも、軽減税率関連法案やTPP関連法案など重要な案件が並ぶ。新旧両方の政治が入り交じる中、国会審議での与野党間の議論を通じて、安倍政権がどのような方向へ向かおうとしているのか明らかにされるべきだろう。
7月に行われる予定の参院選では、野党間協力の行方が鍵となる。前稿(「民主主義」が問われた一年 2015年の日本政治を振り返る)でも指摘したように、民主政治が健全に機能する上では、与野党間で活発な競争が行われ、有権者に十分な選択肢が提供されていることが重要である。しかし、強大な与党に対して野党陣営が分裂している現状は、ある種の不完全競争であり、有権者に十分な選択肢が提供されている状態とはいえない。
[写真]昨年12月、大阪市長を退任し「政界引退」した橋下徹氏は安倍首相と会談。与党側の意向次第では憲法改正も参院選の争点になる可能性がある(Natsuki Sakai/アフロ)
その点で、参院選に向け、市民団体が立てた候補を野党統一候補として推す動きが広まりつつあるのは、現状を打開する可能性を秘めるものとして注目に値する。各党の政策志向の違いや一部政党への拒否感などのため、全面的な野党間協力や合併をすぐに行うのは難しいが、こうした努力を積み重ねる以外に今のところ方策はないだろう。このような動きは、政権の側に対しても、「一強」に安住することなく、国民に対して方針を丁寧に説明するよう求める圧力となるであろう。
一方、野党の中でも、おおさか維新の会は政権との距離を縮めている。昨年12月には橋下徹前大阪市長が安倍首相と会談し、自公両党とおおさか維新の会が憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を参院選で確保する構想を述べたといわれている。与党側でそうした構想に向けた動きが強まっていくようであれば、野党統一候補の動きと合わせ、憲法改正が参院選の争点になっていく可能性もある。
■「18歳選挙権」適用の影響は?
また、今度の参院選では、鳥取と島根、徳島と高知をそれぞれ一つの選挙区として統合する「合区」が初めて導入される。これまで都道府県単位であった選挙区の性格を変えるものであるため、大きな反響を呼んでいる。昨年夏には、全国知事会が、参院議員を都道府県の代表と位置づける憲法改正案を検討すると発表した。このように参議院の性格をめぐる議論が活発になることも予想される。
選挙公示の時期にもよるが、今夏の参院選から18歳選挙権が適用される可能性が高い。若者の政治意識が高まるのか、彼ら・彼女らの投票率はどうなるのか、投票傾向はどのようなものになるのか、主権者教育はどうあるべきなのか、注目点は尽きない。
衆議院に目を転じると、衆院議長の諮問機関「衆議院選挙制度に関する調査会」が、定数を10減らし、議席配分方式として「アダムズ方式」を採用する旨の答申を1月14日に提出する予定である。最高裁が1票の格差を「違憲状態」とする判決をたびたび出していることから、立法府には今度こそ真剣な対応が求められる。
以上のとおり、本年は、新旧二つの政治の交錯する中、参院選が行われ、また憲法改正や衆参の選挙制度をめぐって議論が起こる可能性がもある。総じていえば、昨年に引き続き、民主主義の在り方があらためて問われる一年となるのではないだろうか。
■内山融(うちやま・ゆう) 東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は日本政治・比較政治。著書に、『小泉政権』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など
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