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[けいざい解読]米中貿易、トランプ氏が対決姿勢 個別品目で「局地戦」か
トランプ次期米大統領が中国との対決姿勢を強めている。米国の製造業が衰えたのは中国からの安い製品の輸入が増えたせいだとして、高関税や人民元安の修正で雇用を取り戻すと強調する。米国と中国は貿易戦争に向かうのだろうか。
「米大統領選直後に北京で会った中国の官僚はみな『トランプはビジネスマンだから交渉しやすくなる』と楽観していた。最近は冷水を浴びせられた気分だろう」。米系投資銀行幹部は語る。
トランプ氏は選挙戦で「中国を為替操作国に指定する」「輸入製品に45%の高関税をかける」と広言した。当初こそ中国では真面目に受け取る向きは少なかったが、当選後もエスカレートする対中強硬発言でシナリオの修正を迫られている。
中国にとって米国は最大の輸出先。もし米国が全品目に45%の関税をかけたら、中国から米国への輸出金額は45%減り、中国の国内総生産(GDP)を1.3%下押しする――。香港の投資銀行CLSAは試算する。
米財務省が「為替操作国」の認定条件とする(1)対米貿易黒字が200億ドル超(2)経常黒字がGDPの3%超(3)為替介入による外貨購入額がGDPの2%超――のうち、中国に当てはまるのは貿易黒字だけ。指定へのハードルは高いように思えるが、JPモルガンの朱海斌・中国チーフエコノミストは「大統領令で条件を変えることもあり得る」と指摘する。
もっとも、あらゆる品目への関税引き上げは非現実的とみるエコノミストは多い。グローバル化でサプライチェーン(供給網)は国境を越えて網の目のように張り巡らされているためだ。
中国の輸出額の約3割は米国や日本、韓国などから原材料や半製品を輸入して製品を組み立てる「加工貿易」が占める。米国向け輸出金額でも上位を占めるのはスマートフォンやパソコンだ。CLSAの張耀昌・中国香港戦略研究部長は「高関税の最大の敗者はアップルやヒューレット・パッカード(HP)など中国に製造委託している米国企業だ」と語る。
むしろ起こりそうなのは米国の製造業と競合する個別品目の狙い撃ちだ。1980年代の日米貿易摩擦で当時の米レーガン政権は自動車に45%の報復関税を課し、日本メーカーから輸出自主規制や米国での現地生産など譲歩を勝ち取った。
「ディール(取引)」を好むトランプ氏の流儀にもかなう。鉄鋼やアルミ、ソーラーパネルなど米中間で係争が起きている品目で日米摩擦と同じ「局地戦」が再現される可能性はある。
中国は「米中経済はゼロサムゲームではない。貿易戦争は互いに不利だ」(朱光耀・財政次官)と平静を装う。だが習近平指導部は来秋の共産党大会に向け、5年に1度の人事の季節に入る。弱みは見せられないとの強硬論が強まり、米国からの輸入に報復措置をとる公算も大きい。
米中のさや当ては、来年の世界経済に暗い影を投げかけている。
(香港=粟井康夫)
[日経新聞12月25日朝刊P.3]
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