http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/681.html
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第二章 ロシアと中東をめぐる勢力図
〔イランに配備される「S3OO」〕
トルコはISとの間での人の自由な往来を黙認していた。トルコにとってはISの脅威よりも、自治を求めるクルド人勢力が伸びることと、イランがシリアに対する影響力を拡大する脅威のほうが大きいからだ。ISは「生かさず殺さず」としておくことが、利益に叶っているというわけ。
ここにもロシアが絡んでくる。(繰り返すが)ロシアによるISへの空爆は、シリアのアサド政権の崩壊を防ぐことが目的だ。
〔ロシアが描く中東勢力図〕
ロシアがどれだけアサド政権を支援しても、この政権がシリアの領域全体を実行支配することは不可能だという現実をプーチン大統領はよくわかっているのだ。
今後、シリアは3〜5個の小国家に分裂すると思う。同様にイラクも三つの小国家に分裂することだろう。どの小国家も覇権的な力を持つことができず、分裂したグループ間同士の武力紛争は、長期間続くことになる。
プーチン大統領は、近未来に予想される地中海東部沿岸地域とイラクにおける勢力図を頭に描き、時が至れば軍事力を誇示することによって、国際政治におけるロシアの影響力を強化しようとしているように思う。
〔破綻国家とカネ〕
この内戦の煽りを受けて、気になることがある。国際社会の関心はISに集まっているが、動向次第では中東情勢を大きく変えてしまいかねない「民族」が生まれつつあるのだ。
ISがイラク国内で勢力を伸ばせば、現在イラクを実行支配しているシーア派のアラブ人は強く抵抗する。基本的にアラブ人はスンナ派が圧倒的に多い。イラクのシーア派アラブ人は、同じ宗派のイランに助けを求めてもよさそうだが、イラン人がペルシャ人だということがそれを妨げているのだ。
というのも、イラクのアラブ人は宗派以上に民族意識が強いからだ。そのような理由で「シーア派アラブ人」という、新しいアイディンティティをもった民族が生まれつつある。今後の焦点は、「シーア派アラブ人」を誰が獲得するのかということに絞られていくと思う。
…
スーダンのような破綻国家は、カネで動くから、周辺諸国にとっては、それなりに利用価値がある。それが複雑な構図を生み出し…中東をますます不安定にさせている。
【出典】「使える地政学〜日本の大問題を読み解く」佐藤優/朝日新聞社 ‘16年
(ロシアはISを狙い撃ちしているわけでもない)
・http://www.asyura2.com/16/warb18/msg/472.html#c6
(イラク軍がシーア派色を強く打ち出しているのも、「新民族」誕生の兆しか)
・http://www.asyura2.com/13/dispute31/msg/432.html
・黒ターバンの意味〜アサド政権を倒すのは困難〜イラクの統一はもう無理/高橋和夫
http://www.asyura2.com/13/dispute31/msg/306.html
投稿者 仁王像 日時 2015 年 10 月 26 日 20:49:45: jdZgmZ21Prm8E
- 地政学的な思考を身につけるには最適な教師がいる。プーチン大統領だ/佐藤優 仁王像 2016/12/13 20:05:23
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