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米ニュージャージー州にあるゴルフ場「トランプ・ナショナルゴルフクラブ・ベッドミンスター」で、ドナルド・トランプ次期大統領(左)と写真撮影に応じる元米南方軍司令官のジョン・ケリー氏(2016年11月20日撮影)。(c)AFP/DON EMMERT〔AFPBB News〕
トランプ人事に渦巻く不安、まるで軍事政権との声も 安全保障チームに元軍人を多用、軍の政治化と政策の軍事化に警鐘
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48640
2016.12.13 Financial Times
かつて「過激派組織ISIS(イラク・シリアのイスラム国)については軍の大将より詳しい」とうそぶいたことがある割には、ドナルド・トランプ氏は制服組の意見を切望しているように見える。
国土安全保障長官にジョン・ケリー氏が指名される見通しになった。国防長官には「狂犬」の異名を持つジェームズ・マティス氏、国家安全保障担当大統領補佐官には元情報将校で何かと物議を醸すマイケル・フリン氏がすでに選ばれており、トランプ氏は自らの安全保障チームに3人の退役将官を呼び入れることになる。
トランプ氏はこのほかにも、陸軍士官学校(ウエストポイント)出身のマイク・ポンペオ元陸軍大尉を中央情報局(CIA)長官に指名した。国務長官にはデビッド・ペトレアス退役大将、米国の諜報部門全体を統括する国家情報長官にはマイケル・ロジャーズ国家安全保障局(NSA)局長(海軍大将)の起用をそれぞれ検討している。
軍の出身者に依存した人事案を受け、トランプ新政権の国家安全保障戦略に対する警告が各方面から発せられている。軍がこれまで以上に政治色を帯びる恐れがあるという警告と、政策が軍事的すぎる性格を帯びる恐れがあるという警告の両方が出ている。
米国には数十年前から、退役後7年以下の元軍人を国防長官に任命することはできないという規定がある。だが連邦議会の共和党議員たちは、マティス氏に対してはこの規定を免除しようと早速動き出している。一方、一部の民主党議員は、軍の文民統制(シビリアン・コントロール)を堅持すべく定められた法律を回避する取り組みは何であっても阻止しなければならないと考えている。
国際人権組織ヒューマン・ライツ・ウォッチのケネス・ロス代表は、トランプ新政権が「軍事政権の様相を呈し始めている」とツイッターで警告した。さすがにそこまで厳しく批判する人は少ないが、文民の世界と軍人の世界を分離するのに必要な政治的クッションがこの人事で浸食されかねないと考える向きは多い。
「こうした将官たちの多くは傑出した存在だ。本当にすごいことができる人たちだからだ」。ワシントンの新アメリカ安全保障センターに籍を置く退役陸軍士官、フィリップ・カーター氏はこう語る。「しかし、危険はある。ほかの政策問題へのアプローチまで軍事化されてしまう危険もその1つだ」
軍が米国で最も尊敬されている組織であることを考えれば、これほど多くの将官が政権入りするのは、意外なことではないかもしれない。今回の選挙で米国の有権者たちは、母国が戦争に関わってきたこの15年間に怒りを覚えていることを示したが、そこで戦ってきた退役軍人たちのことは重要人物として扱う。
ニューヨーク・ミリタリー・アカデミーの生徒だったトランプ氏は、選挙期間中の演説で、ジョージ・S・パットンやダグラス・マッカーサーといった昔の将官たちに畏敬の念を示すかと思えば、今の世代の司令官は「瓦礫に成り下がった」と痛烈に批判するという具合に話をころころ変えることが多かった。
政権内にこれほど多くの元軍人を擁することで生じる第1のリスクは、現役の軍人たちへの影響だ。例えば、退役したらゆくゆくは政権入りして高いポストに就きたいと考える司令官が出てきて、歓心を買おうと政治家への助言に脚色を施したくなるかもしれない、ということだ。
マーティン・デンプシー前統合参謀本部議長はこの夏、前出のフリン氏や、ヒラリー・クリントン候補を支持したジョン・アレン退役海兵隊大将など、退役軍人が選挙戦で存在感を増していることに苦言を呈した。
文民と軍隊の関係についての本をマティス大将と共著で出したスタンフォード大学の学者、コリ・シェイク氏は、「退役後に政治の世界で職を得たがっている軍人たちのことを・・・私は心配している」と話している。
発生し得る第2の問題は、トランプ政権が将軍たちに支配されると、多くの問題で軍隊の利用が解決策だと見なされる恐れがあり、そのほかのアプローチが軽視されることだ。国防総省は、ほかの官庁を圧倒する規模の予算を獲得しているだけに、危機の解決策を探るときに真っ先に目が向けられる傾向がある。それがさらに顕著になりかねない。
また、国境の防御をはじめ、国内の治安確保のさまざまな問題を担当する国土安全保障省をかつての軍幹部が率いることについて不安を覚える人もいる。
とはいえ、トランプ氏が選んだ元軍人たちの中には、主戦論者というステレオタイプに簡単には当てはまらない人もいる。例えば前出のケリー氏は、同じ海兵隊に所属していた自分の息子ロバートをアフガニスタンの戦場で亡くしている。近年に限れば、自分の子供を戦争で失った司令官の中で最も階級の高い人物だ。
また、国務省の予算の増額をたびたび要求しているマティス氏は今年、戦争になれば大変な数の犠牲者が出ることを米国人は忘れてしまったと発言している。
同氏によれば、「米国は、軍隊と呼ばれるペトリ皿(シャーレ)でやりたいことを何でもやることができる、皿の中だから何の影響もない」というのが一般の人々の見方だという。また「法令、法律、憲法に基づいて軍隊を支配する権限を手にしている側の人々には、もう少し謙虚さと遠慮が必要だ」とも語っている。
そして、一部の民主党議員は軍の文民統制について懸念を表明しているものの、マティス氏が国防長官に氏名されるのを歓迎している議員もいる。マティス氏がトランプ氏に軍事行動を促すことはなく、逆に行動を抑制する方向に影響力を行使するだろうと見ているからだ。
発生し得る最後の問題は、退役軍人が優れた政治家やホワイトハウス高官に常になるわけではない、ということだ。確かに、最も尊敬された国家安全保障担当大統領補佐官のブレント・スコウクロフト氏は空軍大将だった。だが、陸軍大将だったアレクサンダー・ヘイグ氏は、ロナルド・レーガン大統領暗殺未遂事件の後に民軍関係の危機を引き起こし、その1年あまり後に辞任している。
マイケル・マレン元統合参謀本部議長は先日、「政府の軍国化」を心配していると語った。軍の幹部の多くはこの世界のかじ取りをする政治についての理解が十分でない、とも述べている。「彼らに何を言われようが関係ない。彼らはとにかく、自分たちが何に手を出そうとしているのか分かっていない」
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