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米国はプーチンとよりを戻すべき?
2016/12/05
岡崎研究所
10月27日付英フィナンシャル・タイムズ紙で、スティーブンス同紙コラムニストは、プーチンとの関係を再構築するには、決意・一貫性・関与・尊敬の4つを持ってあたるべきだと述べています。その要旨は以下の通りです。
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プーチンが最も傷ついたのは、2年前にオバマ大統領が言ったことである。オバマは、ロシアはもはや「地域大国」に過ぎず、ウクライナへの介入は強さではなく弱さを示すもので、ロシアの行動は最大の脅威ではないと述べた。
こうしたオバマの評価は、正しいが、同時に間違っている。経済、人口動態、社会、技術といったほぼ全ての面で、ロシアは衰退に直面している。しかしオバマは、ロシアは軍事力行使に躊躇しないということを見誤った。オバマの「リセット」はクリミア併合、東部ウクライナ占領、アレッポ空爆でダメになった。
ウクライナとシリアへの介入が、ロシアの広範な戦略であることは誰の目にも明らかだ。体制の生き残りと西側への敵意は表裏一体である。プーチンの攻撃目標はリベラルな国際秩序である。近隣国への保護権を持ち、世界の問題に意味を持つ大国であることを欲している。
西側には簡単にとりうる対策がない。だが、冷戦から有益な教訓を学ぶことはできる。尤もロシアはソ連ではない。米国と同盟国に有益なのは、現実に基づくリセットのための枠組み原則を決めることである。決意、一貫性、関与、尊敬から始めるべきである。
最も重要なのは決意である。プーチンは機会主義者であり、相手の弱点を見つけだし、試すことをしてきた指導者である。これまでの西側の間違いは、ロシアを抑止する行動が挑発と受け取られるのではないかと心配したことである。決意を見せることに失敗したために、緊張を取り除くどころか高めてしまった。東欧へのNATOの前方展開は、一定程度民衆に安心を供与することに繋がっている。しかし、米国はシリアと欧州で、一線を越えれば重大な結果を招くとの明確なメッセージを発するべきである。
2つ目の要素は一貫性である。プーチンは、分裂と躊躇いにつけ込むことに長けている。欧州諸国はロシアに対し、お互いの違いを脇に置くことができることを示すべきである。EUの対露経済制裁を数ヶ月毎に更新するのは、ロシアに工作の機会を与えるだけであるから、無期限制裁を宣言すべきである。制裁解除は、ロシアが行動を変えたときだけとすべきである。一貫性を維持するには、敵対行動に対して段階的対応をとる必要がある。ロシアはサイバー攻撃が旅行制限や制裁の強化などの反応を呼び起こすことを知るべきである。
関与については、相手との関係を強い意志をもってマネージすることである。対テロや核不拡散など双方にとって有益で協力できる分野では、共同行動のためのイニシアチブを西側は発揮すべきである。
最後の単語は尊敬である。ロシアは、ほとんどの側面で弱いのは明らかであるが、米国大統領が不都合な真実を口にして、傷つきやすいプーチンと対峙するのは賢いとは言えない。尊敬するふりをすることは外交では必要である。悲しいことに、プーチンがロシアは大国であると装い続けていると、ロシアは最終的には大国ではなくなっていくだろう。
出 典:Philip Stephens‘Four rules for a realistic reset with Vladimir Putin’(Financial Times, October 27, 2016)
https://www.ft.com/content/e7db344c-9aca-11e6-b8c6-568a43813464
上記論説は、西側は、決意、一貫性、関与、尊敬の4つのキーワードに基づいて、今後の対ロ関係を進めるべきであるという政策提言です。そのそれぞれについて筆者が何を考えているのかは論説で説明されています。
決意、一貫性、関与で述べられていることには賛成です。
プーチンを傷つけたオバマ
ただ、尊敬については、オバマ大統領のようにあからさまにプーチンを傷つけるような発言をすることはありませんが、プーチンの国際法違反行為をとがめることと、プーチンに敬意を示すことを両立させることは難しいのではないかと思われます。外交では尊敬しているふりをすることも必要ですが、大きな原則問題があるときには、それを優先して論じるべきでしょう。
上記の提言には大筋で賛成ですが、国際法規範の尊重のような重要な論点が抜けています。プーチンの性格や西側とロシアの作用、反作用に注意を向けた論説ですが、どちらかというと、戦術的観点に重点をおいた論説です。もっとロシアの行動を戦略的視点からとらえた議論が必要であるように思われます。
ロシアの衰退については、これを大げさに言うことはありませんが、今のままではロシアの将来は極めて暗いと考えられます。人口は減っています。自然減のほかに、有能な若者が政治的な抑圧、劣悪な教育、劣悪な医療、所得格差、社会的不公正に愛想をつかし国外に出ています。石油・ガス頼りの経済成長は石油価格がシェール革命で構造的に抑えられているので、もう望めず、資源依存経済脱却はうまくいっていません。サウジのほうが大胆に取り組んでいます。
再度ペレストロイカをしないとどうしようもありませんが、プーチンの政権はその基盤がそれを行うようにはなっていません。民主化し、自由化し、才能あるロシア国民の活力を引き出すのがロシア再興の道ですが、ロシアの指導層は自分に利益を与える現在のシステムを維持することに熱心で、ロシアの問題は外部が作り出しているなど、恨み言ばかり言っており、これでは衰退は止められないでしょう。もうすでにロシアのGDPは中国の10分の1くらいです。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/8374
From LA
サンフランシスコの明と暗、ホームレスが増加する理由
2016/12/02
土方細秩子 (ジャーナリスト)
今年も米ハウジング・都市開発省による年間のホームレスレポートが議会に提出された。それによると2016年のどこかの時点でホームレスだった人口は54万9928人。うちシェルターに入っていない、いわゆる路上生活者は32%を占める。
ホームレス人口そのものは緩やかな減少傾向にある。2007年の不況時には年間のホームレスは64万7258人だったから、9年間で15%減少したことになる。しかし問題は大都市圏ではむしろ増加している、という点だ。米国のホームレスは1位がカリフォルニア州の11万8142人、2位がニューヨーク州の8万6352人、3位がフロリダ州の3万3559人。この3つの州ではホームレスが全人口の6%以上となっている。
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最大の問題はやはりカリフォルニア州だ。ここではシェルターに入っていないホームレスが66.4%と圧倒的多数となる。同じくホームレス人口の多いニューヨークではシェルターが充実しているため4.2%にとどまっているだけに、この差は大きい。しかもカリフォルニア州のホームレスは前年比で2404人の増加となっている。
都市別ではニューヨーク市が7万3523人と最も多く、次がロサンゼルス市の4万3854人。トップ10にはこのほかサンディエゴ、サンフランシスコ、サンノゼとカリフォルニア州の都市が4つも入る。
カリフォルニア州のホームレス増加が最も実感できるのはサンフランシスコ市だ。同市のユニオン・スクエアは一流ホテル、ショッピングセンター、ビジネス街などが融合した同市でも指折りの繁華街だが、ホームレスの数が半端ではない。ほとんど1ブロックごとにホームレスに遭遇、この辺りを歩いていると1日に最低5回は金銭やタバコをねだられたり、ファストフード店の前では「何か食べ物を買ってほしい」と頼まれる。ロサンゼルスも確かにホームレスは多いが、スキッド・ロウと呼ばれる地域に集中しており、ビジネス街でこれほどのホームレスに遭遇することはない。
筆者はユニオンスクエア近辺のホテルに11月初旬滞在したが、ほとんどのホテルでドアマンを置く、もしくは客の出入りのたびに入口をロックする、などしてホームレスの侵入を防いでいた。「一度中に入られると追い出すのはとても難しい」とホテルフロントは語っていた。
もちろん市当局でも手をこまねいているわけではない。同市広報によると、サンフランシスコ市は年間に2億4100万ドルのホームレス予算を持ち、市の8つの部局、76の非営利市民団体などがこの問題に対処している。それでもサンフランシスコのホームレスが目立つのは、市の面積対ホームレスの比率にある。1平方スクエア(1.6X1.6キロ)あたりのホームレス人口は149人と、ロサンゼルスの114人を上回る。
この実情に、今年2月シリコンバレーの企業家らが声をあげた。「きちんと働き高収入を得ている人々は、市に居住する権利がある。彼らは教育を受け、熱心に働きその地位を得た。そうした人々が仕事の行き帰りごとにホームレスの苦しむ姿を目にしなくてはならないのは公正ではない」(Commando.io社CEOジャスティン・ケラー氏)。
この声明の裏にあるのは、「高収入のIT企業が家賃を釣り上げた結果、もともと市内で賃貸をしていた人々が家賃を払えなくなりホームレス化している」という批判だ。初任給でも年収10万ドル平均、というシリコンバレーの労働者たちは、こと住宅問題では批判の的となる。彼らの多くがサンフランシスコに居住、その通勤には有名なグーグル・バスなど、企業が「エアコン、WiFi完備で無料」の交通手段を用意している。怒れる市民がグーグルバスの前にバリケードを張って抗議活動を行ったのも記憶に新しい。
世帯収入を上回る一人当たりのホームレス支援資金
実際、市では地価高騰のためホームレスシェルターを閉鎖せざるを得ない事態も起きている。同市によると1人のホームレスをシェルター、食事、職業訓練などで支えるために市が支出する額は年間8万ドルにも及ぶという。これはサンフランシスコ市の平均世帯収入を上回る数字だ。
今回の大統領選挙とともに行われた住民投票でサンフランシスコ市は「路上テントの撤廃」を賛成多数で可決した。しかしホームレス保護団体からは「十分なシェルターがない状況でホームレスのテントを除去するのは人道に悖る行為」と批判の声が上がっている。
ホームレス対策は全米の大都市にとって頭の痛い問題だ。しかし予算と現実との兼ね合いがあり、解決策はない。さらに高騰するサンフランシスコの地価(同市の平均的な賃貸価格は1ベッドルームで2600ドルを超える)が問題をさらに複雑にしている。
筆者はユニオンスクエア近くのドラッグストアで商品価格をチェックしたが、ここではタバコ1箱が12ドルで売られていた。同じ銘柄でロサンゼルスでは6ドル前後だ。なぜこんなに高いのか、と聞くと「家賃が高いからそれくらい取らないと商売できない」という返答だった。他の商品も推して知るべし、だ。シリコンバレーの高所得者には問題ないのかもしれないが、サンフランシスコは庶民の住める場所ではなくなりつつあるのかもしれない。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8336
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