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[ニュース解剖]プーチン氏、反転攻勢
武力誇示と「情報テロ」米欧の間隙突く
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と安倍晋三首相が12月に日本で行う首脳会談まで1カ月を切った。日本側は北方領土問題を前進させる好機ととらえるが、予断を許さない。欧州連合(EU)からの英国離脱に続き、ドナルド・トランプ氏が米大統領選で勝利するなど世界が激変する中で、プーチン氏は何を狙い、どう動くのか。(モスクワ=古川英治)
ロシア第2の都市サンクトペテルブルク。毎朝9時前になると、4階建てのビルに若者が次々入っていく。看板には「ビジネスセンター」とだけ書かれ、窓はカーテンで締め切られている。ここはネット世論を操作する「トロール部隊」の拠点だ。
国挙げて世論操作
複数の元従業員の証言によると、4万ルーブル(約6万9千円)程度の月給で約400人が勤務し、週7日24時間体制で宣伝工作を行う。ソーシャルメディアへの書き込みに加え、架空の人物になりすましてブログを運営する部隊もある。英語など外国語も使いオバマ米大統領や欧州連合(EU)をおとしめるプロパガンダを国内外に拡散する。
ウクライナで親ロ政権が崩壊した2014年の政変を機に、プーチン氏はクリミア半島を併合、同国東部にも軍事介入し、米欧との関係は悪化した。対ロ経済制裁を発動した米欧に対し、ロシアは武力の誇示と同時に国営メディアによる宣伝工作や世論操作、サイバー攻撃を組み合わせた「ハイブリッド(混合)戦争」を仕掛ける。
ロシア国営テレビは1月、ベルリンでロシア系少女が移民にレイプされたと報道した。これをソーシャルメディアがあおり、抗議デモにつながった。ドイツ当局の捜査でこの事件はでっち上げだったことが分かった。EU内で対ロ制裁を主導するメルケル政権の不安定化を狙ったロシア側の動きとみられる。
米大統領選への揺さぶりも疑われる。民主党のヒラリー・クリントン氏が大統領候補に選ばれる直前に民主党全国委員会がハッカーに攻撃され、機密メールが流出した事件で、米政府はロシア政府の関与を断定した。
「1週間も訓練すれば米政府機関のセキュリティーシステムは誰でも破れる」。ロシアの元治安機関員は軍や治安機関が傘下にハッカー集団を擁していると明かす。米欧への世論操作についても「クレムリン(ロシア大統領府)は草の根運動の破壊力を認識している」と話す。
来年それぞれ議会選と大統領選を控える独仏の情報当局はロシアの介入を警戒する。クレムリンに近い金融機関が反EUの仏極右指導者、マリーヌ・ルペン氏の政党に融資したことも明らかになった。欧州外交筋は「ロシアは外交ではなく工作活動に注力している」と指摘する。
ロシアの言い分では、米欧への攻撃は「自衛」だ。プーチン氏はウクライナの政変を「米国の陰謀」と断じる。クリミア併合を宣言した14年3月の演説で、北大西洋条約機構(NATO)の東欧への拡大などロシアの反対を無視した米欧の動きを列挙し、「ウクライナで西側は一線を越えた」と主張した。
ウクライナの行方はプーチン氏にとって死活問題だ。スラブ・正教文化の発祥の地であるウクライナは米欧と異なる価値観を掲げるプーチン氏の求心力の根幹に関わる。ウクライナで民主改革が進み、欧州統合に向かえば、強権体制を敷くプーチン氏に対する国内の反対運動も再燃しかねない。
対米欧でプーチン氏が最終的に目指すのは、第2次大戦末期、米英ソの指導者が東欧などの戦後処理を取り決めた「ヤルタ協定」のような勢力圏の分割を受け入れさせることにある。そのためにはウクライナなど旧ソ連諸国への影響力を取り戻し、大国として米国と対等な関係を確保しておく必要がある。
米大統領選でロシアがトランプ氏勝利を歓迎したのは、同氏が一貫してロシアとの関係改善を主張したからだけではない。経済界出身で、既存の理念や価値観にこだわらないトランプ氏とはウクライナ問題などで「取引」できると期待するからだ。
「対日交渉急がず」
プーチン氏は日本をこうした戦略の中で見ている。最大の関心は日本が戦略的に利用できる存在かどうか。米国の反対にもかかわらず、安倍首相が5月と9月にロシアを訪問したことを評価し、訪日に傾いた。そこには対ロ制裁を巡るG7の結束を乱す狙いが見え隠れする。裏返せば、トランプ氏の対ロ政策次第で日本の重要性は変わる。
安倍首相が狙う北方領土問題打開の道のりは険しい。19日の日ロ首脳会談後の会見でプーチン氏は日程が固まっているはずの訪日について「もし、日本を訪問すれば」と意図的に前置きして質問に答えた。従来、前向きな発言が目立った安倍首相のトーンも変わってきた。22日にはロシアによる北方領土へのミサイル配備も明らかになった。
プーチン氏は15年5月にモスクワで開いた対独戦勝70周年式典に首相が欠席したことを忘れていないという。ウクライナへの軍事介入に抗議する米欧首脳がボイコットする中、首相も最後は米国に配慮した。「日本は米国から独立した外交はできない」との不信感がぬぐえない。
トランプ氏が選挙戦での発言通りに対ロ関係改善に動くのか、日本の対ロ接近にどう反応するのかも読めない。ロシア政府関係者は12月の日ロ首脳会談で北方領土問題を巡る交渉を急ぐ理由はないと断言する。
「すべてはトランプ氏次第だ」
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