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トランプ大統領と米国(1)「こんなはずじゃない」(2)沸騰ウォール街(3)勝ったのはプーチン(4)「オバマの票が流れた」
http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/426.html
投稿者 あっしら 日時 2016 年 11 月 21 日 04:18:16: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


[迫真]トランプ大統領と米国

(1)「こんなはずじゃない」

 ドナルド・トランプ(70)が米大統領選で勝ったことは世界に衝撃を与えた。米国で募った経済格差への不満と反グローバルのうねり、そして欧州で広がる極端なナショナリズムとの共鳴。冷戦崩壊後、超大国の米国が築いてきた世界の秩序は大きな転換点を迎えた。


11日、中南米系が多いフロリダ州マイアミでは反トランプのデモが起きた=ロイター

 10日、首都ワシントンのホワイトハウス。大統領のバラク・オバマ(55)は次期大統領に決まったトランプを出迎えた際、お互いが笑顔で握手する恒例の写真撮影をしなかった。8年前に同じホワイトハウスで前大統領のブッシュから迎えられたオバマがその慣例を知らないはずはない。

 「あなたの成功が米国の成功」。トランプにこう繰り返したオバマの心の奥底に潜む「こんなはずじゃなかった」という本音が垣間見えた。写真撮影のないことを意に介さないトランプは会談後、オバマを「いい男だ」と上から目線で持ち上げた。権力闘争の結末が示した象徴的な場面だ。

 その前日のニューヨーク。選挙結果が判明した後に支持者の前に初めて姿を現した民主党候補のヒラリー・クリントン(69)は「勝てずに申し訳ない」と陳謝した。女性大統領という「最も高くて硬いガラスの天井はまだ打ち破れていないが、いつか誰かが、私たちが考えているより早く達成してくれるはず」。

 演説での締めくくりのこの台詞(せりふ)は、8年前にオバマと争った予備選で敗北した際と似通っていた。その時と決定的に違うのは、クリントンには大統領になる芽がほぼついえてしまったという現実だ。そのことを最もよく知るはずのクリントンの淡々とした口調が逆に支持者の涙を誘った。
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 今回の大統領選はまれに見る大接戦となった。当落を決める選挙人数はトランプが上回ったが、総得票数はクリントンがわずかに勝った。大統領としての「資質」を巡る非難合戦に発展した選挙戦と同じく結果も米国の分断を印象づけた。勝敗を分けたのは大統領が「黒人」から「女性」に引き継がれ、リベラル政権が3期続くことへの保守的な白人の危機意識だ。

 米国の分断は選挙後も続いている。「Not My President(私の大統領じゃない)」。ニューヨークや西部カリフォルニア州オークランドの中心街で9日早朝から「トランプ大統領」に抗議するデモが起きた。店舗の窓ガラスを割ったり、ごみ箱に火をつけたり、怒りを爆発させた。デモは10日、西部シアトル、南部ダラス、東部フィラデルフィアにも広がった。

 ツイッター上では「私の大統領じゃない」という(情報を拡散できる)ハッシュタグが数十万の単位で使われている。トランプが負ければ暴動に発展するという事前の観測は裏切られ、トランプが勝っても暴動は起きた。デモの参加者は「私の大統領じゃない」と書いたカードを掲げた。

 「トランプ大統領」への戸惑いは教育関係者にも広がっている。トランプは国籍、人種、性別を問わず差別的な暴言を繰り返した。民主主義を軽んじ、選挙結果の受け入れを保証することも拒否した。民主主義の最高のお手本と称される大統領選は「子供にはみせられない低俗番組」のごとく扱われた。「トランプ大統領」を子供にどう説明するか。ワシントン近郊のメリーランド州の公立校は11日、選挙結果に衝撃を受けた生徒らを対象にカウンセリングを実施すると発表した。
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 「忙しい日だ」。トランプは11日、住居があるニューヨークの「トランプタワー」にこもり、新政権の人事を練った。ツイッターに「政権運営を担う人材に関する非常に重要な決定を間もなくする」と投稿した。全米で拡大するデモにも「われわれの偉大な国への情熱だ」とおうように構えた。

 13日放映の米CBSテレビのインタビューでは、クリントンが敗北を認めた9日未明の電話について「気持ちの良い電話だった。彼女にとってはつらかっただろう」とおもんぱかった。夫で元大統領のビル・クリントンからも10日に電話を受け「これ以上ないほど丁寧だった」と振り返った。

 「1つの米国」を訴えてオバマが大統領になってから8年。今回の大統領選で浮き彫りになったのは皮肉にも人種や理念、経済格差で分断された「2つの米国」だった。この分断はさらに深く、広がる兆しだ。来年1月20日に大統領に就任するトランプが描く米国の未来像は、まだみえない。

(敬称略)

[日経新聞11月15日朝刊P.2]

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(2)沸騰ウォール街

 米国の9日未明。ドナルド・トランプ(70)の祝勝会が開かれていたマンハッタンの高級ホテルから一人の男が抜け出し、指示を出した。「米国株を買えるだけ買え」。10億ドル(約1080億円)をつぎ込んだ男の名前はカール・アイカーン(80)。「物を言う株主」としてウォール街で名をはせる投資家だ。

 「トランプ勝利は米経済にプラス」としてきたアイカーン。トランプ・ショックに揺れた市場は「理由もなくパニックに陥っている」と見てとった。読み通り、その後のダウ平均は過去最高値まで駆け上がった。

 1992年にジョージ・ソロスとともにポンド売りで英イングランド銀行を打ち負かした伝説の投資家スタンレー・ドラッケンミラー(63)は、開票が進んだ8日夜に金をすべて売った。金は株や債券などに比べ伝統的に市場の混乱に強いとされるが、トランプ勝利で「持つ意味が消えつつある」とした。

 市場の潮目を変えたのは、議会選挙の結果だ。共和党が多数派を維持し、大統領と議会多数派が食い違う「ねじれ」が解けた。トランプの大型減税やインフラ投資が現実味を帯びる。移民拒否などの極端な政策は、与党・共和党が議会で歯止めをかける。ウォール街はそんないいとこ取りのシナリオに乗った。

 もっともヒラリー・クリントン(69)に巨額の献金をしたウォール街の内実は複雑だ。両党の有望な候補に目配りするのがウォール街流だが、ニューヨーク州選出の上院議員も務めたクリントンとの関係が深く、トランプの躍進を読み誤った。

 ゴールドマン・サックスの最高経営責任者(CEO)、ロイド・ブランクファイン(62)は選挙前にクリントン支持を示唆した一人だ。10日には「トランプの政策は市場にやさしい」と平静を装ってみせた。民主党支持者であるJPモルガン・チェースCEOのジェイミー・ダイモン(60)も選挙後に「変化を願う米国民の声には耳を傾けるべきだ」とした。

 オバマ政権はドッド・フランク法をつくり、金融を厳しい規制で縛った。金融危機の再発を防ぐためだが、トランプはその撤廃を唱える。米住宅バブルを招いたとも批判される米連邦準備理事会(FRB)元議長のアラン・グリーンスパン(90)は同法を「悲惨な過ち」と呼んでこう続けた。「消え去るのが楽しみだ」。ウォール街の陶酔が始まった。

(敬称略)

[日経新聞11月16日朝刊P.2]

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(3)勝ったのはプーチン

 9日午前のロシア議会下院。「トランプ勝利」の結果が伝わると拍手喝采が巻き起こった。有力議員は院内で130本のシャンパンを記者らに振る舞い、興奮気味に語った。「米ロ関係にとって歴史的な瞬間だ」


リトアニアの首都で描かれたトランプ氏とプーチン氏の壁画=AP

 ドナルド・トランプ(70)の勝利を最も歓迎した国のひとつがロシアだ。大統領のウラジミール・プーチン(64)はいち早く祝電を送り、共産党党首やロシア正教会トップも一斉に祝意を表明した。首都モスクワ近郊では街に「トランプ通り」をつくる構想まで浮上した。

 ロシアのウクライナやシリアへの軍事介入で、米ロ関係は「新冷戦」と呼ばれるまで悪化している。トランプは選挙戦で一貫して米ロの関係改善を主張した。「プーチンは米大統領のオバマより優れた指導者だ」。こんな発言がロシアを喜ばせた。

 ロシアは前代未聞ともいえる米大統領選への介入を疑われた。民主党のヒラリー・クリントン(69)は対ロ強硬を唱えた。クリントンが党の大統領候補に正式に選ばれる直前に、民主党全国委員会がハッカーに攻撃され、機密メールが流出した。米政府は10月にロシア政府が指揮したと断定した。

 「米政府機関のシステムを破るのは難しくない」。ロシアの元治安機関員は9月末、国防省など複数のロシア政府組織がハッカー集団を擁すると明かした。疑惑を尻目にプーチンはこう言ってのけた。「誰がやったかではなく、暴かれた内容のほうが重要だ」

 独立系ラジオ局が9日に実施した世論調査では「プーチンがトランプ勝利に一役買った」と考える国民が3割に上った。トランプ陣営の中枢もロシアと関係が深い人物が目立つ。「米大統領選で勝ったのはプーチン」。政権寄りの人気漫談家ミハイル・ザドルノフはこう断じた。

 米国と張り合うもう一つの大国、中国は複雑な思いだ。オバマ政権のアジア重視戦略が後退し、各国と領有権を争う海域で自由度が増すと期待する半面、保護主義への警戒感も強い。外交筋は「しばらくは様子を見るしかない」。

 中ロ首脳は13〜14日にトランプと初めて電話協議した。中国は「中米の唯一の正しい選択は協力だ」との呼びかけにとどめたが、ロシアは「米ロ関係の正常化と協力推進で一致した」と成果を誇った。トランプは米外交を大きく転換させるのか。大国関係はまだ見えない。

(敬称略)

[日経新聞11月17日朝刊P.2]

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(4)「オバマの票が流れた」

 「ガラスの天井は、いつか誰かが破るだろう」。民主党のヒラリー・クリントン(69)は9日の敗北宣言で、初の女性大統領という夢を後進に託した。事実上の引退宣言に聞こえた。選挙戦で何を読み誤ったのか。

ミシガン州の中産階級が住む住宅地。トランプ氏を応援する看板の数はクリントン氏を圧倒していた

 大統領選の翌9日、自動車産業が集まるミシガン州デトロイト近郊。民主党の牙城だが、中産階級の住宅街はドナルド・トランプ(70)を支持するボードがあちこちで目についた。庭のボードは候補者の勢いを映す。「クリントン支持」はトランプの1割。大接戦となり、トランプ優位のまま最終集計が続く。 「1年半前からトランプ現象は本物だと報告していたのに、本部は取り合わなかった。甘くみていたんだ」。民主党の支持母体である全米自動車労組(UAW)の支部幹部、ウェイモン・ホールティ(44)はこう吐き捨てた。情勢を軽視した結果として「オバマの票が大量にトランプに流れた」。

 大統領選の敗因の一つは「身内」の造反だ。出口調査で対抗馬のトランプに投票した民主党員は9%に上った。クリントンに投じた共和党員は7%。暴言王のトランプを嫌った共和党員より、クリントン嫌いの民主党員が多かった。「多くの人々が民主党は白人労働者の味方ではないと感じている」。クリントンと党候補の指名を争った上院議員のバーニー・サンダース(75)は14日、こう語った。

 傷を負った民主党内は不協和音も聞こえる。クリントン側近で党全国委員会の委員長臨時代理、ダナ・ブラジル(56)は10日の会合で敗北を総括し、再起を呼びかけた。ある男性スタッフが公然と異を唱えた。「あなたは欠陥のある候補を支持した。信頼できない」。返事も聞かずに男性は立ち去った。「うなずいていた人も多かった」と別のスタッフは語った。

 4年後の大統領選でトランプに対抗できるのか。若者に支持されるサンダースは高齢だ。大統領夫人ミシェル・オバマ(52)の待望論もあるが、本人は「もう十分」。オバマが大統領に就いた2009年から次の本命をクリントンとみなし後進の育成を怠ったツケが響いている。

 クリントンは10日、夫と愛犬を連れ、山歩きに出かけた。穏やかに歩いていたというクリントンはいまの民主党に何を思うのか。

(敬称略)

[日経新聞11月18日朝刊P.2]

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(5)「話が違うじゃないか」

 「大変あたたかい雰囲気で会談できた」。首相の安倍晋三(62)は17日夕(日本時間18日朝)、ドナルド・トランプ(70)と笑顔で写真におさまった。

電話協議に向け必死に人脈をたどった(10日、官邸に入る安倍首相)

 もともと安倍は19日からペルーで開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の前に米ニューヨークに立ち寄り、米次期大統領との会談を狙っていた。唯一かつ大きな誤算は、その相手をヒラリー・クリントン(69)とみていたことだ。

 なぜか。「クリントン勝利の流れは変わりません」。外務省はこう報告し続けていた。9日夕の首相官邸。安倍はトランプ勝利を報告しに来た外務省幹部に「話が違うじゃないか。とにかく早く電話で話したい」といら立った。その場に外務次官の杉山晋輔(63)はいなかった。

 9月の安倍の訪米時。外務省はクリントンとの会談だけを設定。安倍は「トランプ側にも仁義を切った方が良いんじゃないか」と漏らす。そこで外務省はトランプの経済顧問、ウィルバー・ロス(78)との面会も決めたが、クリントンの反応を気にして会談は秘密にした。

 「クリントンが勝つと決めつけない方が良い。保険を掛けよう」。こう主張していたのは駐米大使の佐々江賢一郎(65)だ。公使の岡野正敬(52)らにトランプ人脈開拓を指示していた。投開票日の数日前には、トランプに近い関係者に外務省側から「勝利した時には安倍首相から電話したい」と打診。政府高官によると、トランプ側は「祝いたいと電話してきた国は初めてだ」と喜んだという。

 安倍が9日夕に「電話協議」を指示したことを受け、外務省は佐々江らの面会記録などをもとにトランプ人脈に片っ端から当たり、どうにか10日朝の安倍・トランプの電話にこぎつけた。首相周辺は「投開票数日前の打診が効いた」とも話す。

 「予想していたわけでは必ずしもない」。9日午後、財務官の浅川雅嗣(58)はトランプ優勢の報に漏らした。浅川もクリントン政権なら財務長官候補とされる人物と親交があった。だがトランプ側とのパイプはほぼゼロ。16日にニューヨーク入りし、人脈づくりを始めている。

 「大統領がトランプさんなら、それはそれでいいじゃないか。やれることを考えよう」。11日夜。安倍は与党幹部を前に、自分自身に言い聞かせるような口調で語った。

(敬称略)

 吉野直也、古川英治、大塚節雄、川合智之、島田学、永井央紀、兼松雄一郎、山下晃が担当しました。

[日経新聞11月19日朝刊P.2]

 

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コメント
 
1. 中川隆[5057] koaQ7Jey 2016年11月21日 11:29:32 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[5486]
殺人鬼のヒラリーが勝てる訳なかったんだよ

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