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「頭のいい」指導部のせいで、米民主党はすべてを失った
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/11/post-6347.php
2016年11月17日(木)10時45分 ジム・ニューウェル ニューズウィーク
<民主党指導部にとってはインサイダーのクリントンをもり立てたために、勝てるはずの戦いで手痛い敗北を喫した>(写真:大統領選から一夜明けて敗北宣言をしたクリントン)
大統領のポストを失い、上下院の多数議席を獲得できず、今や米民主党は連邦レベルではほぼ無力に等しい。11月9日未明の衝撃を、私たちは生涯にわたって繰り返し思い出すだろう。それは未来の世代にも語り継がれるような衝撃だった。
あまりの展開に今は何が起きたか1%も理解できていない。それでも、現時点ではっきり言えることがある。自ら物笑いの種になった民主党指導部はもうおしまいだということだ。
議員やコンサルタントや選挙参謀や中道左派のメディアが主張してきたこと――あの衝撃の結末を迎えるまでに、ここ数年言われてきたことはすべて、ただのたわ言だった。
【参考記事】ドナルド・トランプとアメリカ政治の隘路
民主党指導部は予備選でひそかにヒラリー・クリントンに肩入れするという嘆かわしいミスを犯した。クリントンはまずい候補者だ。相手陣営にやじを飛ばすだけで有権者の心をつかむメッセージを打ち出せない。今のアメリカを覆う政治的なムードにも、民主党内で盛り上がった若い熱気にもそぐわなかった。しかもメール問題やクリントン財団の資金に絡む疑惑など厄介なお荷物が付いて回った。
「頭のいい」民主党指導部には、そんなことは分かっていたはずだ。それでも彼らはクリントンをもり立てた。民主党指導部は閉鎖的な社交クラブでアウトサイダーを歓迎しない。自分たちに敬意を払わず、勝手に動くからだ。
■メディアの分析も的外れ
民主党支持の有権者は指導部の言うことを信じた。状況を完全に把握していると豪語し、違う意見を無視する指導部を。
指導部はこう言っていた。クリントンは政界で長年のキャリアがあるし、共和党は新しい攻撃材料を見いだせないだろうから、本選ではクリントンが有利だ――今にして思えば、笑ってしまうような言い草だ。
手慣れた戦いで、選挙広告の作り手は才人ぞろい、ハリウッドのトップスターも味方に付けているし、史上最高の選挙分析チームを抱えている、とも。だから最強だって? 冗談だろう。史上最高のチームが、全国大会後にウィンスコンシン州に遊説に行くべきだという提案すらしなかったのだ。1回の遊説で戦況が変わるわけではないが、相手の支持基盤であるラストベルトを切り崩す努力は必要だった。
共和党は空中分解しつつあるというメディアの分析も的外れだった。筆者の分析も例外ではない。クリントン勝利に備えて事前に書いた原稿では既存の政治システムが崩壊しつつあるなかで民主・共和とも存亡の危機に瀕しているが、共和党に少し分があるかもしれないと論じていた。少しどころか、彼らは今や怖いものなしだ。ドナルド・トランプが彼らにミッションを与えた。この国は彼らのものだ。
【参考記事】トランプの首席戦略官バノンは右翼の女性差別主義者
崩壊寸前の民主党を受け継ぐ新指導部は今までよりも広い層にアピールする方法を見いだす必要がある。人口動態からみて共和党は早晩落ち目になるだろうが、今回の選挙でそれはまだ先の話だと分かった。民主党は反人種差別・反性差別の旗印を捨てずに、より広く白人層の支持を取り付けねばならない。
居座り続ける少数の民主党幹部はバーニー・サンダースの支持者が投票所に行かなかったせいだのFBI長官が悪いだのと犯人探しをするだろう。一方で、共和党は図に乗って墓穴を掘るだろうから、まだ希望は持てるなどと言う幹部もいるはずだ。
そんな寝言を真に受けてはいけない。何一つ明るい材料はない。全面的な敗北――これが目下の現実だ。
© 2016, Slate
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