★阿修羅♪ > 国際16 > 357.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
パクス・アメリカーナ終焉に色めく中国・ロシア トランプ政権の安全保障政策と日本の対応(JBpress)
http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/357.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 11 月 17 日 12:45:36: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

米大統領選後に米ニューヨークのトランプタワー前で行われた「反トランプ」デモの様子(2016年11月12日撮影)〔AFPBB News〕


パクス・アメリカーナ終焉に色めく中国・ロシア トランプ政権の安全保障政策と日本の対応
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48397
2016.11.17 渡部 悦和 JBpress


 ドナルド・トランプ氏の大統領選勝利は、米国の大多数のマスコミや知識人(大学の教授、シンクタンクの研究者など)にとって大きな衝撃であった。

 彼らは、ヒラリー・クリントン氏の勝利を信じて疑わなかったが、蓋を開けてみるとトランプ氏の劇的な勝利を受け入れざるを得なかった。選挙前日のクリントン陣営には勝利を確信した高揚感があり、ヒラリー候補の最後のスピーチは勝利宣言に近いものであった。

 しかし、女性初の米国大統領は、11月8日の敗北により実現しなかった。史上最低と言われた大統領選を経て、トランプ大統領が誕生した意味は大きい。

 トランプ大統領の誕生は、望ましい方向への大きな変化をもたらす可能性がある一方で、混沌とした世界情勢をさらに悪化させる可能性もある。

 特に、トランプ氏は安全保障における知見に乏しく、彼がいかなる安全保障政策を確立するかは、世界の平和と安定にとって極めて重要な問題である。そのような状況において、トランプ氏の安全保障政策、特に対外政策を予想し、その予想に基づき我が国は如何に対処すべきかを考えてみた。


■なぜトランプ氏は勝利したか

 ドナルド・トランプ氏の勝利の要因を分析することは、彼の今後の政策を占ううえで重要である。米国でも様々な視点から彼の勝利の要因に関する議論がなされているが、私も1年半にわたって大統領選挙を観察してきたので、自らの意見を述べたいと思う。

 結論的に言えば、トランプ氏勝利には複数の要因が混然一体と関係しているので、以下その複数の要因を説明する。

・選挙結果に最も影響を与えた直接的要因

 ジェイムズ・コーミーFBI長官のメール問題再捜査の発表が決定的な要因だった。ヒラリー・クリントン氏自身が大きな要因として挙げている。

 コーミー長官の捜査再開の発表前には10ポイント以上あった両者の支持率の差(クリントン氏有利)が、発表後に2ポイント以下の僅差になってしまった。その発表のタイミングは、形勢を逆転させるのに絶妙なタイミングであった。

 ヒラリー陣営はその劇的な変化を跳ね返すことができなかったことを選挙結果は示している。私は、コーミーFBI長官のしでかした歴史的ミスの影響の大きさを現地において痛感した。

・大衆迎合(ポピュリズム)の視点

 トランプ氏の直観的で単純明快なポピュリズムの戦術が成功した。

 つまり、分断国家米国の分断<マジョリティである白人とマイノリティであるイスラム教徒、ラティーノ(ラテンアメリカ系米国人)、黒人、アジア系との分断>を強調し、その分断をさらに広げる戦術が単純明快で低学歴・低所得の白人ブルーカラー層にピッタリはまった。

 白人ブルーカラー層は、自分たちの本音や怒りを明快に代弁してくれるトランプ氏を熱狂的に支持した。彼の単純明快な戦術は、分断をさらに大きなものにし、選挙後の反トランプ抗議行動の大きな要因になっている。

・行き過ぎたリベラリズム(政府による弱者救済、マイノリティ救済)に対する白人の反乱

 オバマ大統領の8年間で、政府による弱者救済・マイノリティ救済が行き過ぎた状況であるという認識に基づく白人の反発が爆発した。

 例えば、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスセクシャル)の問題で、同性婚の合法化は保守層の反発が大きかった。

 また、弱者救済の色彩の強いオバマケア(医療保険制度改革法)に対する根強い反発もあった。共和党は、健康保険には本来自分で加入すべきであり、他人の健康保険のために自分が払った税金は使われたくないという思いが強かった。

 また、ポリティカル・コレクトネス(人種や宗教に起因する差別を否定することを正当化すること)の行き過ぎに対する反発が白人の知識層にさえある。例えば、大学の授業中の議論で人種差別的な発言を少しでもしたら、単位取得や就職にも影響が出るという話もある。

 行き過ぎたリベラリズムやポリティカル・コレクトネスに対する白人(学歴貧富の差を問わず)の怒りが今回爆発し、トランプ氏勝利を導いたとも言える。

・変化を求めた有権者

 30年以上も米政界でスポットライトを浴び続けてきたクリントン氏の魅力が消え失せ、飽きられていた。有権者はオバマ路線の継承を宣言するクリントン氏ではなく変化を強調するトランプ氏に魅力を感じたのだ。

・何よりもトランプ氏の勝利に対する執念には凄まじいものであった。世論調査で自らの劣勢が伝えられている中で、最後の最後まで勝利を信じて精力的に活動した点は感服するほかない。


■複雑な問題に対する単純明快な唯一の解決策はない

 40年にわたり安全保障に携わってきた私の信念がある。それは、「複雑な問題に対する単純明快な唯一の解決策はない。その解決策なるものは最も不適切な策である場合が多い」という信念である。

 この信念は、トランプ氏の単純明快だが問題の多い主張に対する反論でもある。

          
           図:中東の混沌とした状況(出典:イアン・ブレマーのTwitter)



 例えば中東情勢である。図を見てもらいたい。このイラストはイアン・ブレマーのツィッター(Twitter)を出典とするが、このイラストを見れば中東情勢の複雑さが理解できるであろう。誰が敵で、誰が味方か分からないのが中東の混沌とした情勢である。

 多くの国際政治学者が言うように、この中東問題を解決する単純明快で唯一の解決策などない。トランプ氏は、「私は、将軍よりも中東のことはよく知っている。私ならイスラム過激組織ISISなどの問題を即座に解決できる」と主張したが、彼の主張はハッタリであり、間違っている。

 トランプ氏の単純明快な主張は、米国内の白人ブルーカラー層を中心とする米国人の共感を得たが、世界の諸問題は複雑であり、それに対して多くの外国人たちが共感する単純明快な唯一の解決策はない。

 他の例では、南シナ海における領有権問題がある。関係当事者が多く、それぞれの思惑は違う。特に、中国の領有権に関する主張は荒唐無稽であるが、大国であるがゆえに中国への対処は難しい。単純明快な唯一の解決策などない。

 人は、単純明快な解決策を望む、そして「これこそが単純明快な唯一の解決策だ」と主張する者を支持したくなる。しかし、その解決策を実施すると様々な問題を引き起こすのである。

 選挙後のマイノリティたちの反トランプ抗議デモの多発は、トランプ氏の単純明快な解決策が、多くの問題を内包していたことを証明している。

 次に、トランプ氏の安全保障政策について検討したい。


■トランプ政権の安全保障政策:力による平和構想

 トランプ氏の主張全般を観察すると、保護主義、孤立主義、反エスタブリッシュメントが大きな特徴と言えるが、安全保障政策については、首尾一貫したまとまった政策は少ない。

 彼自身、この分野における知識や見識に乏しく、クリントン氏とのディベートにおいても弱点であった。まず、彼が発表した「力による平和(Peace through Strength)」を紹介する。

●「力による平和(Peace through Strength)」の内容

 トランプ氏は、9月7日に「力による平和」を発表した。この「力による平和」という名称は、ロナルド・レーガンが使ったものと同じであり、彼がいかにレーガンを意識し、レーガンを真似しようとしているかが分かる。

 「力による平和」は、彼の大まかな戦力構想がその内容であるが、軍の支持を取りつけるために一定の効果があったと思う。その戦力規模の目標は次の通りである*1。

・陸軍:現役54万人を目標とする。オバマ政権下の国防省の計画では、現時点の現役兵員数約49人から2018年には45万人に削減し、その状態が2020年まで続く予定である。

・海軍:艦艇数350隻(水上艦艇、潜水艦)を目標とする。現在の米海軍の要求では、現在数276隻を2021年に308隻に増強し、2025年にはピークの313隻とする予定である。

・海兵隊:現在数23個大隊を36個大隊に増強する。

・空軍:現在の戦闘機数1113機を1200機に増強する。

・最新のミサイル防衛システムを整備する。

・サイバー技術(防御のみならず攻撃的技術を含む)に対する大規模な投資をする。

*1=Christopher A. Preble, “Early Thoughts on Trump’s Peace through Strength”, Cato

●「力による平和」に対する評価

 「力による平和」には2つの大きな問題点がある。大規模な軍拡の目的は何かという点と予算の裏づけの根拠が乏しい点である。

 まず、大軍拡の目的はトランプ氏の孤立主義と明らかに矛盾する。世界の諸問題に関与しない孤立主義を採用するのであれば、なぜこれほどの軍拡が必要なのか理解不能である。

 この軍拡案を成立させるためには、現在設定されている予算の上限枠を撤廃しなければいけないが、一般予算の上限枠をそのままにし、軍事費のみ上限枠を撤廃しなければいけない。

 また、軍事費を大幅に増加するためには増税を実施するか、財政赤字を拡大するしかない。しかし、トランプ氏は大規模な減税を主張している。この矛盾は大きい。

 結論として、この「力による平和」は戦略的に矛盾に満ち、財政上も予算の確保が難しい絵に描いた餅に思える。ただ、選挙の終盤にこの案を発表したことによる効果、特に軍人や軍人OBに与えた影響は大きかったと思う。

 選挙戦当初における軍関係者のトランプ氏に対する評価は芳しいものではなかったが、徐々に軍関係者で彼を支持する者が増えてきた。その傾向をさらに確実にしたのが「力による平和」であった。

 大統領就任以降、どこまで真剣に大軍拡を追求するのか、注目される。


■トランプ氏の対外政策に関するシナリオ

 選挙戦期間中のトランプ氏の安全保障、特に対外政策に関する発言を分析する。

●対外政策の類型

 米国の対外政策の類型を白紙的に示すと以下の3つに区分される。

「孤立主義(isolationism)」:対外的な関与をしない。他国に対して米国の価値観(例えば、民主主義、市場経済など)の強要や軍事的介入をしない。

「多国間主義(multilateralism)」:国際協調主義に基づき、多国間の協力で世界の諸問題を解決する。

「単独主義(unilateralism)」:米国の強大な軍事力を背景として、米国単独でも他国に介入し、米国の価値観に基づく問題処理を押しつける。

●選挙期間中におけるトランプ氏の孤立主義

 選挙期間中のトランプ氏の発言に基づくと、彼の対外政策は孤立主義であると判断せざるを得ない。彼が主張している「アメリカ最優先(America First)」の意味するところは、「世界の諸問題には関心がない、アメリカさえ強く豊かになればいい」ということである。

 これは、むき出しの自己中心主義であるが、この自己中心主義は米国民の過半数が共有する価値観であることが大統領選挙結果で証明された。

 また、彼は世界の紛争への不介入を主張し、イラク戦争を手厳しく批判し、米国が軍事力により外国の政権転覆を図ったり、その後の国家再建に関与することに反対してきた。彼の孤立主義は、歴代大統領が推進した国際協調を基調とする多国間主義を拒否するものである。

 それでは、トランプ氏が「アメリカ最優先」を貫いたらどうなるかを考えてみたい。

 今回のトランプ大統領の出現を最も歓迎しているのはロシア、中国、北朝鮮、イスラム過激組織ISISなど、今まで米国、特に国防省が厳しく対処してきた国々や組織である。

 特にウラジーミル・プーチン大統領のロシアは大喜びである。ロシアが何をしようと、米国の関知することではないというお墨つきをもらったに等しいからである。

 トランプ氏の孤立主義は、戦後70年間続いてきた米国の安全保障政策を根底から覆すことになる。

 トランプ氏の支持者たちが求めた変化は確実に起こるが、その変化は世界の平和と安定にとっては最悪の変化であり、オバマ政権時代に明らかになった米国の相対的な力の低下にとどまらず、米国の凋落が始まることになる。

 世界の諸問題の解決に背を向ける米国など誰も尊敬しないし、信頼しないし、見くびられる存在になってしまうであろう。

●トランプ氏が主張を変更する可能性

 トランプ氏は、選挙期間中の過激な発言をより穏健なものに変化させていくだろうという希望的観測もある。

 実際、彼は、選挙期間中にその廃止を訴えてきた医療保険制度改革法オバマケアを修正して存続させる方針を早々に示唆した。オバマケアの廃止は選挙公約の重要政策であったはずなのに、この変わり身の早さには驚くしかない。

 大統領に就任後のトランプ氏に関する日本にとっての最善シナリオは、孤立主義的でない、保護主義的でない、より柔軟で現実的な政策を採用することである。

 孤立主義についても、大統領になってからも堅持するのか、それとも現実を理解し多国間主義を採用するのか、はたまた彼の独裁的性格から連想される単独主義に陥ってしまうのか、今後の注目点である。

 私の予想では、孤立主義を変更する可能性はある。世界の情勢が米国の孤立主義を許さないだろうし、彼が主張している「力による平和」に伴う大幅な軍拡と孤立主義は矛盾し、最もアグレッシブな単独主義に至る懸念もあるくらいである。

●トランプ政権の対外政策3つのシナリオ

 トランプ氏が自らの孤立主義を変更する可能性もあり、トランプ政権が3つのシナリオの中でいずれを採用しても不思議ではない。我が国は3つのシナリオに備えるべきである。

・孤立主義のシナリオ

 大統領になったとしても選挙戦の主張通りに孤立主義を貫くシナリオである。

 このシナリオにおいては、世界の諸問題の解決に米国が関与しないために、ますます混沌としたGゼロの世界(世界の諸問題を解決する国家や組織が存在しない世界)になる。

 中国、ロシア、北朝鮮などの問題国家は、米国に気兼ねすることなく自らの国益を追求する。ロシアは特に欧州正面においてNATO(北大西洋条約機構)諸国の脅威になり、中国はアジアにおける地域覇権国としての地位の確立を追求するであろう。

 そのために、日本の安全保障にも重大な影響を与えることになる。米国の影響力はますます低下し、各国は自助努力をするか、中国にすり寄る可能性もある。

 このシナリオは、米国が戦後70年以上にわたり築いてきた米国主導の秩序の放棄、パクス・アメリカーナの終焉を意味し、世界の混沌とした状況は各地における紛争の勃発に至る可能性がある。

 なお、イアン・ブレマーによると、パクス・アメリカーナは1945年からトランプ氏が選挙に勝利した2016年までで、トランプ氏が正式に大統領に就任した2017年以降はGゼロの世界だと皮肉を込めてTwitterに書いている。

・多国間主義のシナリオ

 選挙期間中の孤立主義の主張を撤回し、米国を中心とした国際協調主義に基づき世界の諸問題に対処しようとするシナリオで、最も望ましいシナリオである。

 相対的国力は低下したとはいえ、いまだに世界一の経済力と軍事力を誇る米国が世界の平和と安定のために自らの役割を果たすことになる。米国の同盟国である日本なども、米国と協調しながら世界の平和と安定に寄与していくことになる。

 このシナリオにおいては、中国もロシアも米国のリーダーシップを認めざるを得ず、我が国の安全保障特に対中関係において、より望ましい状況を期待できる。

・単独主義のシナリオ

 トランプ氏の独裁的な性格と彼を支えるスタッフのアグレッシブな性格、大幅な軍拡構想「力による平和」などから判断して、単独主義を採用する可能性もある。

 このシナリオは、孤立主義とは180度違うが、あり得るシナリオで、イラク戦争を始めたジョージ・W・ブッシュ氏の一国行動主義を連想させる。


■日本の対応

●トランプ氏の日本関連発言

 NATO、日本、韓国は、自らの力で自らを防衛すべきだ。米軍の駐留を望むのであればその経費を100%払いなさい。

 日本防衛に米国が経費を負担している一方で、日本は通貨を円安に誘導し、それを基盤として強い経済を確立した。

 日米安保条約はおかしい。米国が攻撃されても、日本は米国を助ける義務はない。一方で、日本が攻撃されれば、米国は日本を守らなければいけない。

 「もし、米国と韓国が中国と北朝鮮に対処するために日韓が核開発するのに反対するか」という質問に対して、「日韓の核保有はあり得る」と答えた。(この発言を彼は否定している)

 以上の発言は、トランプ氏の根強い日本批判の思いを背景としている。彼の主張には一理ある指摘もあり、日本としては謙虚に聞くべきところは聞き、彼の誤認識に基づく不適切な発言には堂々と反論すべきである。

●日本は、トランプ政権にいかに対処すべきか?

 最も大切なことは、トランプ大統領の誕生を日本変革の好機ととらえて対処すること。トランプ氏の過激な発言に対し、過敏な反応をしないこと。

 誰が大統領になったとしても、日米同盟の重要性は不変である。まずは、トランプ新大統領の誕生を前向きに歓迎し、トランプ政権と協調して世界の諸問題に対処する前向きな姿勢を示すこと。

 そして、トランプ氏の出方を冷静にじっくり待つこと。トランプ氏の要求に対しては、我が国の国益に沿って毅然と対処する。

●トランプ政権で、日米同盟及び米軍駐留にどのような変化が起きるか?

 トランプ氏が日米同盟を破棄して、在日米軍を完全に撤退させるとは思わない。ただし、在日米軍駐留経費のさらなる日本側負担要求などの厳しい対日要求は覚悟すべきである。

 一方、トランプ氏の主張は、「米国の同盟国は、自国の防衛について、自ら責任を持ちなさい」ということであり、自主的な防衛努力を求めるトランプ氏の主張は当然の主張である。

 あまりにも他力本願な日本の防衛体制への警鐘ととらえるべきである。トランプ大統領の誕生を米国への過度な依存体質脱却の好機と認識し、その是正に努めるべきである。

●最悪の事態に対処する

 安全保障の大切な点は、最悪の事態を含むすべての事態に対して備え対応することである。トランプ政権がいかなる対外政策を採用しようが、最善の準備と対処をするのみである。

 特に最悪の事態である米国が孤立主義を選択した場合、我が国は独力で中国、ロシア、北朝鮮の脅威に対処しなければいけない。従来の米国への安易な依存体質を転換しなければいけない。

 典型例が、「米軍が矛(攻撃を意味する)、自衛隊が盾(防御を意味する)」の関係から脱却して、自衛隊が矛と盾の両方の役割を担うことが必須になる。自主防衛の覚悟をもって真剣に防衛力整備に努めなければいけない。

 トランプ大統領には、その出方によって、日本の国益を中心として毅然として対処する。そして、我が国は存在感ある国家として生き残ることが重要である。


■トランプ氏のリーダーシップと側近たちに対する危惧

 私には、トランプ政権に対する不安がある。あまりにも専門家を馬鹿にする傾向があるからである。

 彼の反エスタブリッシュメント(反支配階級)の主張の中に、安全保障の専門家なども入っていて、批判の対象にされてきた。実際に政策を策定し、それを実行するためには優れた専門家を集め活用することが不可欠である。

●トランプ氏のリーダーシップ

 リーダーには多くの資質が求められるが、ましてや米国の最高司令官(Commander in Chief)には特段のリーダーとしての資質が要求さえる。

 例えば、そのポストに求められる知識や見識、他者の(特に部下の)意見を聞く能力、先見洞察力、信念、実行力、情熱、柔軟性、忍耐力などである。

 トランプ氏には多くの優れた資質があるが、安全保障に関する知識や見識に関しては明らかに欠けている。それをカバーしてくれるのが多くの専門家の意見であるが、トランプ氏が聞く耳を持っているか否か、優秀なスタッフがいるかどうかが問われる。


●側近に対する危惧

 大統領選挙勝利直後に編成された政権移行チームのメンバーを見ると、家族4人が入るなど身内で固めた陣容になっているのが特徴であるが、プラスの面もマイナスの面もある。 

 また、トランプ氏は、大統領首席補佐官にラインス・プリーバス共和党全国委員長を指名し、過激な保守系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」会長のスティーブン・バノン氏を主席戦略官兼上級顧問に指名した。

 両者は水と油の関係とも言われているが、2人の関係の動向が注目される。

 また、バノン氏の人事は極めて評判が悪い。バノン氏が白人至上主義者、反ユダヤ主義者で不法移民の強制送還やイスラム教徒の入国拒否を主導してきた。バノン氏を極めて重要なポストにつけたことに対する危険性を指摘する人は多い。

 一方、安全保障分野におけるキーパーソンであるマイケル・フリン(Michael Flynn)元DIA(国防情報局)長官は、当初からトランプ氏を支持し、国家安全保障問題大統領補佐官の呼び声が高い。

 フリン氏は、激しい性格で2014年にDIA長官を更迭されている。上司とも部下とも衝突を繰り返し、DIA長官としてのリーダーシップ、マネジメントに問題ありとされた。

 更迭直後からオバマ大統領を強烈に批判している。元統合参謀本部議長コリン・パウエル氏もフリン氏に批判的である。

 マーティン・デンプシー前統合参謀本部議長も一貫して、軍人特に将軍による政治的行動や発言に批判的で、口をつぐむべきだと主張していた。

 ユーチューブにはフリン氏の発言が何本か公開されているが、それを視聴するとフリン氏がいかに激しい攻撃的な性格の人物であるかが分かる。

 彼は、国防長官候補にも挙がっているが、原則として軍人は、退官してから7年以上経過しないと国防長官にはなれない決まりがあるため、国防長官には他の候補者の名前、例えばケリー・アヨット元上院議員、スティーブン・ハドレー元国家安全保障顧問、ジョセフ・セッションズ上院議員が取りざたされている。

 いずれにしろ、トランプ氏の側近には攻撃的で個性的な人たちが目立ち、様々な問題の発生が予想される。


■結言

 トランプ大統領の誕生を新たな黒船だとか、トランプ氏は大化けするとか、前向きに楽観的にトランプ氏の勝利を歓迎する人もいる。しかし、私は、希望を込めた楽観論は戒めている。

 冷静に判断すると、選挙期間中に明らかになったトランプ氏の本質がそんなに簡単に変わるとは思えない。

 確かに主張を一部修正することはあるだろう。しかし、世界の諸問題に関与したくないという思いには根強いものがあり、彼の米国内の問題解決優先の姿勢により、対外関係が疎かになり、我が国にとっても厳しい安全保障関係になることは覚悟しなければいけない。

 その際に、問われるのは、日本の自助努力、自主防衛努力である。その意味でトランプ大統領の誕生は、戦後70年間続いてきた我が国の対米依存関係を払拭する良い機会である。


★阿修羅♪管理人の追記。元記事に合わせ、このページの記事も、『訂正:本記事には、デニス・ブレア海将の米大統領選に対する意見について誤まった情報を記載いたため、ブレア海将に関する記載を削除しました(2016年11月19日)。』としました。
 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
1. 2016年11月17日 15:54:25 : LY52bYZiZQ : i3tnm@WgHAM[-7386]
World | 2016年 11月 17日 13:52 JST
関連トピックス: トップニュース
インタビュー:欧州も独自の核抑止力保有を検討すべき=独議員

http://s3.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20161117&t=2&i=1162026804&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXMPECAG05N
 11月16日、ドイツ連邦議会外交委員会のメンバーであるローデリヒ・キーゼベッター議員は、米国のトランプ次期大統領が欧州での軍事的関与縮小を示唆していることを受け、欧州も独自の核抑止力保有を検討する必要があるとの見解を示した。ロイターとのインタビューで語ったもの。写真のドイツ国旗はベルリンで5月撮影(2016年 ロイター/Fabrizio Bensch)

{ベルリン 16日 ロイター} - ドイツ連邦議会外交委員会のメンバーであるローデリヒ・キーゼベッター議員は、米国のトランプ次期大統領が欧州での軍事的関与縮小を示唆していることを受け、欧州も独自の核抑止力保有を検討する必要があるとの見解を示した。ロイターとのインタビューで語ったもの。

キーゼベッター議員は、欧州全体の安全保障のために核抑止力を持つようフランスと英国を説得する上で、ドイツは重要な役割を果たすことができると主張。「米国の核の傘と核による安全保障は、欧州にとって必要不可欠だ」とし、「この保証を米国がもはや提供したくないというのであれば、欧州には抑止力としての核防衛が必要だ」と述べた。

同議員は英仏による核の傘には費用がかかるとも指摘したが、資金は2019年から開始する欧州共同予算でまかなえるとも話した。

http://jp.reuters.com/article/germany-usa-nuclear-idJPKBN13C0BV


2. 2016年11月17日 22:16:25 : 1hFwhl5XF6 : A44FqszPm3Y[64]
カレイドスコープさんの言っていることを、渡部悦和(JBpress)に投げかけます。
http://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-4640.html

ニューヨークタイムズが、数ヵ月前からドナルド・トランプ候補に対して仕掛けてきたネガティブ・キャンペーンについて、読者に謝罪しました。
http://www.nytimes.com/2016/11/13/us/elections/to-our-readers-from-the-publisher-and-executive-editor.html

一方、日本のマスコミ人は、トランプ圧勝がアメリカの有権者の本当の意思であるにも関わらず、今だにトランプに対して悪印象操作をやっています。
彼らは、いったい誰に奉仕しているのでしょう。


3. 2016年11月17日 23:24:33 : 15lng7bsSw : GHTelca29wA[27]
此のおっさん、東大卒の自衛隊上がりw
東部方面歴任者にして此の程度の見識しかない馬鹿者が率いているのが日本の姿w。
此の馬鹿者の言うところを突き詰めると
米露中が世界を支配しようとも日本は中国と対抗するため
更に軍事力強化に邁進すると言うことだ。
ここまで来るともはや狂人と言う他ない。
こういう事例を見るにつけ日本の命数は尽きつつあるのがわかるよ。

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 国際16掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
国際16掲示板  
次へ