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トランプ勝利に「嵐の拍手」を送ったロシアの思惑 最初は歓迎ムードでも、いずれ対立?(フォーサイト)
http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/356.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 11 月 17 日 12:08:35: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

キスをするドナルド・トランプ氏とウラジーミル・プーチン大統領が描かれた壁画。リトアニアの首都ビリニュスにて(2016年5月13日撮影、資料写真)。(c)AFP/Petras Malukas〔AFPBB News〕


トランプ勝利に「嵐の拍手」を送ったロシアの思惑 最初は歓迎ムードでも、いずれ対立?
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48389
2016.11.17 新潮社フォーサイト (文:名越 健郎) :JBpress


 米大統領選でのドナルド・トランプ候補の勝利が9日、ロシア下院で報告されると、全議員が立ち上がり、「嵐のような拍手」(モスクワ・タイムズ紙)が起きたという。かつてのソ連共産党大会の常套句だった「嵐のような拍手」がよみがえった。

 プーチン大統領を「世界の偉大なリーダー」と呼び、米露関係改善を訴えるトランプ氏の就任で、ロシアは孤立から脱却できるとの期待感が高まっている。とはいえ、米露双方が偏狭なナショナリズムを貫く政権となることで、米露関係や国際情勢は脆さを抱えることになりかねない。

■トランプ勝利は「米国からの贈り物」?

 プーチン大統領はトランプ氏に祝電を送り、「米露関係の危機的状況からの脱却、当面の国際問題解決、世界の安全保障の脅威への効果的対応に向け、共同作業に期待する」と伝えた。クレムリンで開かれた大使の信任状奉呈式でも「われわれは米露関係を改善したいとする選挙戦中の発言に注目してきた。それは容易ではないが、われわれは米国との関係を全面的に復活させる用意があり、それを望んでいる」と言及した。

 ペスコフ大統領府報道官は、プーチン大統領がトランプ氏と就任前に会うのかとの質問に、「今のところ会談や電話協議の予定はない。来年1月20日まではオバマ政権が相手であり、11月19、20日のリマでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でオバマ大統領と会談する可能性がある」と述べた。発言には余裕があり、ロシアはトランプ政権登場を待ってアプローチをかける構えだ。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(11月9日付)は「トランプ氏の外交経験欠如、(時代遅れとする)北大西洋条約機構(NATO)への疑問、プーチン大統領への称賛、クリミア併合を容認するような発言は、クレムリンの術中にはまるものだ」とし、米大統領選は「ロシアとプーチン大統領への米国からのサプライズの贈り物」と書いた。

クリミア併合容認か

 選挙戦中、トランプ氏は「オバマ大統領はプーチン大統領が嫌いなようだが、私ならうまくやっていける」「プーチン大統領は内外で尊敬されている人物。オバマ大統領と違って少なくともリーダーだ」などと発言。プーチン大統領はトランプ氏を「傑出した才能ある政治家」と呼び、エールの交換があった。

 トランプ氏は「米国が世界の警察官であってはならない」と強調。イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦でも「ロシアが貴重な同盟国になる可能性がある」と述べ、ロシア軍のシリア空爆は、ISを狙ったもので問題はないとの見方を示した。

 ロシアによるウクライナ領クリミア併合についても「クリミアの人々はロシアと共にいることの方を望んでいた」とし、クリミア併合を容認し、対露制裁も解除する意向を示唆していた。

 タス通信によれば、クリミアではトランプ氏の当選に歓喜が広がり、クリミア選出下院議員からは「クリミアの住民投票が遂に国際的に認知される時がきた」「プーチン大統領が訪米する際は、公式代表団の一員に加わりたい」といった発言が噴出した。これに対し、ポロシェンコ・ウクライナ大統領は「米国がロシアによる侵攻への対抗を引き続き支援するよう期待する」とクギを刺した。

 クリミア問題では、来春の仏大統領選でもトップを走るサルコジ前大統領がロシアによる併合を容認する発言をしており、G7(主要7カ国)の結束がなし崩しになる可能性がある。

■“ケミストリー”が合わなかったオバマとプーチン

 ロシアでは、ヒラリー・クリントン候補が当選すれば、米露関係はさらに悪化するとの懸念が大勢だった。

 クリントン氏は国務長官時代の2011年末、ロシアの選挙不正をめぐって高揚した反プーチン運動の際、投票結果の徹底究明を求めてデモ隊を擁護した。クリミア併合についても「1930年代のヒトラーを彷彿させる」と糾弾した。

 大統領選挙中のテレビ討論では、トランプ氏を「プーチンの操り人形」と酷評。ロシアの政府機関が米政府機関にハッカー攻撃を仕掛けていることを問題視し、「サイバー攻撃の背後にはプーチン大統領がいる」「ロシアは私を当選させようとしていない」と述べた。プーチン大統領はこの発言に、「ロシアは米国内の政治プロセスに決して干渉しない」「米大統領候補が反ロシアのカードを切るのは近視眼的だ」と反発していた。

 戦後の米ソ・米露関係は、経済関係や人的交流が希薄だけに、最高指導者のケミストリー(相性)が両国関係を大きく左右した。

 レーガン、ブッシュ父両大統領はゴルバチョフ大統領と信頼を築いて冷戦終結に持ち込んだし、クリントン、エリツィン両大統領は一種の馴れ合いに似た友好関係があった。ブッシュ、プーチン両大統領は、最後は対立を深めたものの約40回会談し、何でも話せる間柄だった。

 だが、オバマ、プーチン両大統領はケミストリーが合わず、まだ1度も公式首脳会談を行っていない。年に2、3度、国際会議の場で短時間会談するだけで、進展はなかった。12年のプーチン氏の大統領復帰後は、元中央情報局(CIA)職員のスノーデン氏のロシア亡命、ウクライナ危機、ロシアのシリア空爆で険悪化を強めた。

 ロシアでは、オバマ路線を継承するクリントン氏が後継者になれば、ロシアへの包囲網がさらに強まるとの危機感が強かった。それだけに、プーチン大統領とケミストリーが合いそうなトランプ氏の当選で、米露関係が改善され、ロシアは国際的孤立から脱却できるという期待感が出てくる。

■ロシア変革が後退するという指摘も

 しかし、慎重論も少なくない。ロシアの評論家、アンドレイ・アルバトフ氏は「トランプ氏がロシアについて述べたことを過大評価すべきでない。彼は選挙戦終盤では『プーチン大統領のことは知らない』と発言を修正していた。状況に応じて発言を変え、大衆に迎合する人物だ」と語った。

 共産党のジュガーノフ委員長は「ロシアのような選挙だったら、クリントンが当選していた。今回は国民の声が反映された公正な選挙だった」とプーチン政権の選挙操作を批判していた。

 米共和党には、マケイン上院議員ら強烈な反露主義者が少なくない。前回の共和党大統領候補のロムニー氏は「米国にとって地政学上の最大の敵はロシアだ」と公言していた。トランプ政権の対露外交は、外交・安保の主要ポストの顔ぶれなどを見た上で判断すべきだろう。

 モスクワ・タイムズ紙(11月9日)の電子版は、「世論調査では、ロシア国民は過去2年の相次ぐ戦争にうんざりしていることが分かる。経済は低迷し、9月の下院選でもアパシー(無関心)が漂った。これは2018年の次回大統領選に重大な問題となる」とし、プーチン政権は改革派のキリエンコ元首相を内政担当の大統領府副長官に起用したり、極右活動家を非難するなど、政治統制を緩和する動きをみせていたと指摘。「だが、トランプ政権が誕生し、世界がさらに混乱するなら、プーチン大統領はそれを利用する戦略を進めるだろう」とし、「ロシアの変化の希望は米大統領選によって葬られるかもしれない」と書いた。

■トランプが核のボタンを握ることに

 政治経験がなく、大衆迎合型のトランプ氏は「アメリカ・ファースト」(米国第一主義)を唱え、保護貿易主義や移民排斥を掲げて米国の国益を最優先する。「ロシア・ファースト」であるプーチン大統領と根本的なところで一致するとは思えない。最初は良くても、いずれ対立コースに戻る可能性がある。

 米露関係で気になるのは、近年、核兵器の軍備管理交渉が行われていないことだ。冷戦時代も米ソ関係は悪化したが、双方の戦力が均衡する中、軍備管理交渉が頻繁に行われ、信頼醸成につながった。しかし、当時のスタッフは退官し、軍備管理交渉は開かれていない。2010年調印の新米露戦略兵器削減条約(START)も20年に失効し、無条約状態になる。

 選挙戦中、トランプ氏は「戦略核3本柱」について聞かれた時、それを知らず、動揺する場面があった(2016年3月17日「『トランプ・カード』に期待するプーチン大統領」参照)。そうした人物が最高司令官として核のボタンを握るのは不安が残る。

 一方のプーチン大統領は、ますます核戦力に依存し、核ミサイル近代化を進め、「核の恫喝」にも言及する。2人とも強気で押し、引き下がらない性格だけに、関係が悪化すれば、キューバ危機のような局面が再来するのではといった危惧を抱いてしまう。

 日露平和条約締結を目指す安倍政権にとっては、日露外交に横やりを入れたオバマ政権が交代することで、対露外交にフリーハンドが得られるメリットがある。しかし、ロシアが今後対米関係打開に精力を注ぐなら、相対的に日本への関心が低下する恐れもある。トランプ旋風は、日露外交にも影響しそうだ。

名越 健郎
1953年岡山県生れ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長を歴任。2011年、同社退社。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学東アジア調査研究センター特任教授。著書に『クレムリン秘密文書は語る―闇の日ソ関係史』(中公新書)、『独裁者たちへ!!―ひと口レジスタンス459』(講談社)、『ジョークで読む国際政治』(新潮新書)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
 

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コメント
 
1. 2016年11月17日 20:16:27 : 2LiKY8ftgY : PTfAaIrqs6s[82]
ベタ誉めは してない釘を 刺しただけ?

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