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なぜウォール街の金融産業はヒラリー・クリントンを見限ったのか?=高島康司
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2016年11月6日 MONEY VOICE
FBIによる私用メール問題再捜査の背景として、メディア王・マードックの背後に控えるウォールストリートの金融産業が、ヒラリー・クリントンを最終的に見限った可能性が指摘されている。(『未来を見る!ヤスの備忘録連動メルマガ』高島康司)
※本記事は、未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 2016年11月4日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ヒラリー・クリントン政権はどうせ短命、ならばトランプに乗り換えだ!
■FBIコミー長官への「2つ圧力」
なぜコミーFBI長官は、クリントンとトランプが大接戦を繰り広げている大統領選挙の1週間前になって、あえて私用メール問題の捜査に踏み切ったのだろうか?
今年の夏にコミー長官は、クリントンの私用メールサーバから違法性のあるメールが出てくる可能性は低いので捜査をしない決定をした。これは急に捜査の開始を宣言したいまの状況とは対照的だ。コミー長官になんらかの圧力があったのかもしれない。
そのように思って調べると、やはり圧力があったことを示す情報が多数出てきた。
カナダのオタワ大学のミシェル・チョソドウスキー教授が中心となって運営しているシンクタンクに、『グローバル・リサーチ』がある。ここのサイトには、内外の分析者や調査ジャーナリストの書いた興味深い記事が多数掲載されている。
今回このサイトには、コミー長官にかけられた圧力と、捜査に踏み切らざるを得なかった動機をうかがい知ることのできる記事が多数掲載されていた。
■1つ目の圧力。FBI内部からの反発
それらの記事を読むと、コミー長官には徹底した捜査を要求する2つの大きな圧力がかかっていたことが分かる。
ひとつは、FBI内部からの圧力だ。クリントンの私用メールサーバには、クリントンの違法行為を証明できるメールが多数あったにもかかわらず、コミー長官は大統領選挙への影響をおもんばかって本格的な捜査はしないことを決定をした。
長官のこの決定には、FBIの内部から強い批判があり、優秀な捜査官が何人も辞表を提出して、この決定に強く抗議した。コミー長官はFBIの組織の統合性を維持するためには、内部のこうした抗議に応える必要があった。
そのため、クリントンの側近、フーマ・アベディンのパソコンから見つかったメールは、徹底して捜査する意志を示さざるを得なかった。
■もう1つの圧力。トランプ・マードック連合
しかし、コミー長官にかかった圧力はこれだけではない。きちんと証明されているわけではないが、大きな勢力からなんらかの圧力がかかっている可能性を示唆する記事が『グローバル・リサーチ』にはいくつも出ている。
まず今回のコミー長官の捜査開始の報道にもっとも熱心なメディアは、ケーブルテレビのFOXニュースと大手経済紙のウォール・ストリート・ジャーナルだ。このメディアのどちらも、メディア王、ルーパート・マードックの所有である。
ルーパート・マードックは大変に熱心なトランプ支持者で、トランプとも個人的に親しい間柄だ。
今年の春、トランプとマードックは数回会談したことが分かっている。その後、トランプの義理の息子のジャード・クシュナーを通してマードックとの電話会談が持たれ、いわばトランプ・マードック連合が形成された可能性が高いと見られている。
さらに10月には、トランプとマードックとの間で2度会談が行われ、今後の方針が検討されたようだ。マードックはつねづね「共和党がトランプの元に結集しないのはおかしい」と述べていた。
■FBI内部の献金疑惑がダメ押し
もちろんこれだけでは、マードックが所有するウォール・ストリート・ジャーナルやFOXニュースがトランプに有利な情報を流す説明にはなるものの、独立性の強い政府機関であるFBIにまで圧力がかかるとは考えにくい。圧力があったのかどうか、はっきりとは証明できない。
しかし、ウォール・ストリート・ジャーナルはコミーFBI長官がクリントンのメール問題の本格的な調査に乗り出さざるを得なくさせている事件を詳しく報じている。それは、クリントン陣営によるFBIへの献金疑惑である。
クリントンに近い民主党のテリー・マックオーリフ テネシー州知事は、ヒラリー・クリントンからの献金として67万5000ドルを渡された。そのうち20万ドル強がFBI高官の妻であるジル・マカビー博士に渡った。マカビーは、2015年のバージニア州上院議員選挙に出馬しており、これは選挙戦への献金だったとされている。
一方、ジル・マカビー博士の夫のFBI高官は、この献金の直後にFBI副長官に昇進し、クリントンの私用メールサーバ問題の担当となった。そして、これを捜査しない決定をした。
10月24日、ウォール・ストリート・ジャーナルはこれを詳しく報じる長い調査記事を掲載し、クリントン陣営とFBIとの間に金銭のやり取りがあった事実を詳しく報じた。この記事が掲載された直後の10月28日、コミー長官はクリントンのメールを捜査するとの通知を議会に送った。
もし、FBIの汚職が明らかになってしまったのに、FBIがクリントンのメールの捜査を開始しないと、FBIが前代未聞の献金スキャンダルの対象となり、徹底的に非難されることになる。コミー長官はこれを回避するために、クリントンのメールの捜査を行う判断をしたと見られる。
■ヒラリー・クリントンを見限ったウォールストリート
それだけではない。FBIの捜査の決定の背景には、マードックの背後にひかえているウォールストリートの金融産業が、クリントンを最終的に見限った可能性が指摘されている。
その理由は、クリントンの私用サーバやフーマ・アベディンの共用パソコンにあるメールには、違法性が明らかなものがすでに見つかっており、たとえ選挙に勝利して大統領になったとしても、法的に訴追されることは免れないと判断したためだとも見られている。
このままではクリントンは、1974年にウォーターゲート事件で弾劾されて辞任したニクソン大統領と同じ命運をたどる可能性が高い。
1972年の大統領選挙でニクソンは地滑り的に勝利したが、翌73年にはウォーターゲート事件で、ニクソン陣営が民主党全国委員会本部を盗聴していた事実が明らかとなり、74年にニクソンは辞任を余儀なくされた。
クリントンのメールには、このウォーターゲート事件の衝撃に匹敵するメールが多数含まれていると見られている。クリントン政権が成立すると同時に訴追の嵐となり、クリントンは1年も経たないで辞任に追い込まれるかもしれない。
ウォールストリートは、このような不安定なクリントンを見限り、トランプへと乗り換えたのではないかというのだ。このような事情も、FBIが捜査に踏み切るための追い風になったことは間違いない。
■メールの中身
それでは、クリントンの命取りとなりかねないメールとはどのような内容なのだろうか?中身が気になる。
まだ捜査対象となっているメールは公開されていないので、具体的には分からないものの、ウィキリークスから連続的にリークされているクリントン陣営の選挙対策部長、ジョン・ポデスタのメールを見ると、捜査対象となっているメールがどれほどやばいのか、ある程度想像がつくようだ。
■司法妨害罪
クリントンが訴追される可能性のあるケースのひとつは、司法妨害であると見られている。FOXニュースによれば、クリントンの側近、フーマ・アベディンの共用パソコンのなかにある65万件のメールのうち、捜査対象になるのは1万件程度だという。これがクリントンのメールだ。
これらのメールが国務長官としての公務に関連したものであり、なおかつこれらのメールのいくつかが意図的に削除されていることが証明されたのなら、「司法妨害罪」が成立する。
「司法妨害罪」とは、捜査対象になってる証拠品を、捜査から逃れるために意図的に破壊する行為のことを指す。過去に削除したメールがあった場合、いまではデータ回復ソフトで簡単に元の状態に戻すことが可能だ。メールのデータを100%完全に消すためには、ハードディスクを壊してしまう以外に方法はない。ハードディスクを残しておくと、削除されたメールは簡単に回復できる。
もしクリントンが、証拠隠滅のために公務に関連するメールを削除していたことが判明すれば、「司法妨害罪」が成立する可能性が出てくる。
アメリカは厳罰の国である。「司法妨害罪」では、20年の懲役刑も課すこともできる。ウォーターゲート事件のときニクソン大統領には、「司法妨害罪」が適用されたケースがある。
■クリントン財団の資金洗浄
それだけではない。もっと大きな違法行為が行われていた可能性がある。
それはヒラリーが夫のビルとともに運営している慈善団体、クリントン財団の疑惑である。この財団は集めた金額の10%程度しか実際の慈善事業には寄付されていないことが分かっている。
クリントン財団に寄付された資金は、カナダにあるトンネル会社に一度集められて資金の出所を不明にされた後、クリントン夫妻がかかわるあらゆるビジネスに使われた可能性がある。
クリントン財団への大口献金者はサウジアラビアとカタールであったことが、クリントンの私用サーバからFBIが取得したメールで判明した。サウジアラビアからは25億ドル、カタールからは1億ドルから5億ドルの献金があった。
こうしたトンネル会社を使った資金洗浄(マネーロンダリング)は、マフィアのような犯罪組織が使う手口なので、「RICO法」を適用して処罰することが可能になる。
「RICO法」とは「重い処罰と罰金条項を制定することで組織犯罪を根絶することを意図する法律」という非常に長い名前の法律で、起訴されて有罪が確定するなら、重い懲役刑が課せられることもある。
■国家反逆罪
しかし、もっとも大きな疑惑は国家反逆罪である。ウィキリークスがリークしたクリントンの選挙対策部長、ジョン・ポデスタのメールから、すでに2014年にクリントンはサウジアラビアとカタールがイスラム原理主義組織の「IS」に資金を提供している事実を知っていたことが明らかになっている。
アメリカは「IS」の結成当初から関与しているが、一応表向きには「IS」はアメリカの敵である。クリントン財団が「IS」を支援しているカタールとサウジアラビアから多額の資金の提供を受けていたことは、利敵行為として国家反逆罪の適用対象になる可能性が高い。
さらに悪いことに、FBIによる私用メールサーバの捜査が始まることを知ったクリントンは、プラットリバーネットワーク社とダットー社という2つのIT企業の専門家に依頼し、30日よりも古いメール、3万件を削除したことがすでに分かっている。
これをクリントンはFBIの捜査の開始を知ってから行ったので、これは先に説明した「司法妨害罪」の適用対象となりかねない
■クリントン政権成立と同時に叩きつぶされる
調査ジャーナリストたちの記事で明らかになっているこうした疑惑は、氷山のほんの一角だろう。FBIの本格的な調査が始まると、それこそ想像を越えた規模の疑惑が表面化するに違いない。
とすれば、クリントンが大統領になったとしても、出てくる疑惑の嵐のなかで叩きつぶされることは目に見えている。ウォールストリートがクリントンを見限ったとしても納得がいく。
以前の記事で詳しく述べたが、クリントンには深刻な健康問題がある。突発的なテンカン発作と意識混どく、そして歩行困難を主な症状とする「皮質化血管性認知症」である疑いがある。これは、クリントンの政権担当能力に疑問を突き付ける。
たさでさえそうした状況なのに、これに国家反逆罪や司法妨害罪などの深刻な罪状で起訴される可能性が十分にあるのだ。たとえ大統領選挙には勝っても、とてもではないがまともな政権運営などできる状況ではない。
■ではトランプは勝つのか?
クリントンのこうした状況が追い風になり、トランプが急速に追い上げている。支持率では僅差ながら逆転しつつある。しかし、獲得した選挙人の数ではまだまだクリントンが上回っている。
周知のように米大統領選挙は、各州に割り当てられた総勢538名の選挙人のうち、過半数の270名を獲得した候補が勝者となる。現在、それは次のようになっている。主要メディアもよく引用するサイト『RealClear Politics』の最新データだ。
クリントン:226
トランプ:180
残り:132
クリントンの優勢はまだ続いている。トランプが勝つためには、選挙のたびに支持政党が異なる接戦州をすべて押さえ、さらに民主党の強い州のいくつかを取らなければならない。それは可能なのだろうか?
これを接戦州における支持率で見ると、次のようになっている。
フロリダ:トランプ、4ポイントのリード
ジョージャ:トランプ、7ポイントのリード
ノースカロライナ:クリントンが優勢だが、支持率は減少傾向
オハイオトランプ、5ポイントのリード
コロラド:クリントン、1ポイントのリード
アリゾナ:クリントン、3ポイントのリード
ネバダ:トランプ、4ポイントのリード
この最新の結果を見ると、トランプは接戦州のすべてを取ることも決して不可能ではないようだ。<中略>次回メルマガでは選挙の勝者が決定していることだろう。なにが起こるのか、市場の大変動とこれから起こる波乱について、さらに詳しく予測する。
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