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(回答先: 緊迫するベネズエラ危機:手足を縛る鎖との戦い 野党と対話進展なし 大規模デモ 国家崩壊寸前、国民を苦しめる社会主義の失敗 投稿者 軽毛 日時 2016 年 11 月 02 日 08:09:13)
混乱を極めるベネズエラ
Kanako Noda / 2日前
ベネズエラの選管による大統領罷免の手続き中止決定のショックもつかの間、予定されていた通り、10月26日にベネズエラ全土で野党主導の大規模なデモが行われました。野党によると120万人参加とも言われ、ベネズエラにおける抗議運動としては未曾有の規模でした。カラカスのメイン通りを埋め尽くす人の様子は一気に世界中に伝わりました。
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VVSincensura @VVperiodistas
Toma aérea de la impresionante manifestación opositora hoy en Caracas (Vídeo)
2016年10月27日 03:17
2,631 2,631件のリツイート 982 いいね982件
この大規模な抗議運動は、罷免手続きの中止(政府が完全に憲法を無視、独裁化)に続き、ベネズエラにとっては大きなターニングポイントとなるものです。
この9月にもベネズエラの大規模抗議は大きく報じられたので、一体これまでとどこが違うのか?と疑問に感じる人も多いかもしれません。この点について解説します。
ようやくの野党団結
ベネズエラの野党は長年深刻な問題を抱えていました。日本では、野党連合MUDは反政府という点からしか論じられません。しかし実際には、「反政府、大統領罷免、政権交代」を目標にすると言っても、いかにこれを達成するかという点で、内部では分裂していました。
大統領の即時退陣を抗議運動を通じて達成しようとする過激派・急進派、レオポルド・ロペス(2014年に政治犯として投獄され現在に至る)らの「民衆の意志」党一派と、憲法に記された法的手続きに則って正攻法で政権交代を目指す穏健派と呼ばれるエンリケ・カプリレス(2012年の野党統一の大統領候補)らの正義第一党の一派、さらには穏健派でもチャベス時代以前の旧勢力を率いるエンリ・ラモス・アルップ(現国会議長)の民主行動党などです。
特に過激派と穏健派の間の溝は深く、そのせいで、MUDとしてどのような政治戦略をとるかという点でなかなか足並みが揃わず迷走を続けていました。
例えば、2014年の大規模なデモは過激派が表に出る一方で、穏健派はこのデモに対して懐疑的かつ否定的でした。そして今年に入ってからの罷免手続きの要求では、穏健派が前面に出てMUD全体が進む一方で、民衆の意志の活動家や政治家が次々と不当に投獄され、過激派は苛立ちをつのらせていました。
このような中で、ベネズエラ政府自身が穏健派の選択の道を完全に絶ってしまいました。その結果、野党には過激派の方向性でいくしか選択肢は残されていない状態になったのです。実際に、現在デモを盛んに呼びかけているのはエンリケ・カプリレスなどの穏健派です。
デモしか大統領罷免に続く道はない
デモの前日に野党が多数を占める国会は、マドゥロ大統領の弾劾手続き開始を求める決議を可決しました。しかし、あらゆる行政機関、最高裁判所を始めとする司法機関、軍および警察が政府の管理下にある中で、国会手続きだけを通じて大統領が罷免される可能性はかなり低いでしょう。
だからこそのデモなのです。
国会の議決や、タイミングを完全に逸したバチカン仲介の与野党の対話「だけ」を通じた大統領の罷免は非現実的な状況下で、大統領を罷免を可能にするのは、政府に対して国民が自分たちの意志をその圧倒的な数で示すこと、過激派が長年訴えてきた抗議運動を通じての政府に対する圧力あってのことです。
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Reporte Ya @ReporteYa
#26Oct Tachira "disparame porque tengo hambre le dije un manifestante a piquete de GNB en sede de CNE pic.twitter.com/ImztWwA68O - @Obeysser
2016年10月27日 03:04
907 907件のリツイート 238 いいね238件
「撃ってみろ、その盾で殴ってみろ、殺してみろ、俺はお腹がすいているんだから!」と叫ぶ抗議の若者。ベネズエラの食料不足に対して、人々は心底怒っています。
地方における当局の激しい弾圧
ベネズエラの首都カラカスには国際メディアの特派員が常駐しています(ちなみに日本のメディアはこの国際メディアの報道をもとにベネズエラ情報を伝えています。)そのため、26日カラカスの様子は世界中に伝えらました。しかし一方で、地方の様子はほとんど海外メディアでは伝えられませんでした。
実際には、26日の様子は地方とカラカスで大きな差がありました。
カラカスでは警察官1名が流れ弾に当たって死亡していますが、当局による目立った弾圧は報告されておらず、全体としては平和的にデモは終わったと見られています。
一方、地方都市では、警察当局による一般市民の激しい弾圧が報告されています。
メリダ
メリダの匿名の人物の報告によれば、メリダではコレクティボスと呼ばれる政府派の武装ギャングと警察が一緒に(丸腰の)一般市民を追い立てていました。警察など治安当局が抗議する一般市民に暴力を振るうコレクティボスを無視するのは今に始まったことではありません。しかし、警察とコレクティボスが綿密に連携しながら一般市民を弾圧するというのはこれまでなかったことです。
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Anonymous Venezuela @AnonVenezuela__
Policia de #Mérida escoltan a los colectivos asesinos para atacar a opositores en la #TomaDeVenezuela #26O @NaranjaRA
2016年10月27日 05:29
644 644件のリツイート 147 いいね147件
whatsapp-image-2016-10-26-at-17-05-20
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Reporte Ya @ReporteYa
#26Oct Represión contra movilización de #Merida. #LaTomaDeVenezuela pic.twitter.com/L9CM1ykN0g - @AnonymissNegra
2016年10月27日 04:04
158 158件のリツイート 20 いいね20件
10月27日
Alfredo Romero @alfredoromero
GNB y PNB dispersan a perdigones concentración en Barinas pic.twitter.com/lvNRDG2Eml
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Alfredo Romero @alfredoromero
#26O: 2.pm Más de 20 heridos en concentración en Mérida incluyendo esta Sra de 79 años herida en la cabeza pic.twitter.com/ouFVb1KB4Y
2016年10月27日 03:39
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1,629 1,629件のリツイート 151 いいね151件
サンクリストバル
サンクリストバルでも、警察とコレクティボスが連携して市民を弾圧する様子が目撃されています。
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Gabriel De Mendonça @desagabriel1383
Como se unen los policías con los tupamaros para reprimir. Tachira 26Oct 2:40 pm pic.twitter.com/FCzAYVBfXu #LaTomaDeVenezuela
2016年10月27日 03:49
166 166件のリツイート 15 いいね15件
また、若い女性が5名ほどの警官に取り囲まれリンチを受けるショッキングなビデオもソーシャルメディアに流れました。
マラカイボ
マラカイボでは抗議参加者に対して実弾が発砲されていたという報告がありました。
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Lester Toledo ✔ @LesterToledo
#ALERTA! Malandros de Arias Cárdenas ARMADOS en la C1 de Maracaibo dísparan con armas de fuego a los manifestantes. Varios heridos.
2016年10月27日 03:18
2,021 2,021件のリツイート 208 いいね208件
さらに他の都市の様子を見るにはこちら。
このように、当局による市民の弾圧レベルは2014年とは明らかに違うものになっています。
また11月3日にも大規模な抗議が予定されています。今後も規模の大小を問わず、あらゆるタイプの抗議が続くと考えられます。ある抗議はより成功し、28日のゼネストのようにある抗議はあまり成功しないにしても、抗議は続き、それに対する弾圧も続くでしょう。ベネズエラ政治はもはやこれまでとは全く別のステージにあるのです。
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投稿日: 2016年10月30日 カテゴリー: 翻訳者メモ
https://venezuelainjapanese.com/2016/10/30/26oct-march/
ベネズエラは正式に独裁政権になりました
Kanako Noda / 2週前
10月20日の夜、ベネズエラの選挙管理委員会は大統領罷免の手続きを中止することを決定しました。
ここ数ヶ月は特に大統領罷免を求める国民投票実施の手続きを中心に与野党の攻防が続いていました。
ベネズエラの憲法では明確に国民が大統領の罷免を求める権利を認めています。
さらに、野党派内からは「罷免選挙を実施ないことは(大統領罷免を定める憲法を制定した)チャベスの遺産に反する」という意見も出ていました。
この緊張状態が、20日(木)の夜に突然、何の前触れもなく、終わりました。
というわけで、この日を境にベネズエラのチャベス派政権は正式に独裁政権となりました。
この17年間、政治学者はウゴ・チャベスがベネズエラで作り出した中間的なシステムを表現する方法を考えあぐねていた。通常の意味で言えば民主主義とは言いがたく、かといって通常の独裁政治でもない。
政府は憲法の規定に厳密に従ってはいなかったが、大きくみれば、人々には結社の自由も、言論の自由も投票の自由もあった。これを何と呼ぶか?競合的独裁主義?ハイブリッド政権?反自由主義的民主主義?どの呼び方もしっくりこないように思えた。ただ、完全には独裁政治とはいえないベネズエラの中途半端さの余情だけがしっくりきた。
ベネズエラにいる民主化を求める活動家にとって、「ちょっとだけ独裁」体制を築きあげた政権との戦いは、心身のすり減るような試練だった。憲法で定められた大統領罷免を求める権利の破壊に対する純粋な怒りの中に、この明瞭さに対する感謝の念をかすかに感じ取ることができるのはそのせいだ。
我々は形容詞から解放された。これでようやく学問的な回りくどさと縁が切れる。
ハイフンでつないで表現する必要はもうない。ベネズエラはただの独裁政治なのだ。
It’s official: Venezuela is a dictatorship
ちなみに今回の選管の決定には、笑ってしまうほどに、正当性のみじんもありません。
争点となっていた罷免を求める20%の署名集めが始まる日まで1週間を切った時点で、チャベス派知事が治める州の裁判所が「20%の署名集めを実施するための1%の署名は無効である」と次々と(実際には数時間の差でほとんど同時に、つまりは裏で示し合わせて)発表しました。
憲法を扱う最高裁判所ではなく、刑事事件を扱う地方の下級裁判所の判断に基づき、選管は罷免選挙実施の中止を発表しました。日本に比べればはるかにカオスなベネズエラ的にも、これは滅茶苦茶です。
さらにエンリケ・カプリレスや野党連合MUDのまとめ役チュオ・トレアルバなど野党派指導者の海外渡航の禁止も発表されました。
https://venezuelainjapanese.com/2016/10/22/dictatorship/
近隣住民武装の新たな常識
Kanako Noda / 2016年9月19日
治安の悪化が深刻なベネズエラでは、ここのところ、住民自ら武装し犯罪者に対してリンチなどの制裁を加える自警団化がみられます。住民は警察や司法当局が自分たちを守ってはくれないことを知っています。こうして地域全体はますます無法地帯となっていくのです。
今回紹介するのは、まさにそのような状況の中で暮らすグアヤナの街の住民の話です。住民は突発的に武器を取り、自ら裁きを下すようになったのではありません。そこには何年間も毎日のように続いた恐怖と絶望の積み重ねがあります。
moto-bera-leon-ano-2013_1
エドウィンを紹介します
Meet Edwin
2016年9月13日 Victoria Moreno
グアヤナでは、犯罪の恐怖は街にしっかりと刻み込まれている。犯罪が増加するにつれ、家の周りの壁もますます高くなっていった。次第に、鉄格子、電気柵、遠隔操作のセキュリティ付きの門がどの通りにも見られるようになった。
ただし私たちの住む通りは違った。理由は、ここに住む三家族がパーティーを開くときに何度も何度も門を開くのは「不便すぎる」として拒んでいたからだ。そんなことをすればターゲットにされると気づくべきだったのだが。
数年前、私たちはエドウィンに目をつけられた。エドウィンは痩せて日焼けした男で、ある日どこからともなくやって来た。いつもオンボロのベラ(悪党の頼りになるバイク)に乗り、手には45口径を持っていた。エドウィンが姿を現したとき、彼の名前を知る者はいなかった。だが、プエルトオルダスは大都市ではない。すぐに調べはついた。
エドウィンは「ラテリート(ケチな犯罪)」から小さく始め、携帯やその他の貴重品を人や家から盗んでいた。
彼に強奪されたり泥棒に入られたりした人が悲鳴を上げ懇願する声を耳にするのが日課になった。時には、カーテンを開けると彼が新しい被害者を襲うのが見えることもあった。うちの通りの向かいのブロックの住民は、駐車していた車からバッテリーやタイヤが盗まれたとしょっちゅう訴えていた。
エドウィンは私が住む通りだけでも、20人以上から盗んでいた。何度か彼を警察に通報しようとした人もいた。でも、猛暑の日にただ誰かに携帯や車のバッテリーを盗られたというだけで邪魔された警察官の顔は、ベネズエラ人なら誰でも想像がつくだろう。
時が過ぎ、エドウィンはより大胆で凶暴になり、彼の強盗はさらに手が込んだものになった。夜中に住民が目を覚ますと、誰かが家に押し入っており、何かが盗まれたことに気づくということもよくあった。仕事から帰ってみると家がほとんど空にされている、つまり家具も含め、ほとんど全てがなくなっていることもあった。
一度など、近所の人が家を出ようとしたときに、エドウィンが姿を現したことがあった。彼女はそのとき携帯を持っていなかったので、エドウィンは彼女の結婚指輪を取り、怒って彼女を床に突き飛ばした。
またあるときは、私の母が近所の人と雑談しているときに起きた。近所の人はうちの家の車庫の鉄格子にもたれていた。遠くの方でエドウィンの乗ったベラのいつもの音が聞こえてきて、母も近所の人も、彼が姿を表す前に、これから何が起こるのかわかった。このとき、エドウィンは銃を直接近所の人に突きつけ、いつもの物を要求した。携帯と財布と鍵だ。彼女はエドウィンに向かって、自分は何も持っていないし大切な人のためなら撃たれてもいいと言った。彼はただ銃で彼女を殴っただけで去っていった。
誰もが被害妄想になり、外出するのを恐れ、家にいるのを恐れた。我が家は私たちの牢獄になった。5ブロック先の警察署は相変わらず役に立たなかった。
2014年12月24日、ついにそれは起きた。ある住民がパーティーの後で家に帰り着いたとき、エドウィンが現れた。エドウィンは彼の車を盗もうとしたが、その人は怒ってやけくそになっていて、うんざりしていた。その人は壁の向こう側の玄関ポーチの車の鍵を投げた。彼は2発撃たれた。だが一命を取り留めた。エドウィンが近所の人を撃ったのはこれが初めてだった。
この事件のあと、やって来たときと同じようにエドウィンは姿を消した。ある人はエドウィンは刑務所にいると言い、ある人は殺されたのだと言った。何の記録もないこの街では、失踪は普通にあることだ。だからエドウィンが跡形もなく蒸発しても誰も驚かなかった。
彼はいなくなった。でも被害妄想はあとに残った。疲れ果て、治安当局からは忘れられたと感じた近隣住民は、自ら武装し、自分たちの手で裁きを下すことを決めた。住民たちは今後は射殺も辞さないことを知らしめた。
先週、一台の着色ガラスをつけた車が近所の通りに停まった。時間が過ぎ、朝の4時になって、車中の人間は誰かが通りかかるところを襲うために待機しているのだと考えた近隣住民の誰かが、意を決して上空に向けて2発威嚇射撃を行った。
車内の人たちはそこから退出しようとした。だが、この迷路のように入り組んだ地区では、広い道路は私たちの通りだけだった。だから、車は来た道を戻るにはUターンしなければならなかった。車がUターンをした時、最初の発砲とは別の、少なくとも3丁の銃が発砲した。ただし、このときは動く標的に向けて発砲された。
近所中に銃声が鳴り響いた。あとになってわかったのだが、その車に乗っていたのは、ここの住民の息子を家まで送り届けた友人だった。ベネズエラの典型的なやり方に従い、この友人はすぐに車を発車させなかった*。だが、そこで仲間としばらく酒を飲み、おしゃべりをしていたせいで、近隣住民に過剰な疑念を抱かせてしまうことになったのだ。
訳注*ベネズエラでは、誰かを家まで送って行くとき、万が一の時のために、送った相手が完全に家の中に入るのを見届けるまではその場を立ち去らずに待つ習慣がある。
負傷者は出なかった。この時ばかりは警察官が現場にやってきて、一軒一軒まわり情報を求めた。誰も何も見なかったし、誰も何も聞かなかったし、誰も何も言わなかった。警察官たちはその世間知らずの二人組を逮捕した。この二人は何かを企んでいたはずだと考えたのだ。そして去った。
これが、今の私の住む家の近所の新たな常識だ。訓練を受けていない武装した一般市民が、事態を進める中で勝手に作った交戦規定に則って殺傷能力をもつ武器を行使すると脅している。何か恐ろしいことが起こるのも時間の問題だ。誰もがそれをわかっている。
https://venezuelainjapanese.com/2016/06/04/summary-crisis/
ベネズエラでは買い物も命がけ
Kanako Noda / 2016年7月29日
価格統制された品物を買うのは日に日に困難になっています。最近では数時間の長蛇の列に並ぶだけではなく、最近では、前日から順番待ちリストに名前を連ね、さらに一晩中泊まり込みで列に並ばなければなりません。
超危険な街で、深夜に列に並ぶ恐怖。人々の苛立ちと怒り、吐き気のするような臭い。
最低賃金に近い給料しかもらえない多くの人は、危険をおかしてでも、このようにして列に並んで品物を買いに行かなければ生きていけません。こうまでして人々はその日に買える物をとにかく買い、その買った物を別の人と交換して自分に必要な物を得るのです。
今回紹介するのはビクトリアの価格統制品の買い出しについての記事です。ベネズエラの若い女性のショッピング体験談をどうぞ。
wpid-miseria-socialista-padres-deben-dormir-en-las-aceras-por-cola-de-panales-en-farmatodo-foto-800x533
グアヤナの26時間
26 Hours in Guayana
2016年7月25日 Victoria Moreno
もし数ヶ月前に、近々私は世界で11番目に危険な街で、午前3時に歩道に横になって、鉄板の上で焼かれるアレパみたいに地面で寝返りを打ってはゴロゴロすることになるだろう、と言われたら、私は笑ったはずだ。
だが現実に、私はここにいる。
別に最新のiPhoneを買うために行列に並んでいるのではない。食料を買いたいだけだ。
私は修士を終わらせるために数ヶ月間スペインで暮らしたあと、故郷のシウダード・グアヤナ(Ciudad Guayana)、この想像以上に悪化した国に帰ってきた。
帰国して最初に近所の人が私に言ったことは「よかった!これで一緒に順番に並べるね!」だった。
私は彼女がふざけているのかと思った。
私をネタにして。
再適応の中での最初のショックは、今では食料を買うための行列は、現に、政府に指定された自分の買い物日(政府発行IDの最後の数字で順番が決まる)の前日から始まると知ったことだ。多くの場合、順番待ちは前日の早朝に始まる。
正確にどれくらい早くから並ぶかは、どの店で行列に並びたいかで決まる。この火曜日の私の戦場はファルマトード*だった。
訳注* ベネズエラのドラッグストア
私は店に午前8時に到着し、「順番待ちリスト」に名前を書いた。この「リスト」が、「一つの指輪」のように全てを統べる。順番待ちリストに名前がない人に、価格統制品はない。
順番待ちリストを管理するのはこの辺りでは最も有力なバチャケロ*の女性(我らが行列管理の請負人)で、彼女はそのファルマトードの前のヤシの木の下に住んでいるようだった。
訳注* 統制品を買い占め闇市で売りさばく転売人のこと。もちろん犯罪。
この朝の順番待ちリストへの名前の記入は、まだ第一段階だ。リストから名前を消されたくなければ、だいたい数時間ごとに戻らなければならない。
これが意味するのは、順番待ちリストに名前があることを確認するためだけに全日無駄になるということだ。8時間交代の仕事など不可能だ。学校にも行けない。午前10時頃に戻って確認し、正午に戻り、それから午後2時に戻って、午後4時に戻って、午後6時に戻らなければならない。こんな感じで続く。
ラッキーにもエアコン付きの車を持っていたら、これもずっとマシになる。だけど車がなければ*、この悪名高い気候をやりすごしながら、街のひどい交通機関を利用しなければならない。42°Cの暑さのおんぼろバスで行ったり来たりするのはかなり辛い。
訳注* ベネズエラは車社会と言われるが、実際のところ、車を所有できるのは中流階級以上であり貧困層の多くの人々は車を所有していない。このため格安のガソリンの恩恵を最も受けているのは、結局、貧困層よりも中流および富裕層である。
行列への参加資格は投資なのだ。だからみすみす失ってはいけない。2リットルのコーラとスナック菓子を買っておくのはいいアイデアだ。これは「リストの女主人」に捧げる生贄の供物になる。彼女の機嫌を損ねてはダメだ。名前を覚えられてしまう。
大規模な間引きの時は深夜にやってくる。翌日の認められた買い物日に店が開くまで、そこで一晩過ごすのだと気持ちの面で覚悟を決めなくてはならない。私は35番目だった。
こうして、私の人生で最悪の一晩が始まった。
汚い、ゴキブリがうようよししている歩道に横になる。めちゃくちゃ臭い。周辺に公衆トイレはなく、人々が一日中そこで順番待ちをしているのだ。
不気味なほどに静かである。すべてのベネズエラの街と同じく、シウダード・グアヤナでも、夜がくると人々は自ら課した夜間外出禁止令に従う。そして夜は寒い。
眠ってはいけない。だからホセ(本名ではない)のことを考える。
ホセは家の近所の人の息子だった。私が帰国する数週間前、ホセはこの必須の行列に並ぶため、午前3時に家を出た。彼には紙おむつが必要な赤ん坊の娘がいた。
目撃者によれば、1時間ほどしたところで、GNB(国家警備隊)が最近の新しい「作戦」(犯罪取り締まりの強制捜査)のためにやってきた。ほどなくしてホセは乱闘のただ中にいた。列に並んでいた誰かがナイフを出したのだ。国家警備隊は人々に発砲し、半ばやみくもに人々を逮捕し始めた。
ホセの姿が消えた。彼の死体は、3日後に藪の中で発見された。3発撃たれた痕があり、先の夜に目撃された際に着ていたのとは異なる服を着ていた。この事件はニュースにならなかった。「ニュース」要素がなかったからだ。
世界でも有数の危険な街で、真夜中に順番待ちの列に並ぶことの本当の意味に気づき怖くなった私は少し自己憐憫に浸った。どうしてこの国はこんなにひどくなったのだろう?いつの時点でこの国はここまで落ちたのか?奇妙な夢を見ているような気分だ。
だが、眠ってはいけない。ほんの1分さえも。
夜が明けて、家に車があるラッキーな人たちのところには、家族が朝食を届けにやってくるだろう。中には露天商から何か食べる物を買う人もいるだろう。だが多くの人は何も食べない。
列に並んでいる人は、知り合いでなければお互いに話したりしない。感情が高ぶっている。誰もが怒っていて、フラストレーションを溜めている。国家警備隊が近くにいないと、そのフラストレーションを大声で口にする人もいる。
ついにファルマトードが開店すると、警備員は人々を10人のグループごと入店させる。あらゆる混乱や衝突を避けるためだ。3つのグループが入店して、私の順番が来た。
ひとたび店内に入ってもまだ列がある。少なくとも、ここではクーラーが効いている。中には、ゲータレードやプラタニート*の袋を開け、飲食した後に空のボトルや袋を棚に戻している人がいる。
訳注* プランテン(調理用バナナ)のチップス。
午前10時、ようやく私は支払いを済ませ、宝物を持ってとぼとぼと家路につく。歯磨き粉とマヨネーズとケチャップを持って。先日に順番待ちの列に並んで、26時間が経っていた。
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崩れゆくベネズエラ
Kanako Noda / 2016年6月4日
ここのことろベネズエラは大きく揺れています。
大統領罷免選挙を求める野党、それを妨害するマドゥロ政府、さらに軍事クーデターの噂という不穏な政治状況に加え、物不足、食料不足、薬不足は深刻の一途をたどっており、ここ数日は毎日のようにベネズエラ各地で襲撃事件が起きています。
このような中で、ベネズエラに世界の注目が集まりつつあります。そして、それに呼応するように、ベネズエラの全体像を紹介する優れた記事も多く出でてきています。今回は、ベネズエラの現状を知るための注目の記事をいくつか紹介します。
悲惨な医療事情
ニューヨークタイムズで公開されたベネズエラの医療問題に関する衝撃的なレポートは、社会主義革命の目玉である「すばらしい医療制度」の幻想を打ち砕き、おぞましい現実を理解するには十分すぎるでしょう。
Dying Infants and No Medicine: Inside Venezuela’s Failing Hospitals
ベネズエラの医療の実態はまさに地獄です。
この記事によると、病院には抗生物質もなければ、点滴液も、包帯も、痛み止めもない。そもそも紙がない。怪我していても眠るためのベッドも病院には足りない。メリダの病院では、手術台の血を洗い流すための十分な水すらなく、飲料用の炭酸水で洗っている。安価な備品すらなくて、簡単な手当てが受けられなかったせいで赤ちゃんが次から次へと死んでいく。
私のカラカスに住む知り合いにも、先日、緊急で盲腸の手術を受けたものの、術後の抗生物質と痛み止めがなく、激しい痛みの中で感染症に怯えるという恐ろしい体験をした人がいます。
医療費無料と謳われる実態は悲惨な公立の病院を避けるのはマストとして、いざとなれば多少の額を払って私立クリニックに行けばなんとかなる…はずだったのは、過去の話。今では私立クリニックですら、施設の不備(設備が壊れても交換できない、備品や薬が入手できない)や薬品不足は深刻です。
ちなみに、先日、そのメリダのロスアンデス大学の医学部で抗議があり、当局と抗議参加者が衝突、武装した警察などが介入、負傷者も出た模様です。
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Carlos A. Páez C. @carlospaez68
Realmente preocupante lo que se vive este #18M en #Merida #protestas #ULA #FacultaddeMedicinaula
2016年5月19日 03:45
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危うい非常事態宣言
ベネズエラ大統領、非常事態宣言 停止工場を一斉取り締まりへ
5月13日の非常事態宣言以降、ベネズエラ全体の緊張は一気に高まりました。ここで一斉摘発というのは、つまりは言うことを聞かない会社に「接収するぞ」と脅しをかけることを合法化する、という危険なものです。
このような事態に対してアメリカも懸念を示しています。
懸念されるクーデターですが、具体的な陰謀の証拠はまだ出ていないとはいえ、政府が一つまた一つとおかしな動きをするごとに、国民の間では絶望のあまりクーデターに対する期待の高まりもみられます。
ただし、クーデターが実際に起きたところで治安回復や政権交代などがうまくいく保証はありません。チャベスは2002年のクーデター未遂で一時的に軍に監禁されるという苦い経験をしたため、その後念入りに軍の人事などの調整を行い、クーデターによって政権が転覆されることが二度とないよう準備を整えています。コレクティボスと呼ばれる武装した過激チャベス支持者による民兵組織がその例です。また、軍内部の麻薬絡みの対立の噂もあります。軍内部の実態が見えず、コレクティボスらがいる限り、軍が武力で事態を収拾できるという保証はなく、むしろ内戦の恐れすらあります。安易にクーデターが起きれば…と言えない理由がここにあります。
とはいえ、どのようにしてベネズエラはこのような事態に陥ったのでしょうか?これをうまくまとめたのが、アトランティックのこの記事です。
崩れゆくベネズエラ
Venezuela Is Falling Apart
工場経営者が労働者のためにトイレットペーパーを大量に買ったら、アメリカに支援された経済戦争の片棒を担いでいるとして逮捕される。これが今のベネズエラです。
書いたのは『権力の終焉』の著者モイセス・ナイームとCaracas Chroniclesの創設者フランシスコ・トーロです。(スペイン語版が読みたい人はスペインの新聞エルパイスでどうぞ。)
記事によると、ベネズエラでの死亡率はここ2年で跳ね上がっている。干ばつで水もないし、電気もない。長年、投資やメンテを怠ってきたインフラはボロボロ。
それくらいベネズエラは貧しい国なのでしょうか?石油価格下落の影響はそれほど甚大だったのでしょうか?
ナイームとトーロは否と言います。もちろん石油の影響はあるけれど、現在の危機的状況、物不足や治安の悪化などが急激に悪化し始めたのは2014年、石油がまだ1バレル100ドルで取引されてた頃だからです。
てんかんの薬さえ飲めば問題なく元気に暮らしてた14歳が、薬不足で数日間薬が飲めなくて亡くなる。こういうケースが毎日続々と起きてるときに、政府は薬の確保ではなく、F1レーサーのマルドナードに年間4500万ドル出し続けていた。
でもかつてはあんなに豊富にあった石油マネーはどうなったのでしょうか?汚職、汚職、汚職、汚職、汚職…で、もうありません。
貧困対策?チャベス派は長年、貧困層への教育をプロパガンダの中心にしていたけれど、これも現在では虚しいお粗末な状況です。学校給食プログラムは機能してないし、貧しい子どもは飢えまっしぐら。一方で2003年以降、政府関係者は食料輸入関連の汚職だけで2000億ドルは盗んでいた。
2000億ドルって、日本円で17兆円弱ですよ。しかも食料輸入関連だけでこの額です。
(この記事については、国連の外交問題のポッドキャストGlobal Dispatchesでもトーロが話してるので良かったら聴いてみてください。)
チャベス派の中からも起こる抗議
ちなみに、貧困対策でも特に有名なミシオン・ビビエンダですが、かつてはチャベス派の票は堅いと言われていたこのような場所でも抗議運動が起きていることを英紙ガーディアンが伝えています。当然だと思います。ミシオンのお世話になるような貧しい人から飢えていくからです。
In Venezuela’s housing projects, even loyalists have had enough
このような状況なので当然、野党の反発は大きく、さらにその反発を、政府は法的権力をもって(最高裁による野党が多数派を占める国会の無効化などによって)抑えつけようとしています。出口は見えないまま緊張ばかりが高まり、政治状況も芳しくありません。
混乱する政治状況
[FT]ベネズエラ、非常事態に 大統領解任求め混乱
このシパーニの記事はベネズエラの政治状況について日本語で読める最も的確な記事だと思います。彼は抗議運動に取材に行き、催涙ガスを浴びまくって大変だったようですが。
この記事にもあるように、野党支持者が各地で抗議を行っており、政府当局との衝突は各地で頻繁に起きています。が、野党支持者にとって状況は決して楽観できるものではなく、困難が山積みです。
野党政治家は外に出て政府に反対の声を上げるよう呼びかけていますが、実際にその声に応えて抗議行う人々の様子は少し前のブラジルの抗議の様子に比べ、大勢の人の波というには程遠い、一部の人たちです。
これは、それだけマドゥロ政府当局が恐れられていることの証左でしょう。2014年の全国規模の抗議運動に参加した人たちは、政府に楯突けばどうなるのか、コレクティボスの怖さも十分に思い知っているのです。
ベネズエラの状況は、比喩ではなく文字通り、日に日に悪化しています。2014年以降急激に悪くなり、ここ数ヶ月でさらに加速し、それがここ数週間、数日間で劇的に悪くなっています。今まさにベネズエラは崩壊しつつあるのです。
襲撃という新しい日常
最後にベネズエラの新たな日常となった襲撃の様子です。
数年前に立ち往生した肉を運ぶトラックが略奪されたときは大ニュースになりましたが、最近では略奪は「よくあること」。ベネズエラでは今年の最初の3ヶ月だけですでに107件の略奪が確認されています。
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Sol Rojas @sol651
SAQUEOS intensos saqueos en el centro de San Felipe, Edo Yaracuy acompañado de fuerte represión policial
2016年5月20日 02:08
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ヤラクイ州のサンフェリペでの略奪と警察による激しい鎮圧。
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Imagen @Imag3n
¡Que desastre! Así quedaron los negocios saqueados en La Isabelica http://bit.ly/1WG74kM vía @la_patilla
2016年5月20日 20:39
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カラボボ州バレンシアで略奪。ここでは負傷者が2名出た模様。
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Alberto Rodríguez ✔ @AlbertoRT51
HAMBRE EN VENEZUELA - En Margarita, hasta saquean a los pescadores cuando regresan de pescar en alta mar.
2016年5月20日 23:37
1,094 1,094件のリツイート 129 いいね129件
観光地で知られるマルガリータ島にて、漁から帰ってきた漁師に襲いかかる人々。
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ColinasdeBelloMonte @ColdeBelloMonte
#Valencia
Saquearon gandola cargada de leche en Tocuyito https://twitter.com/kalt_b/status/734926041333026818/photo/1pic.twitter.com/KA6MifSpx1 …
2016年5月24日 11:40
113 113件のリツイート 6 いいね6件
カラボボ州トクジートで牛乳輸送のトラックを襲撃する人々。この写真を投稿した人々。それに対して警察が発砲しているという目撃情報もあり。
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投稿日: 2016年6月4日 カテゴリー: 翻訳者メモ タグ:ベネズエラ生活, 物不足
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議会の3分の2を占めても野党は安心できな
https://venezuelainjapanese.com/2016/06/04/summary-crisis/
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