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[私見卓見]白人層の疎外感、米の分断映す 米投資家・作家 J・D・バンス
米南東部から五大湖周辺に延びるアパラチア山脈周辺の出身の白人を「ヒルビリー」(田舎者)と呼ぶ。本職はベンチャー投資家の私が6月に出した著書「ヒルビリー・エレジー(哀歌)」は米国の白人労働者層の現状を捉えた作品と評価され、ベストセラーになった。ヒルビリーの祖先はアイルランド系やスコットランド系が多く、比較的貧しい家庭が多い。オハイオ州出身の私もその中の1人だ。
ワシントンやニューヨークで働くヒルビリーはとても少ない。米国は人種のように見た目でわかりやすい多様性の確保に注意を払う。一方で貧しい白人層が抱える疎外感は見えづらく、あまり対策がとられていないように思う。
オバマ大統領は疑いなく優秀な人物だ。話し方から経歴まで完璧。行動に無駄がなく、判断力があり、洗練されている。対照的に多くの白人労働者層は「自分の技能が評価されない」「いい父親ではない」と悩む。学位がなく、家族ともうまくいかず、社会から評価されないと感じている人々からすると、オバマ氏のように誰からも評価される人物は「異能」でしかない。
大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏はこうした白人労働者層を狙って選挙活動を展開してきた。今までこの層は選挙では重要ではないと無視されがちだったため「自分たちについて語ってくれる政治家が初めて登場した」とトランプ氏を歓迎した。
彼の話す内容ではなく、話し方が重要なのだ。白人労働者層は「準備された原稿ではないことを話す人がようやく登場した」と喜んだ。
白人の貧困層や労働者層が疎外感を募らせるのは、収入による住み分けが進んでいることも理由だと思う。米国は昔から人種による住み分けの問題があったが、今は収入の多寡で住む場所が決まってしまう。昔は中流層の多い地域にも何軒か白人貧困層が紛れていたものだ。今はどうか。貧困層は固まって住み、富裕層の姿を目にすることがない。そして日常生活で関わりのない金持ちを「エリートたち」と嫌悪するようになる。
米国では「政府は個人に対して何をすべきで、何をすべきではないか」の二択で考えがちだ。政府と個人の間には実際には家族や教会、近隣の人々など様々なコミュニティーが存在する。米国内の分断の解消に向けて、こうしたコミュニティーを組み込み、個人の意思決定をより効果的に支援することが必要だろう。
[日経新聞10月27日朝刊P.33]
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