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【社説】FBI長官と闘士クリントン
クリントン陣営、透明性という美徳をFBIに要求
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米連邦捜査局(FBI)のジェームス・コミー長官(7月14日) PHOTO: ASSOCIATED PRESS
2016 年 10 月 31 日 19:15 JST
突然、民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン前国務長官と同氏の陣営は透明性というものの美点を発見した。そして突然、これまでは民主党員とマスコミから英雄エリオット・ネスに例えられていた米連邦捜査局(FBI)のジェームス・コミー長官が、悪名高いジョン・エドガー・フーバーになってしまった。コミー氏によって引き起こされた政局の変容はあまりにも奇妙だった。コミー氏は28日、クリントン氏による機密情報の誤った処理に関係するかもしれない電子メールを、FBIが追加で発見したと発表したのだ。
クリントン氏は29日、コミー氏が連邦議会に送った書簡について、「奇妙なだけではない。前例がなく、非常に大きな困難をもたらすものだ。有権者には十分で完全な事実が与えられるべきだからだ」と指摘した。これはクリントン氏が公文書等の管理に関する法律から同氏のやり取りを隠すために個人の電子メールサーバーを作成したとき、機密情報を送信したことはないと言い張ったとき、あるいは議会とFBIに最小限の協力しかしなかったときとは異なる主張だった。
クリントン氏は失われた3万3000通の電子メールをはき出すことで、まだ有権者を救い出すことができるかもしれない。あるいは側近のフーマ・アベディン氏が別居中の夫アンソニー・ウィーナー元下院議員に送信しただろうメールについて、クリントン氏がマスコミの前でアベディン氏に説明させることもできるだろう。新たに発見されたメールはウィーナー氏のノート型パソコンに入っていたからだ。しかし、そうした真の透明性を求めるのは難しいのかもしれない。11月8日の本選まであと8日間となる中、民主党員はそれ以前のあらゆる政治的透明性の欠如について非難する別の人間を必要としている。
それはコミー氏のことだ。同氏は先週末、幅広い右派の陰謀のための新たな代役となった。明らかに動揺したクリントン陣営の責任者、ジョン・ポデスタ氏は29日の記者会見で、「選別された情報を提供することで、彼(コミー氏)は最大級の政治的ダメージを加えようとする党派心の強い人々に歪曲(わいきょく)や誇張を許した。また、コミー氏が証拠を差し出していないため、真実とそうでないものをえり分けることは誰にもできない」と述べた。
今後の展開に注目しよう。民主党はコミー氏をホワイトウォーター疑惑の独立検察官ケネス・スター氏になぞらえることで支持者の投票を動員しようとしている。ただ、コミー氏を任命したのはオバマ大統領で、民主党は非常に長く首都ワシントンDCの「聖ヤコブ」としてコミー氏を称賛してきたこともあり、これは簡単には行かないだろう。
友人のパトリック・フィッツジェラルド連邦検事が、「スクーター」ことルイス・リビー副大統領主席補佐官(当時)をあいまいな内容で起訴するのをコミー氏が認めたとき、コミー氏が投資銀行家のフランク・クワトローネ氏に行き過ぎた仕打ちを与えたとき、あるいはブッシュ前政権が同氏の出した監視命令に従わなければ辞任すると脅したとき、民主党員はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が発したコミー氏に関する警告に耳を傾けるべきだったのかもしれない。民主党員はこうした出来事を歓迎していた。
クリントン氏の捜査に関するコミー氏の原罪は、司法省に刑事訴追の勧告を行わなかったことだ。それがロレッタ・リンチ司法長官の仕事であるにもかかわらず、7月にマスコミの前でクリントン氏を罪から解放させると独白したことで、コミー氏は事態を一段と複雑にした。ほんの数日前に空港でビル・クリントン氏と会ったためにリンチ氏の信頼性は傷ついていたが、コミー氏の友人によると、同氏は当時、このために自分が表に出なくてはならないと感じたのだという。
コミー氏による公式の場での宣言が、政治の信頼性を傷つけた。そして案の定、リンチ氏はコミー氏に従うと述べることで、実質的に法的・政治的責任をかわした。民主党員とメディアはコミー氏の判断を歓迎した。
また、コミー氏は当時の連邦議会に対して捜査が終了したと述べたが、このために新たな情報が追加された場合には監視委員会をあらためて開く義務があると感じていた。コミー氏は、後に新たな証拠が表面化したときに自分が隠蔽(いんぺい)に加担したと非難されないよう、選挙前でもそれを行う必要があったと信じていたに違いない。
現在、コミー氏が司法省関係者の反対を押し切って28日の書簡を提出したのだとリンチ氏のチームは漏らし、クリントン氏の陣営は説明している。それならば、単純にリンチ氏が書簡提出を見送るようコミー氏に命じなかったのはなぜなのか。指揮系統を見ると司法長官がFBI長官の上に立つのは明確だ。WSJは、提出見送りを命じればコミー氏が辞任するのではとリンチ氏が恐れていたと推測している。そうなれば、あいまいなメールよりもさらに大きな火種を選挙前にまいてしまうことになりかねない。
民主党とクリントン氏は現在、さらなる詳細を公表するようコミー氏に求めている。WSJも、それを公表する方向に同感だ。しかし、それが過去の捜査を台無しにするのであれば、コミー氏は追加情報を公表できないし、1週間で捜査が終了する可能性は極めて低くなるだろう。このため、クリントン陣営がいきなり透明性を要求することには、本選前に追加情報が出てこないだろうことを知りながら、同氏に心配していないように装わせる政治的な長所があるのだ。
もう一方のクリントン氏の路線は、これらのメールを不安視する必要は全くないというものだ。もっとも、FBIとクリントン陣営以外は誰もその内容を知らないが。しかし、もしFBIが深刻化する可能性のある何かを発見していなかったのなら、コミー氏が書簡を議会に送付してかつての民主党の擁護者から怒りを買うというリスクを冒したとは考えにくい。WSJのデブリン・バレット記者は30日、クリントン氏の私用メールとクリントン財団に対するそれぞれの捜査を巡り、FBIと司法省が数カ月にわたり対立していたと報じている。
これに対し、共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏はいつもの過剰反応を示し、証拠がないのに新たなメールが失われた3万3000通なのかもしれないと主張した。ただ、司法省とFBIで起こった法的・政治的失態が、腐敗文化を終わらせるためにこうした行政機関を浄化すべきだというトランプ氏の主張を後押ししている。コミー氏は決して英雄ではないし、クリントン氏につきまとう潜在的な法的リスクに責任を持つわけでもない。クリントン氏は自分自身で偽りと疑惑というキャリアの塔を築き上げたのだ。
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