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<メール問題とISの核心を突く快著>
10月12日に出版されたこの本で著者の副島氏は、ヒラリーはメール問題で逮捕収監され、トランプが11月8日の米大統領選に勝利すると断定的に予言する。
◆オクトーバー・サプライズ◆
奇しくも投票日2週間足らず前の10月28日に、FBIが捜査再開を発表した。
ヒラリー側近の配偶者の元下院議員が起こしたわいせつ事件が、捜査再開の切っ掛けとの事で、正に天網恢恢疎にして漏らさずと言ったところか。
評者は、トランプの8月のイラク戦没者遺族を非難し、支持率が大きく低下して以来、四分六とでヒラリー当選の可能性大と予想してきたが、今回の件でトランプ当選の確立が高まったのは確かだ。
副島氏は、この本が出版された後で、自身の主催するHP(http://www.snsi.jp/bbs/page/1/)で選挙操作によるヒラリー当選の可能性を示唆するなど揺らぎを見せているものの、評論家生命にかかわる著書に於いてトランプ当選を断言するのは凡百の胆力ではない。
評者は今まで、メール問題に関して、機密情報取り扱い違反、便宜供与の隠蔽可能性等、報道によりヒラリーに対して漠然としたダーティーイメージを持ったのみで、「ヒラリーは巨悪」とまでの印象は持っていなかった。
恐らく、米国有権者の大半もその程度だと思う。
◆メール問題の核心と大統領選の帰趨◆
副島氏は、メール問題の核心を、裁判を経ないリビアのカダフィー殺害、それに続く200億ドルのリビア国家財産の略奪、その資金によるイスラム国(IS)創設、これらの当初からの計画的隠蔽とオバマの黙認であると具体的に描き出す。
評者も国際情勢について市井からながら、それなりにウォッチしてきたつもりだが、この本によって、初めてメール問題の全体像が像を結んだ。
目から鱗である。
だが、大統領選当日までにヒラリーが逮捕されるとまで見るのはどうか?
FBI長官が、そもそも一旦捜査打ち切りをしたのも保身であり、筆者はこのまま選挙当日までに結論を出さず、どちらに転んでも保身が図られるようにするのではないかとみる。
また、トランプ自身が、前述のメール問題の核心部分、イスラム国(IS)へのヒラリーの関与について、一時期選挙戦で冗談めかして「ヒラリーとオバマはISの共同創設者」と語ったのみで、トランプすら踏み込めないタブーがあるのか、その後具体的に触れていない。
このままトランプが核心に触れなければ、米国有権者には「ヒラリーは巨悪」とまで映らず、トランプの大勝となるかはまだ断定できない。
副島氏の国際戦略についてのスタンスは、簡略化して言えば「反米親中」である。
アジア諸国で固まり、欧米に対抗して行こうという考えである。
これに対して評者は、「日米露三国同盟」を基軸として、中国の牙を抜き、イスラムを穏健化して行かねばならぬと考えており、その点で副島氏と袂を分かつ。
しかしながら、基本的立場の違いは在れ、今回の著書をはじめ、氏の国際情勢分析、米国政治研究への情熱と成果には敬意を表したい。
■ヒラリーを逮捕、投獄せよ Lock Her Up ! ロック ハー アップ 単行本 副島 隆彦 (著)(光文社刊)– 2016/10/12
https://www.amazon.co.jp/dp/4334978967/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_rJjfybWDD2AC0
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